第27話 お給料管理3
感情的になってる母に交渉するには、こちらがかなり譲歩するしかない。
なので私は口座は私に渡してほしい。けれどお金は今まで通りでいいから。
という事にしたのだ。
つまり、私は家を出るけれどお給料日には母の口座に私の今まで通りの五万円のお小遣いを残した金額以外はすべて送金すると言ったのだ。
それを聞いた母は怒りをおさめた。
けれど承知はしなかった。
「だったら今まで通り、あんたの口座に五万円送ってやるから、それでいいでしょ」
と言う。
確かに母にしたらそうだよな。
私としてはかなり譲歩したつもりでいたけれど、母にとっては口座を私に渡した上に家を出たら約束が守られる保証が無いと見たのだろう。
これ以上交渉しても、きっと母はより悪い条件を出してくるだけで良くはならないだろうと思い、私は母の言ったように口座を預けたままで家を出ることにした。
今までの『お小遣い』としての五万円と違い、生活費となった五万円はギリギリのものだった。寮費はお給料天引き(しかも一万くらい光熱費込み)なので食費と生活雑費が必要になる。
私は着るもの程度しか家を出るのに持っていかなかったので、百円ショップで少しずつ生活に必要なものを買って行ったが、一人暮らしの寮だったらそれでも生活出来なかったかもしれない。
この寮は一つのマンションの部屋に五人で暮らしていたので、炊飯器を借りたり、掃除機を借りたりなどとしていたからやっていけたと思う。
ところが、そういった生活をして一年半くらいが経った頃に、私の働いていたラインが閉鎖になってしまったのだ。
私は派遣でありながらも一応、社員だったので希望すれば他の同じく寮があるところに派遣してもらえる。
けれどそれはかなりな遠方の可能性もあるのだ。
今までは車で三十分くらいのところだったが、今度は高速に乗らなきゃいけないような場所になる。
本当の親離れであり、家を出るという事の本格的な始まりとなった。
そこで私は改めて母にお給料に関しての交渉をしたのだった。
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