第2話 邂逅 その二

 お梅が村の子供達から木通あけびの実のなる場所を聞いたのは

弟の大助が熱を出して寝込んでから5日目のことだった。

 真田家の待望の嫡男として生まれた太助だが、幼い頃から

体が弱く、季節の変わり目毎に体調を崩しがちな太助の為に

 家中の者達も滋養のあるものを食べさせようと、倹しい

生活の中苦心している事はお梅も常々感じていた。

 姉としても何とか滋養ある物を、食べさせてやりたいと

思っていた所に、日頃から仲良くしていた麓の村の子供達に

木通の話を聞き、すぐさま件の場所に案内して貰った。

 しかし、中々食べ頃の実を見つけられず、ようやく川沿いの

崖にそびえる木に蔦う実を見つけたのだった。

 危険な場所に登らなければ取れないということで、木登りの

得意な村の子でも尻込みをする中、お梅は果敢に着物の裾を

まくり上げ、木登りを始めた。

「お梅様、もうやめておくれよー 」

「それ以上進むと、落ちるよー」

子供達の心配する声を他所にお梅は見事に熟した木通の実に

手を伸ばした。

「よし、とっ‥た」

 バキっと枝の折れる音と共に、お梅の体が川へと吸い込まれる。

「お梅様ぁぁ」

「いやぁぁぁ!」

 子供達の叫び声が渓谷に木霊こだました。



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