会長のボインと純白下着と......


正座して雫先輩を待つのも限界になり、暇潰しに部屋の隅に置いてあった中位の赤い箱を開けると、中には大量の写真が適当に入れられていた。


さっき言ってた箱ってこれか.....こんなバラバラに収納するなんて、雫先輩も大雑把なところあるんだな。


「んー、詩音さんか......どこにいるんだろう」


その時、ドアが開く音が聞こえ、慌てて箱の蓋を閉めた。


「正座していなさいと言ったわよね」

「さ、さすがに退屈で......」

「女性の部屋を漁って楽しかったかしら」

「この箱にしか触れてません!」

「だらか?」

「すみませんでした!」

「最初から謝りなさい」

「はい!」

「......」

「......」


いやいやいやいや!沈黙はキツい!


「勉強するわね」


勉強なんてされたらますます沈黙の時間が!


「ぼ、僕、散歩してきますね」

「戻って来なくていいわよ」

「は、はーい」


もうこのまま帰ろう!そうしよう!


そして家に向かって歩いている時、前から高級車が走ってきて一瞬で嫌な予感がしてしまった。


車は真横で止まり、校長先生......そう、雫先輩のお父さんが顔を出した。


「蓮くん!今日は泊まるんだって?歓迎するよ!今家に帰るところだ、乗りたまえ」

「あ、ありがとうございます......」


タイミングが悪かったせいで雫先輩の家に連れ戻され、嫌だなーと思いながら雫先輩の部屋のドアを開けた。


「帰ってきましたー」

「ひゃっ!」

「なに変な声出してるんでっ......」


雫先輩は上下真っ白な下着姿で、制服で顔を隠し、必死に手で体を隠していた。


「か、勝手に入って来ないで。早く閉めてちょうだい」

「ご、ごめんなさい‼︎」

「部屋に入ってドアを閉めてどうするのよ!出で行きなさい!」

「ごめんなさーい‼︎」


すぐさま部屋を出て、僕は頭を抱えた。


ヤバいところ見ちゃった......にしてもスタイル良すぎてビックリした!そんなこと考えてる場合じゃない、この後僕に待ってるのは死か、死か......


「死だ〜‼︎」


その瞬間、ジャージ姿の雫先輩が勢いよくドアを開け、鋭い目つきで僕を追いかけてきた。


「待ちなさい!」

「嫌です!死にたくない!」

「楽に殺してあげるから止まりなさい!」

「やっぱり死ぬんじゃないですかー!」


僕はエレベーターに乗り込み、必死に閉まるボタンを押し、なんとか雫先輩を振り切った。

エレベーターが開くと見覚えのある大きなドアがあり、クリスマスパーティーをした会場前に来ていることに気づいた。


ここなら隠れられる!


僕はパーティー会場に入り、ステージのカーテンに包まった。

その後すぐに扉が開く音が聞こえ、トン......トンっとゆっくり足音が近づいてくるのが分かり、微かに体を震わせながら見つからないことを願っていると、なぜか僕を包むカーテンがキツくなっているような気がした。


「もう逃げられないわよ」

「ヒィ!」


顔の位置のカーテンを広げられ、逃げようとしても体が動かない。


「無駄よ?カーテンごと蓮くんの体を縛ったの」

「さ、さっきのはわざとじゃないんでっ‼︎」


雫先輩は僕のお腹目掛けて膝蹴りをし、顎をグイッと掴んだ。


「私の質問にだけ答えなさい」

「はい......」

「なぜ戻ってきたのかしら」

「校長先生と会って、断り難かったのでっ‼︎痛いですやめてくだっ‼︎」

「私の質問に関すること以外口にしないことね」

「はい......」


雫先輩は相当怒っているのか、事あるごとに膝蹴りをしてくる。


「次の質問、なぜノックをしなかったのかしら」

「僕の家ではノックの習慣がなかったのでっ‼︎」


これ、お腹にアザできるやつ‼︎しかもさっきから大事な所に膝が当たりそうで怖い‼︎


「次の質問」

「はい......」

「見た?」

「......はい......」


次の瞬間、雫先輩は僕の頭を押さえて連続で膝蹴りをしてきた。


「あ〜‼︎ぐっ‼︎なっ‼︎がはっ‼︎うっ‼︎いっ‼︎たっ‼︎いっ‼︎でっ‼︎すっ‼︎」

「黙りなさい!」

「無理です‼︎やめてくだっ......」


そしてついに、恐れていた場所に雫先輩の膝が当たり、痛すぎて僕は言葉を失った。


「急に青ざめてどうしたのかしら、まだ終わらないわよ?」

「勘弁......してください......」

「反省したのかしら」

「は......い......」


雫先輩がロープを外した瞬間、僕は痛みのあまり立っていられなく、倒れる瞬間に何かに掴まろうと手を伸ばし、運悪く雫先輩のズボンを掴んでしまった。


僕の視線には、完全に下りたズボンとパンツが見え、上を見上げようとすると、雫先輩の焦った声が聞こえた。


「ううう上見たら本当に許さないわよ!地面に顔を付けなさい!」

「はい!」

「そのまま手を離して」

「はい!」


僕は悟っていた......もう許されないと。


「もういいわよ。立ちなさい」

「はい......」


立ち上がって雫先輩を見た瞬間、顔にストレートパンチをキメられて気絶し、目を覚ますと両手両足を縛られ、目隠しをされていた。


「起きたかしら」

「真っ暗でなにも見えないです」

「目隠しよ。ここは私の部屋」

「取ってくださいよ」

「明日になるまでそうしていなさい」

「そんな〜」


雫先輩は部屋を出て行き、それから2時間ぐらい戻って来なく、僕はずっと自力でロープを解こうと頑張っていた。


「ただいま」


雫先輩が戻ってくると、フワッとお風呂上がりの良い匂いがして、すぐに味噌ラーメンのような匂いがした。


「起き上がりなさい。出前を取ってあげたわよ」

「起き上がれないんですけど」

「それじゃ、ラーメンは他の誰かに食べてもらうわ」

「ちょっと待ってください!お腹空きましたよ!」


雫は蓮の顔の前に座り、ラーメンを食べさせてあげようとした。


「......口を開けなさい」

「あー、あっつい!」

「我慢しなさい」

「口火傷しちゃいます!」

「本当わがままね。自分の立場を分かっていないのかしら?」

「熱いものは熱いです!」

「まったく......フー、フー」


え、雫先輩......フーフーしてくれてるの⁉︎嘘だ‼︎口から毒吐いて毒ラーメンにしてるんだ‼︎


「開けなさい」

「あーん」

「どうかしら」

「美味しいです!」 

「フー、フー、フー」


なんかこの状況、いけないことしてる気分になるな......


「蓮くんが動けないから、仕方なくやってるのよ」

「解いてくれれば解決するんですけど」

「あそこまで変態っぷりを見せつけられて、解いたら次は何されるか分からないわ」

「なにもしませんよ!」

「いいから食べなさい」

「はい」


気分的に、美少女にフーフーしてもらいながら食べるラーメンは全然味が違う!ただ、ここは音海家だ、元々味が美味すぎる説はある。


雫先輩にフーフーしてもらいながらラーメンを食べ尽くし、この流れで甘えてみることにした。


「ずっと同じ体制で首が痛いです、膝枕してください」

「自分が悪いのに、それは図々しすぎるわね」

「雫先輩のせいで首が動かなくなる後遺症が残ったらどうするんですか」

「そ、そんなに痛いの?」

「はい」


雫先輩は無言で僕の頭を支えて、太ももに頭を乗せてくれた。


直だ‼︎雫先輩、半ズボンなのかな?にしても、何故か凄い落ち着く。


雫は自分の心臓に手を重ねて、心臓の音が蓮に聞こえないように必死になっていた。


「膝枕最高です!」

「もういいでしょ」

「ダメですよー、首が死んじゃいます」

「そう......」

(このままじゃ私が死んじゃうわよ......どうしてこんなにドキドキしちゃうの......)


安心感と満腹感で睡魔に襲われた蓮はそのまま寝てしまい、雫は蓮を起こさないように頭を床に下ろして、目隠しと手足のロープを解いてあげた。

(やっと寝てくれた......)


次の瞬間、合宿の時のように蓮は雫の服を引っ張り、抱き枕のように抱きついてしまった。


「れ、蓮くん!やっぱり起きていたのね!」

「......乃愛先輩......」

「蓮くん?」


蓮の顔を見ると、蓮は涙を流していたが、確かに寝ていた。


「乃愛......先輩......」


雫はダメだと分かっていながら、蓮をほっとけなくなり、優しく抱き寄せて頭を撫で始めた。

(私......なんでこんなことしてるのかしら......)


「ん〜っ、乃愛先輩、熱いですよ」 


しばらくして蓮が普通に喋りだし、雫は焦ったが、離れたら顔が見られてしまうと思い、体が動かせなくなっていた。


「胸当たってますよ〜、もうちょっと寝かせてください......んっ、なんか大きくなりました?」


蓮は寝ぼけながら雫の胸を揉みだしたが、雫は絶対自分だとバレたくなく、強く目を閉じて蓮から離れなかった。

寝かしつけようと頭を撫で続けると、蓮の動きが止まり、寝息も安定し始めた。


「ね、寝た?」

「......」


蓮が寝たのを確認すると、雫は自分の部屋を飛び出し、顔を隠すようにしゃがみ込んだ。


「はぁ......はぁ......」

(初めて、あんなこと......まだ高校生なのに......お付き合いもしてないのに)

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