遊園地デート


「蓮くん♡お待たせ!」

「梨央奈先輩!」


いろいろあったけど、今日は待ちに待った梨央奈先輩との遊園地デートの日!なのだが......

遊園地行きのバスに乗ると、後ろの方には僕と梨央奈先輩を除いた生徒会メンバーが集結していた。何故か生徒会を辞めさせられた瑠奈までいる......


「り、梨央奈先輩?これどうなってるんですか?」

「さ、さぁー」


僕が後ろを振り返ると、千華先輩と瑠奈は頬を膨らませて僕を睨んでいた。


「し、雫先輩。こんなとこでなにしてるんですか?」

「遊園地に行くと言ったじゃない」

「あー、そうでしたね。あははー......」


同じ遊園地かよ‼︎てか、雫先輩と結愛先輩と乃愛先輩は休日も制服なんだな。


「梨央奈先輩、僕達が行く遊園地の近くに、他の遊園地とかあるんですか?」

「ないよ?」

「絶対みんなと同じですよ!どうするんですか⁉︎」

「聞こえてるわよ。私達が一緒だと不満かしら」


雫先輩の言葉に続くように、瑠奈と千華先輩は息ピッタリで言った。


「蓮‼︎不満なの⁉︎」

「蓮‼︎不満なの⁉︎」

「お静かにお願いしまーす」

「運転手さんに注意されましたよ」

「何故私を見て言うのかしら」


もう後ろ見るのやめよ。


「蓮〜」

「なんですか?」


乃愛先輩に呼ばれて速攻見ちゃったよ。


「なんでもな〜い」


なんだこいつ‼︎先輩だけどなんだこいつ‼︎


「蓮」

「はい」


次は結愛先輩だ......


「なんでもない」


ぶっ飛ばしてー‼︎先輩だけどぶっ飛ばしってー‼︎本当にやったら僕の命が何個あっても足りないけど。


数時間後


「到着致しましたー。ご乗車ありがとうございました」


やっぱりみんなも一緒に降りた......


僕はみんなに聞こえないように、小さな声で会話した。


「梨央奈先輩。遊園地に入ったら、みんなと別れるようにお化け屋敷行きましょう」

「え.....私達別れるの?」

「そっちじゃないです。あと、みんなとって言いましたよね」

「.......お化け屋敷⁉︎」


反応のラグ‼︎月末にやるFPSか‼︎


先に僕と梨央奈先輩が遊園地に入り、雫先輩がチケットを購入してるうちに僕達は走った。


「あー‼︎蓮‼︎待てー‼︎」


瑠奈は僕達を追いかけようと遊園地に入ろうとするが、あっさりスタッフに止められた。


「お客様!チケットはお持ちですか?」

「雫先輩‼︎早く‼︎」

「私が奢るのは、生徒会に入ってる人だけよ?」

「ふぇ?」


僕達はお化け屋敷に並ぶことになったが、梨央奈先輩は僕と手を繋ぎ、笑顔のまま小刻みに震えている。


「怖いんですか?」

「こ、怖くないけど?」

「あ、蜘蛛」

「きゃー‼︎」

「まだ外なのに叫ばないでくださいよ!みんな見てます!」

「蓮くんが変なこと言うからだよ⁉︎」

「でも、本当に蜘蛛付いてますよ?」

「どこどこ⁉︎取って!早くー!」


梨央奈先輩の肩に付いていた蜘蛛を払うと、梨央奈先輩は遊園地に来たばかりなのにグッタリしてしまった。


「僕達の番ですよ」

「あ、うん......」


懐中電灯を渡されてお化け屋敷に入ると、中は真っ暗で藁の匂いが漂っていて、和風で日本のホラーをイメージしたお化け屋敷だった。


「大丈夫ですか?」

「だだだだだだだだだだ大丈夫!」

「だが多いです」

「蓮くんは怖くないの?」

「怖くないですよ?だって、まだお化け出てきてないじゃないですか」

「す、すごいね!」

(かっこいい♡蓮くんは頼りになるなー♡)


その時、首の長い血塗れのお化けが物陰から現れた。


「痛い......首が〜」


あまりの恐怖に僕は走った。


「蓮くん⁉︎待って‼︎怖くないって言ったじゃん‼︎」

「お化けが怖くないとは言ってなーい!」

「そんな.......」

「首が〜首が〜」 

「ひぃ!.......くっ」

(私を置いていくなんて......彼女なのに......私は蓮くんの彼女なのに‼︎)


「首が〜」

「うるさい」

「え」


梨央奈は怒りに顔を歪ませ、お化けの首を掴んでお化け役のスタッフを転ばせた。


「ぐあっ‼︎くっ、首が〜‼︎‼︎」


それからの梨央奈は強かった。


「8枚......9枚......1枚足りな〜い!」


梨央奈は皿を奪い、膝で皿を真っ二つに割った。


「はい。これで10枚」 

「さ、皿が〜‼︎」


その頃蓮は......


やばいやばい!梨央奈先輩置いてきちゃった!とにかく出口の外で待つしかないか......


そしてしばらく待っていると、凄い怒った表情をした梨央奈先輩が出てきた。


「ひぃ!お化け!」

「誰がお化けだって?」

「ご、ごめんなさい!」

「ねぇ、どうして置いて行ったの?私から離れたかったの?」

「ち、違いますよ!」

「だって.....私の手を振り解いてまで......蓮くんは私が嫌いになったんだね......」


実は最近、SNSで知り合った女子高生に、ヤンデレの扱いを教えてもらったんだ。


「違うんです梨央奈先輩。怯える梨央奈先輩が可愛すぎて、見ていると好きが溢れそうになって」


嘘でもいい。相手を褒めつつ好きをアピールせよ。ただし、嘘がバレたら死ぬ。


「そ、そういうことだったんだ!なーんだ、勘違いしちゃった!」


梨央奈先輩は満面の笑みを見えたと思えば、すぐにシュンとした表情になってしまった。


「私、蓮くんのこと疑っちゃった......お願い!嫌いにならないで!」


梨央奈先輩は僕の前だけだけど、本当にいろんな表情を見せてくれるようになった。

それはたとえ怒った顔でも、僕からすればちょっと嬉しかったりする。


「嫌いになんてなりませんよ。なにかアトラクション乗りに行きましょう!」

「うん!」


僕達がコーヒーカップに乗ると、何故か同じコーヒーカップに乃愛先輩が乗ってきた。


「回すぞ〜」

「乃愛先輩、なんでいるんですか」

「見て〜」



乃愛先輩が指差す方を見ると、他のみんなもコーヒーカップに乗っていた。

相変わらず瑠奈と千華先輩は僕達を睨んでる......


「人数がオーバーらしい〜」

「そういうことですか」

「はじまるよ〜」


コーヒーカップがゆっくり回り出すと乃愛先輩は、回すとコーヒーカップの回転が早くなるハンドルを全力で回し始めた。


「おらおらおらおら〜」

「乃愛!止めてー!」

「乃愛先輩!酔います!死にます!」

「死んだらそれが運命だ〜。最初からここで死ぬと決まっていた〜」

「なに運命論者みたいなこと言ってるんですか⁉︎止めてください!」

「おらおらおらおらおら〜」


カッチャンッ


「......取れた〜」


乃愛先輩は激しく回しすぎて、ハンドルをもいでしまった。


「取れた〜。じゃないですよ‼︎どうするんですか⁉︎」

「乃愛の馬鹿‼︎」

「ハンドルが取れるのも運命だったのだ〜」

「そんな運命信じたくないです‼︎」


その後、コーヒーカップは無事に止まったが、何故か生徒会のみんなが僕達を冷めた目で見てくる。


「なんですかその目。雫先輩まで」

「随分とはしゃいでいるわね」

「乃愛先輩のせいですからね⁉︎」

「うぇ〜」

「乃愛先輩。なんで先輩が1番酔ってるんですか」


そして僕と梨央奈先輩はジェットコースターに乗ることになったが、これも運命なのか、みんなもジェットコースターに並んでいる。


「る、瑠奈?なんで着いてきてるの?」

「そんなつもりない!まさかデートだったとはね!」

「瑠奈には関係ないでしょ」

「関係ない?私、入場料4900円払ってるんだよ⁉︎」

「いや、知らないよ」

「もう、ポップコーンすら食べれないよ!」

「次の方!座ってくださーい!」


瑠奈がポップコーンすら食べれないのは置いておき、梨央奈先輩と隣同士になるように座ると、僕達の前には結愛先輩と乃愛先輩が座った。


「行ってらっしゃーい!」


ジェットコースターがゆっくり動き出すと、梨央奈先輩は笑顔で僕を見た。


「楽しみだね!」

「ジェットコースターは平気なんですか?」

「大好き!」

「こんなとこで惚気るなー!」

「そうだそうだー!」

「瑠奈と千華先輩!うるさいです!」


ジェットコースターが高い位置から急落下すると、前に座る結愛先輩と乃愛先輩のフードがめくれ、初めて二人の髪を見た。

結愛先輩と乃愛先輩は二人とも髪が肩について跳ねているようなセミロングで、ちょっとかっこいい系の髪型をしていた。結愛先輩は襟足が赤。乃愛先輩は襟足が水色だった。


うわー!めっちゃ顔見たい‼︎


ジェットコースターが終わると、二人はすぐにフードをかぶり直してしまった。


「蓮くん!ジェットコースターの時の記念写真買えるって!」

「本当ですか⁉︎」


これって、二人の顔が写ってるんじゃ!


ワクワクしながら写真を見にいくと、二人はマスクとサングラスをしていた。


「抜かり無い......」


しかも、なんでサングラスがハート型なんだ。


「ん?なんか言った?」

「いや?なにも!それにしても雫先輩、ジェットコースターで無表情ですよ」

「ここだけの話、雫は絶叫系が大の苦手なの。手元見てみな?」

「すっごい力入ってますね」

「可愛いとこあるよね!記念に写真買おう!」

「はい!」


それからは、みんなと遊園地内で会うことは無く、一日中遊び尽くして夕方になると、僕達はベンチに座って少し休憩することにした。


「今日、楽しかった?」

「みんなも同じ遊園地だったのはビックリでしたけど、凄い楽しかったです!」

「もう。素直に楽しかっただけでいいの!」

「ごめんなさい」

「ねぇ。そろそろさ、梨央奈って呼び捨てで呼んでよ」

「え!でも、一応先輩ですし」

「先輩の前に、彼女だもん......」

「ん、んじゃ......り.......おな」

「Re.オナってなに?ど下ネタ?」

「......帰りますか」

「無視しないでよー!」


帰りのバスもみんなと一緒で、少し気まずい思いをしながら地元に向かった。


地元に着くと、みんなそれぞれ帰っていき、瑠奈は母親が迎えに来て、夜食の買い出しに連れて行かれた。

残ったのは......


「雫先輩、帰らないんですか?」

「少し話をしましょうか」

「え、はい」

「蓮くんは、幸せかしら」

「ま、まぁ、幸せだと思います」

「蓮くんが幸せになればなるほど、心で、または本当に泣く二人がいることを忘れちゃいけないわよ」

「瑠奈と千華先輩ですか?」

「そうよ。梨央奈さんを大切にしつつ、二人の心を傷つけない努力をしなさい」

「雫先輩って、たまに雫先輩らしくないこと言いますよね」

「......泣かれたらめんどうなだけよ。正直私には関係ないわ」

「あ、はい。そうですか」


雫は一人で帰りながら思った。

(蓮くんが生徒会に入ってから、立て続けに問題が起きて疲れが溜まっているせいかしら......変に悟られないように、もっと気を引きしめなくてはね。私は......)

「鬼の生徒会長なのだから」

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