変態だ〜‼︎‼︎


梨央奈先輩が家に泊まり、いつ寝たのか覚えていない。


「おはよう♡」

「......だ〜‼︎‼︎‼︎」

「だ〜?♡」

「なんで僕脱いでるんですか⁉︎」


目を覚ますと、僕は上半身だけ裸で、梨央奈先輩はとろけた目をして僕を見つめていた。

梨央奈先輩は髪を右耳にかけ、僕の首筋を嫌らしく舐めた。


「ちょっ......」

「本当はね♡このまま襲っちゃおうと思ったんだけど、上半身見ただけで......私......♡」


へ......変態だ〜‼︎‼︎‼︎


「こんな気持ち初めてなの♡好きで好きでたまらないの♡蓮くんの全てを私の物にしたい♡」

「あ、ありがとうございます......」

「蓮くん♡私と付き合おう?♡」

「は、はい」

「え」

「り、梨央奈先輩ならいいかなって。でも、いろいろとタイミングとか、限度とか......」

「わ、分かった!ちゃんとタイミング考える!」

「んじゃ、よろしくお願いします」

「うん!」


こうして、色んなことが起きながらも、僕に念願の初めての彼女ができた。

それは学校でも、かなり上位の可愛さ、上位の頭脳を持つ先輩。

それだけで自慢の彼女だ。


「でも、千華とかには付き合ったの言わないでほしいかも」

「なんでですか?」

「千華って、蓮くんのこと好きでしょ?仲悪くなりたくない」

「分かりました」

「生徒会内で秘密の恋愛......ドキドキするね♡」

「そ、そうですね。とりあえず、服着ていいですか?」

「いいよ!」


服を着て携帯を確認すると、瑠奈からの不在着信が402件きていた。


「402件⁉︎どんだけ⁉︎」

「瑠奈ちゃん?」

「はい」

「無視でいいよ。それより、お付き合いはじめたんだから、私のお父様に挨拶に行こ?」

「え⁉︎いきなりハードル高すぎますよ!」

「でも、挨拶しないで付き合ってるのがバレたら、蓮くん拐われちゃうかも」

「そ、そんな怖いんですか?」

「お父様、私のこと大好きだから!」

「蓮〜!梨央奈ちゃ〜ん!朝ごはんよ〜!」


お母さんに呼ばれ、僕は先に一階に降り、梨央奈先輩は昨日着ていた私服に着替えてリビングにやってきた。


「おはようございます!」

「おはよう!」

「今日から、蓮くんとお付き合いさせていただくことになりました!よろしくお願いいたします!」

「えー⁉︎そうなの⁉︎やっと蓮にも春が来たわね!」

「う、うん」


親に言われるのはかなり恥ずかしい......


朝ごはんを食べ、梨央奈先輩の家に向かった。


「せ、先輩......冗談ですよね」

「ん?なにが?」

「こんな豪邸に住んでるんですか⁉︎」

「ヨーロッパにありそうな家で、私も気に入ってるんだ!入ろ!」


こんな金持ち美少女の変態先輩が僕の彼女なわけない‼︎あ、なんかラノベタイトルみたい。


その時、門の前でサングラスを着けたスーツ姿の男性に声をかけられた。


「お嬢様、男と朝帰りですか?」

「失礼なこと言わないで。私の恋人だから」

「失礼しました!中へどうぞ」

「お、おじゃまします......」


僕は小さな声で梨央奈先輩に聞いた。


「今のは?」

「警備の人だよ?」

「す、凄いですね」


大理石の床で、広すぎるリビングのソファーに座ると、目つきが怖すぎる、スタイリッシュなスーツを着た男性が現れた。


「お父様!」

「梨央奈、男と朝帰りとはいい度胸だな」

「紹介します!今日からお付き合いをすることになった、涼風蓮くん!」

「よ、よろしくお願いします!」

「付き合いを始めただと......貴様‼︎」

「は、はい‼︎」

「梨央奈のどこに惚れた」

「さ、支えたい、守りたい存在だと思いました!」


梨央奈先輩のお父さんは、梨央奈先輩を見つめた。

(確かに、いつも作り笑顔で機嫌を取ってくる梨央奈が普通の表情をしている......なにか、心に変化があったのか)


「どう支える。どう守る。説明してみろ」

「り......梨央奈先輩は、一人でなにかを背負い込んでいます。そのなにかはまだ分かりません......でも、少しずつ時間をかけて、その何かを教えてくれたらいいなと思ってます!そして、僕が半分背負います」

「ダメだな」

「え?」

「お前が全部を背負え。その覚悟を持て」

「はい‼︎」

「......いい返事だ。君は自由か?」

「自由?」


梨央奈先輩は僕の手を引いて、一緒にソファーに座った。


「蓮くんは生徒会メンバーだよ」

「そうなのか。あの学校で自由を手にできない生徒は、梨央奈の彼氏に相応しくないからな」

「認めてくれる?私達の関係」

「あぁ、いいだろう。だか、梨央奈を傷つけたらお前を消す‼︎」


梨央奈先輩はお父さんをギロッと睨んだ。


「あっ、いや、冗談だよ梨央奈」

「だよね!」


なんだ?厳しいけど娘には甘々タイプか?


「生徒会ってことは、雫ちゃんのことは知ってるよな」

「はい」

「お姉さんはまだ見つからないのか?」

「お父様‼︎」

「な、なんだ?」

「余計なこと言わないで‼︎」


お姉さん?見つからない?なんのことだろ。


「雫先輩のお姉さんが、どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない。忘れてくれ」

「気になります‼︎教えてください‼︎」

「梨央奈?どうする?」

「......誰にも言わないなら」

「言いません‼︎」

「そうか。雫ちゃんはな、一年生の頃は元気で明るく、よくこの家に遊びに来て、ずっと楽しそうに笑う子だった」

「雫先輩がですか?」

「あぁ、その時の生徒会長が雫ちゃんのお姉さんだったんだが、女性ってだけで舐められたのか、沢山の生徒のいじめの対象にされた」

「いじめ......」

「そして、卒業せずに学校をやめ、姿を消したんだ。その恨み、怒り、そしてなにもできなかった悔しさと罪悪感があの子に鬼のお面......十字架を背をわせたんだと思う」

「そんなことが......じゃ、やっぱり厳しすぎるのも理由があるんですか?」

「あの子なりの考え、正義があるんだろう」

「蓮くん、私はね」


梨央奈先輩は僕の手を握って、潤んだ目で僕を見つめた。


「蓮くんなら、雫の仮面を取れるんじゃないかって思ってるの」

「僕ですか⁉︎」

「だって、他に雫を優しいかもなんて言う人は居ないし......蓮くんしかいないんだよ!お願い......雫を救って?」

「......どうやってですか」

「分からない......」

「ゆっくりでいいだろ。梨央奈に敬語ってことは一年生なんだろ?まだ入学して半年も経ってない。時間はいっぱいある」

「わ、分かりました」

「んじゃ、俺は仕事に行ってくる。高校生らしい恋愛をしない」

「はい!お父様!」


朝から首筋ペロペロするのは、高校生らしい恋愛でしょうかお父様。怖いから絶対聞かないけど。


そして梨央奈先輩のお父さんは仕事に向かった。


「よかったね!認めてもらえて!」

「安心しました〜」

「ちなみに、雫の話しちゃったから言うけど、蓮くんが生徒会に入ったのは、快適に過ごしたいからとか、安易な考えでしょってバレてるからね?」

「なんで⁉︎」

「雫は人を見る目があるから」

「やばいじゃないですか‼︎」 

「でも今まで、それを問い詰められたりしなかったでしょ?」

「確かに......」

「なにか考えがあるのかもね!」

「考えが......」


そしてその日は梨央奈先輩の家で遊び、瑠奈と会うことはなかった。

千華先輩には、遊べないって電話で伝え、なんとか納得してもらえた。


それから瑠奈は五月中、一度も学校に来ることは無く六月に入り、近々、体育祭の練習が始まるって時に、とうとう雫先輩に生徒会室に呼ばれて聞かれてしまった。


「瑠奈さん、ずっと学校に来ないけれど、なにかあったのかしら」

「それがまったく分からないんですよ」


すると、生徒会室の椅子に座ってグルグル回る結愛先輩が気怠そうに言った。


「ボコボコにしすぎた?怖くて来れないんじゃない?」

「いや、瑠奈はそんなタイプじゃないですよ」


てか、未だに結愛先輩と乃愛先輩の素顔を見たことないんだよなー。


「んじゃなんで来ないわけ?」

「分からないです」

「幼馴染みなんだろ?連絡してみなよー」

「それは必要ないんじゃないかな!」


赤いソファーに座り、レモンティーを飲んでいた梨央奈先輩が、ニコニコしながら口を開いた。


「必要ない?なんで」

「きっと反抗期だよ!連絡なんてしたら、ますます学校来なくなっちゃうかもよ?」

「確かに」

「梨央奈さん。最近なにか変わったことあった?」

「なーんも?」

「そう。ならいいのだけれど。千華さん」

「んー?」

「乃愛さんを起こして」


乃愛先輩は、長いテーブルの上に寝そべっていた。


「起きてる〜」


え、ずっと寝てると思ってた。


「それじゃ今日の放課後は、生徒会で街のゴミ拾いをするから、各自、帰りの会が終わったら生徒会室に集まってちょうだい」


そして帰りの会が終わると、林太郎くんは座る僕の肩を揉みながら話しかけてきた。


「瑠奈と喧嘩したか〜?」

「してないよ?」

「んじゃ、なんでこんなに学校休んでる。二年生になれなくなるぞ〜」

「僕も知らないって」

「瑠奈は蓮が好きなんだぞ?いいのか?ほっといて」

「でも、僕は梨央奈先輩と付き合ってるから」

「は⁉︎マジ⁉︎」


あ......会話の流れで言っちゃった......まぁ、林太郎くんなら大丈夫か。


「マジマジ。だから瑠奈に構ってられないの。とにかく僕は生徒会の仕事があるから行くね」

「お、おう」


そして林太郎は、帰り道で瑠奈を心配して電話をかけた。


「おっ!出た。ごめんな、蓮じゃなくて」

「携帯鳴って期待した」

「ごめんごめん。元気?」

「うん」

「なんで学校来ないんだ?」

「蓮が私を必要としてるのか確かめたかった。運命で繋がってるから大丈夫って信じてる」

「運命?よく分からないけど、蓮は今、梨央奈先輩と付き合ってるらしいぞ?取り返すなら早めにな」

「......そうなんだ。明日から学校行くよ」

「本当か⁉︎待ってるからな!」

「うん」


ゴミ拾いが始まって15分程経った時、千華先輩と二人でゴミを拾っていると、雫先輩はパンパンになったゴミ袋を持って現れた。


「15分も経っているのよ?なぜ袋一枚もいっぱいにできないの?」 

「ごめんねー!私が蓮に話しかけすぎたせいかも!」


千華先輩は僕を庇うように、僕の前に立った。


「連帯責任。二人は隣町まで拾いに行きなさい」


梨央奈先輩と、梨央奈先輩のお父さんの話を聞いてから、雫先輩の発言全てに意味がありそうで頭がパンクしそうになる。

それに、この厳しさの裏には、お姉さんのいじめって過去があるんだもんな......

未だに本当かどうか、ちょっと疑ってるけど。

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