ヤンデレ幼馴染みと美少女生徒会メンバーが、僕を挟んで睨み合っているようです‼︎

浜辺夜空

本編

鬼の美少女生徒会長


れん〜!大変大変!」


高校1年の4月6日。今日から僕は高校生。

今日は待ちに待った入学式で、新しい生活に胸が躍る。

爽やかで気持ちのいい風が吹く、そんな日の朝から、僕に向かって走ってくるのは、身長149cmのチビ。幼なじみで同い年の大槻瑠奈おおつきるなだ。


「どうしたの?」

「超ウルトサッ」

「噛んだからやり直しね」


瑠奈は来た道を走って戻り、また僕に向かって走って来た。


「超ウルトラスーパー大変なんだけど!」

「ウルトラの後にスーパー付けたら、スーパーが霞むじゃん」

「いいから聞いて!」


瑠奈は、走るところからやり直すような変な奴だが、見た目は普通に可愛い。

色白で明るめの茶髪ロングで、軽く猫っ毛。そして顔はザ.美少女って感じだ。

言ったら不機嫌になるから言わないが、軽くロリって感じ。


「んで、なにが大変なの?」

「お母さんが宝くじに当選した‼︎」

「え⁉︎幾ら⁉︎」

「三百円‼︎」


そう言いながら、ニコニコと嬉しそうに僕を見る瑠奈に呆れて、瑠奈を無視して学校に向かって歩き出した。


「無視するなー‼︎」 


学校に着き、クラス表を確認した。


「げっ......瑠奈と一緒だ」

「蓮〜!どうだった⁉︎」


瑠奈はチビのせいで、大勢の生徒に押されて、だいぶ後ろの方にいた。


「僕は二組!瑠奈は三組だよ!」

「えー!一緒じゃないの⁉︎」

「そうみたいだね!」


嘘をついた理由はない。なんとなくだ。

とりあえず自分の教室に行くと、黒板に自分の席を確かめる紙が貼れていた。


ラッキー!廊下側の後ろから一個前の席だ。

嫌なことがあるとすれば、後ろの席が瑠奈だってことぐらい。

別に瑠奈のことが嫌いなわけじゃないけど、いつも着いてきたりして、ただただ鬱陶しいのだ。


「蓮!」

「林太郎くん!おはよう!」


話しかけてきたのは、中学の頃からの友達、沢渡林太郎さわたりりんたろう。ガリガリのメガネくんなのに、マッチョに憧れて筋トレしまくっているが、未だ効果は現れていない可哀想な人。


「同じクラスだな!」

「うん!よろしくね!」

「おう!」


全員席に着き、先生を待っている時、瑠奈が涙目になって教室に入ってきた。


「蓮〜」

「なんで泣きそうなの?」

「蓮が嘘つくからでしょ!三組のみんなに笑われたよ‼︎」

「ごめんごめん」

「んー!」


瑠奈が頬を膨らませて睨んでくると、タイミング良く先生が教室入ってきた。


「みんな入学おめでとう!体育館前に移動するわよ!」


担任の先生かな?明るくて若い女性教師だ。

全員で体育館前に整列すると、各クラスの先生達が、一人一人の生徒を厳しく確認し始めた。


「おい、ワイシャツ出てるぞ」

「す、すみません」


入学式早々、あんな強気で注意されるとか可哀想だな。そんな他人の心配をしている時、目の前で瑠奈が先生に話しかけられた。


「この髪色は面接とか受験の時に何も言われなかった?」

「地毛って言ったら大丈夫でした」

「なら大丈夫ね!」


地毛ですで通るのか......厳しいのか緩いのか分からないな。


厳しい身嗜みチェックが終わり、体育館に入場して、入学式が始まったが、祝いムードよりも、何故かピリついた雰囲気が目立つ。

全員、用意された椅子に座ると、一人の女子生徒がステージに上がった。

一年生のリボンの色は青で、二年生は赤、三年生は緑。あの人は二年生か。

黒髪ロングで、淑やかな雰囲気......スタイルも良くて、すごい美人だな。


「入学おめでとうございます。以上を持ちまして、入学式を終了します」


......え?何言ってんの?あの人。


一年生と、その保護者がざわつき始めると、先輩はステージ上から保護の方を見つめた。


「今日は自分の子供の晴れ舞台。文句を言いたくなるのも分かりますが、祝われる為に入学したわけではありませんよね。子供を応援してきた達成感を感じたい。当たり前の感情だと思います」


先輩はマイクを手に持ち、舐めるように新入生を見ながら話を続けた。


「ですが、自分の子供には優秀な生徒でいてほしいとも思うはずです。入学式は終わりにして、早速授業に取り掛かりましょう。この学校の先生方は優秀な方ばかりなので、安心してください」


体育館の両サイドに並ぶ先生達は、保護者に向かってお辞儀をした。


なんなんだこの学校......全員洗脳されてるのか?しかも二年生の女子生徒に......


先輩は喋りながらステージを降り、保護者達が座る列のど真ん中に立った。


「そんな学校の受験に合格した、素晴らしいお子様をお持ちのお母様、お父様方に聞きます。1秒を無駄にして未来を捨てるか、1秒を大切にし、さらに優秀なお子様に育て上げるかです。私達に任せてください」


保護者達は全員立ち上がり、一斉に頭を下げた。


「よろしくお願いします‼︎」


なんだそれ‼︎僕のお母さんまで頭下げてる‼︎


「自己紹介が遅れました。二年、音海雫おとみしずく。この学校の生徒会長です。それと、頑張った生徒には、頑張った分の自由が与えられます。それでは解散」


一年生は、動揺と不安の中で教室に戻った。


「蓮」

「なに?」

「なんかやばくない?この学校、なんかおかしいよ」

「一年生全員が思ってるだろうね。しかもあの人二年生だよ?三年生でもないのに、あの権力はどういうことなんだ?」

「私に聞かれても分からないよ〜」


教室で先生を待っていると、すぐに先生はやって来た。


「ごめんねー?みんなビックリしたでしょ。私は中川葵なかがわあおい!中川先生って呼んでね!」


すると、林太郎くんが立ち上がった。


「中川先生!あの入学式はなんなんですか!」

「んー、ちょっと説明に困るかな。大丈夫!みんなもすぐに慣れるから!」


慣れたくない。僕はもっと、高校生活をエンジョイしたいんだ。


「失礼します」 

「あら雫さん、どうしたの?」


何故か雫先輩は僕達の教室にやって来て、中川先生の質問を無視し、僕の後ろ、瑠奈の机の前に立った。


「立ちなさい」

「わ、私?」

「そうよ」


瑠奈は言われた通り立ち上がった。


「その髪色はなにかしら」

「地毛ですけど」


その嘘、無理ありまくりなんだよなー......はっ⁉︎


「いっ、痛い‼︎」


雫先輩は瑠奈の前髪を握るように掴んで上に上げた。


「少し根本が黒いわね」

「し、雫先輩、離してあげてくれませんか」


やば、思わず止めに入っちゃったよ。変にマークされたりしないかな......


雫先輩は瑠奈の前髪を掴んだまま、無表情で僕を見つめた。


「私に命令するにはまず、いい成績を取りなさい」


はっ⁉︎怖っ‼︎他の人と雰囲気違いすぎる‼︎無表情なのに鋭く感じるあの目つきはなんだ‼︎


それだけ言って、雫先輩は瑠奈に視線を戻した。


「黒い部分は5ミリ程度ね。明日までに黒く戻さなければ、色の付いた部分がなくなるように、坊主になってもらうわ。いいわね?」

「......うるさい」

「はい?」

「る、瑠奈?反抗しないほうが......」

「離せー‼︎この乱暴女‼︎ゴミ‼︎クズ‼︎」


やばいやばいやばいやばい‼︎


雫先輩は瑠奈の髪から手を離し、顎を力強く掴み、瑠奈に顔を近づけた。


「貴方、面白いわね。名前は?」

「る、瑠奈。胸のネーム見れば分かるでしょ」

「大槻瑠奈さん。私に暴言を吐いたのは、貴方が初めてよ」

「どういたしまして」


瑠奈〜‼︎それ以上先輩を煽るな‼︎


僕は瑠奈を見て、口パクで「やめろ」と伝えるが、瑠奈は理解できなく、顎を掴まれたまま僕を見つめた。

それに気づきいた雫先輩は、瑠奈を離して僕の方を向いた。


「な、なんですか?」

「瑠奈さんのお友達?」

「は、はい」

「貴方からも、黒染めするように言っておいてもらえるかしら」

「は......はい」

「それでは中川先生、失礼しました」

「は、はーい」


瑠奈は椅子に座り、不機嫌そうに前髪を直し始めた。


「大丈夫?帰りに黒染め買って帰る?」

「いい。私は絶対に言うこと聞かない」

「あの感じだと、本当に坊主にされちゃうんじゃ......」

「この学校はおかしいもん。絶対に負けない」


翌日、また瑠奈は僕の名前を呼びながら走ってきた。


「蓮〜!」

「おはよう」

「おはよう!」

「本当に黒染めしなかったんだね」

「当たり前でしょ!」


そのまま二人で学校に向かうと、雫先輩と二人の女子生徒が校門前に立っていた。

二人の生徒は体育会系で、ちょっと怖い......

でも、自然に通り過ぎれば大丈夫。平常心を装うんだ。


「おはようございまーす」

「この女子生徒を抑えなさい」

「はい!」



ダメだった〜‼︎てか、僕がビビる必要ないのかな?


雫先輩と一緒にいた二人の生徒は、瑠奈の両腕を掴んだ。


「な、なに⁉︎」


雫先輩はスカートのポケットからバリカンを取り出した。


「私は忠告したわよね。黒くしなければ坊主だと」

「ふ、ふざけないで‼︎」


登校してくる生徒は、あまり関わらないように、見て見ぬふりをして学校に入っていく。


「し、雫先輩」

「なにかしら」

「勘弁してもらえませんか」

「忠告を無視したのが悪いのよ?それとも、代わりに貴方が坊主になる?」

「嫌です‼︎」

「蓮‼︎助けてよ‼︎」


助けたいのは山々だけど、僕は絶対に坊主になりたくない‼︎高校で彼女作るために伸ばした髪なんだ‼︎

でもなにか考えろ......雫先輩を止める方法......


雫先輩はバリカンのスイッチを入れ、瑠奈は涙目になっている。


どうやって止めれば......力尽くで止めて怪我させたら大変だしな......いや、僕が怪我するかも。


「やめて‼︎離して‼︎」

「雫先輩!」

「しつこいわね」

「好きです‼︎」


咄嗟に出た言葉がこれだった。恥ずかしくて死にたい。でも、雫先輩だって女の子だ。恥ずかしがってどこかに行くはず......


そして、何故か少し悲しそうに僕を見つめる瑠奈。

そんな瑠奈を見た雫先輩は、バリカンのスイッチを切って僕の頬に触れた。


「どこが好きなのかしら。昨日から?今日から?一目惚れ?こんな場所で告白なんて、勇気があるのね」


なんだこの質問攻め......


「ひ、一目惚れです」 

「そう。でも、貴方とは付き合えないわね」


付き合えても困るけど、振られるのはそこそこ傷つく。


「まずは友達からでどうかしら」

「よ、よろしくです!」


雫先輩は軽く口元だけニコッと笑った後、瑠奈に視線を戻した。


「離してあげなさい」

「はい!」

「全員、教室に戻っていいわよ」


雫先輩も校内に戻って行き、なんとか作戦成功みたいだ。

そして僕達も教室に向かい始めた。


「瑠奈、大丈夫?」

「あり得ない。蓮があんな奴好きなわけないんだ。消さなきゃ.......」

「なに?」


小さな声でぶつぶつ言っていて聞こえない。


「消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ」

「瑠奈?」

「あっ。ど、どうしたの⁉︎」

「さっきから、なに言ってるのかなって」

「ううん!なんにも!」

「ならいいんだけど」


なんか元気ないような気がするな......坊主にされそうになったんだから当然か?

それよりあれだ!雫先輩と友達になるってことは、快適なスクールライフを送れるかも⁉︎よく分からないけど、雫先輩はこの学校の独裁者の様な人だ......決めた。

僕は雫先輩と仲良くなって、最高の高校生活を送ってやる‼︎

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