週末になると会社の後輩が通い妻してくる件
目玉焼き丼
11月1週目 前編
「はぁ、やっと終わった……」
背もたれにもたれかかりながらため息をつく。
俺の名前は高杉恍作たかすぎこうさく都内に住むしがないプログラマーだ。
現在の時刻は夜11時、ようやく業務から解放された俺は椅子に深く腰掛けた。
すると後ろから缶ジュースが伸びてきて頬に当たる
11月上旬の暖房の効きすぎた部屋で火照った体には急な寒暖差は堪えるようで
「うわっ!」
と大きな声がでてしまった。
そして背後から遅れて出てきたのは、身長は平均より少し低いくらいの小柄な印象を受ける大きなクリクリとした瞳と綺麗に整えられた茶髪のボブカットが特徴の美女。
俺の2年後輩で入社一年目の森田千咲もりたちさきである。
その特徴的な瞳でこちらを覗きながら生意気な後輩はのたまう。
「くくく!せーんぱいっ!まだ仕事終わらないんですかー?」
ニヤニヤとしながらこちらをみつめる後輩だが俺はあることに気が付く
「うるさいな…そういうお前もこんな時間までのこってるじゃないか
仕事が終わったんならこんなところで油売ってないでさっさと帰れ」
手をヒラヒラさせながらそう言うと
「それはできません!今日は金曜日じゃないですか!
金曜日は先輩のお家でご飯食べるって約束忘れたとは言わせませんよ」
と頬を膨らませながら抗議してくる
「はぁ……その約束今週も有効なのか?
お前俺の同期の長谷部に飯誘われてたじゃねぇか。俺はてっきり今日はそっちにいくもんだと……」
その発言が森田の怒りをさらにかったのか、さきほどよりも顔を赤くする。
「はぁ!なんで私が先輩との約束断って長谷部先輩とご飯に行かなくちゃならないんですかー!
(そんなこと言うなんてひどいです。私こんなにアピールしてるのに…)」
なにがそんなに気に食わなかったのが分からないがこの怒った状態のまま放置しておいても後々面倒なことになるのはわかっていたので大人しく受け入れることにする。
「わかった、わかったから。そうわめくな……頭がキンキンする」
そう言うと満足したのか森田は満面の笑みで
「はいっ!そうと決まればすぐに帰りましょう!今日はカレーですよ先輩!」
と元気いっぱいに返事してきた。
(外面は完璧だし黙っていれば美人なのになんでこの後輩は俺にばっかりかまうんだよ……)
と思ったが口に出すと烈火のごとく叱られることを経験上知っているのでぐっと黙って
「じゃ、いくか……」
そう声をかけ会社を後にするのだった。
☆☆☆
家につくと森田は勝手知ったる様子で洗面台に向かい手を洗い、そのままキッチンに立つ。
材料を切り順番に炒めていく。水とカレールゥを加えてしばらく煮込むといいにおいがしてくる。
その間俺はぼーっとテレビを見ていたがそれも暇なので、立ち上がり千咲のもとへ行く。
どうやら完成して取り分け始めているようだった。
「どうですか先輩?おいしそうですよ!」
自慢げに言ってくる千咲を無視して鍋をのぞき込む。確かにいい匂いもしておいしそうだ。
「ああ、そうだな。じゃ、俺が取り分けるから。机の準備頼む」
流石になにも手伝わないわけにはいかないと思い取り分けようと鍋の前に立つ。すると千咲が俺の肩口から覗いてくる。
その行動に、俺が取り分けるのがそんなに信用ないのかと少し傷つきながら
「近いしうっとうしい……ちょっとどいてくれ」
と払いのけるように手を振ると
「んー!なんですかその態度!カレーはいいですからちょっとこっち向いてください!」
なぜか急に不機嫌になった千咲はがしっと俺の顔を掴みどんどん顔を近づけてくる。
(……っておいおいおい!!)
焦って手を外そうとするも、カレーの皿で両手がふさがっている。
(あ……これ逃れられないやつだ)
そのことに気付いた俺はなぜか千咲と初めて出会った日のことを思い出す。
「はぁ……なんでこんなことに」
そうあれはほんの3ヵ月前、8月のことだった……
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