「背に腹は変えれない」
「さて。これからについて話をしようと思うのだが……。生憎、お前さんについての情報がまったくと言っていいほどない。だが、予想はできる」
「予想は誰にでも出来ることだからな」
「言えてるな」
カクリは、男性のレーツェルへの言葉に少し睨むが、気にする様子を全く見せない。何処吹く風状態だ。
「お前さんは記憶を取り戻したいか?」
「あぁ」
「その意思は、何があっても覆ることはないか?」
「──何が言いたい?」
レーツェルの言葉に男性は、不信感を覚えたのか、怪訝そうな表情で問いかけた。
「記憶を取り戻すために、お前さんには色々やってもらおうと思ってな」
「それをやらねぇと記憶は戻らねぇ──と言うことか」
「そうなるな」
その言葉に、男性は考え込んでしまった。
「────内容は?」
「慎重だな」
「当たり前だ」
眉間に皺を寄せ、男性はレーツェルに静かな声で問いかける。それを、面白そうに目を細め、レーツェルは男性を見下ろす。
カクリは何も口出さずに2人の会話を聞いていた。
「まず、お前さんに呪いをかけたのは悪魔だと推測できる。そして、その呪いを浄化する方法は今のところは記憶を取り戻し、その犯人を見つけ殺すしかない」
「浄化から殺しになってんじゃねぇか」
「わかりやすいだろう。そして、記憶を取り戻すにはまず、情報収集からだ」
「まさか、聞きこみ調査とかをしろってんじゃねぇだろうな。どこの馬鹿が『俺のことを知っていないか? 知っていればその全てを教えて欲しい』と聞くんだよ。どこのナンパだ古すぎる」
「それは見ているこっちは楽しそうであるな」
レーツェルの楽しげな言葉に、男性は不機嫌そうに睨みあげる。
「安心せよ。そのようなことはせん。それより、もっと簡単なことがある」
「簡単なことだと?」
「そうだ。カクリと共に行動し、記憶を集めるが良い」
レーツェルの予想出来なかった言葉に、先程まで黙って話を聞いていたカクリは驚きの表情で浮かべ、男性は目を丸くした。
「なっ!! 何故ですかレーツェル様!! 私、嫌ですよ!! こんな人間と行動を共にするなど!!」
「それはこっちのセリフだ。こんな餓鬼と一緒に行動していたら見つけられるもんも見つかんねぇよ!!」
2人は未だギャーギャーとものを言っているが、レーツェルはそれを全て聞き流し、説明を続ける。
「カクリは人の想い、記憶などを感じる力がある。それだけではなく、様々な力を持っている。それを使えば少しは楽に情報収集が出来ると思うのだがな。それに、カクリの力はまだ弱いため、人間であるお前さんに分けることも可能だ」
「分ける──だと?」
意味深な言葉に、男性は眉を顰める。カクリもその事は知らなかったようで、そのまま固まってしまった。
「そうだ。カクリの得意な力をお前さんも使えるように出来る。それを使い、記憶集めや呪いについてなど。様々な情報を探すが良い」
男性は顎に手を当て、考える素振りを見せる。そこまで悪い条件という訳では無いと思ったのだろう。頑なに否定する訳ではなく、これからについて考え始めたのだろう。
「な、何を考えておる人間。今すぐにでも断るが良い!!! お主も嫌だろう!!」
カクリはやっと意識を取り戻し、男性に文句を言っているが、そんな文句は男性には聞こえていないようでずっと考え込んでいる。
「この餓鬼じゃないとダメなのか?」
「俺のだと力が強すぎてお前さんが潰れてしまう。子供であるカクリだからこそ出来ることなのだ」
その言葉に、男性は再度考えるように俯く。カクリは首を横に振り「断れ」と無言で訴えていた。
「………………分かった。背に腹は変えられない。もう少し餓鬼の力を教えろ」
「なっ?!」
「よかろう。教えてやる」
レーツェルは喉を鳴らし、楽しげに説明を始める。その様子を男性は、眉間に皺を寄せ見上げ、カクリは男性の返答を耳にした時、その場に固まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます