第10話 生首面の生配信(2)

「見て!」

 メグが声を上げた。面の後ろ、壁面に突然赤いものが広がった。ルイは思わず画面を凝視してしまう。コメント欄にも急激に書き込みが増えた。驚きを表すものが多いが、裏に装置があることを疑う声もある。

「うっわ」

 赤い液体は量を増して、だらだらと流れていく。粘性が高いようで、ゆっくりと壁を伝って行った。

『毎晩こうなんですよ』

 南雲の言葉に「よく平気だな」と、レンと同じ事を指摘するコメントが書かれた。

「ほんとだよな」

 レンはそれを読んで独りごちる。

『ここからですよ! よーく見ていてくださいね!』

 南雲は楽しげだ。この後何が起きるかはルイも聞いている。液体が床に付いた途端、消え失せるのだ。画面を凝視していると、やがてそれは起こった。床まで届いた瞬間、ふっと赤いものはかき消えた。コメント欄はやはり驚きの書き込みが続く。プロジェクションマッピングを疑うものもあったが、もしそうなら前後で多少明るさが変わる、という指摘もされている。ルイは首を横に振った。

「僕は霊感とかないけど」

 実物の気配を思い出す。

「これはそうなんだと思うな」

「ああ」

 レンもしみじみと頷いた。彼もまた霊感と呼べるものはないが、

「その気持ちはよくわかるぜ、警視」

 居合わせた者として実感はある。

「まったくさぁ」

 ナツが再びマイクをオンにした。ぼりぼりと、固い物を咀嚼する音が入る。

「食ってから話せ」

 アサに言われると、茶を呷ってから彼女は言葉を続けた。

「蛇岩さんには悪いけど、趣味悪いよね」

「俺もそう思うよ……」

 レンは大きく溜息を吐いたのであった。

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