生首面

第1話 古い友人(1)

 警視庁に勤務する蛇岩レン警視正は、自宅でくつろいでいるところだった。同居している高校2年生の姪は、自室に引っ込んでネットサーフィンだ。レンはお手伝いの女性が置いていってくれたお茶を飲んで読書中である。有名な翻訳ホラー小説を読んでいた。事態が徐々に不穏さを増していく、という辺りで、突然テーブルが唸りを上げる。思わず肩を震わせると、なんということはない。マナーモードにしたスマートフォンが着信を知らせているのである。

「びっくりした」

 本とカップを置いて、端末を取る。発信者は「南雲真一」。大学の時から付き合いの続いている、数少ない友人の一人だ。今は会社経営をしている。やや調子に乗りやすいきらいがあるが、それが商売の助けになるタイプだったらしい。経営は順調のようだ。

「もしもし? 南雲か?」

『よう、蛇岩。元気か?』

「ああ。元気だよ。お前はどうだ?」

『おかげ様で、俺も元気だ。早速本題に入るが、お前、まだ妖怪退治の仕事してるのか?』

「妖怪退治?」

 聞き返してから、それが以前まで室長に就いていた警視庁都市伝説対策室のことだと気付く。苦笑しつつ、

「妖怪じゃねぇ。都市伝説だ。今はもう室長は後進に譲ってる」

 人の良いキャリアの警視を思い出しながら告げた。

『まあ、何でも良いんだよ。まだ妖怪に興味あるか? 面白い物見つけてさ。ちょっと見て欲しいんだけど』

「それは通報か?」

『通報? 何言ってんだよ! 別に襲われてるわけじゃないって。だったらこんな悠長に電話なんかしない。そうじゃなくてさ、お前に見せたいんだよ。お前絶対こう言うの好きだからさ……』

 今ひとつ要領を得ない話だが、どうやら核心部分を敢えて避けているらしいことはレンにもわかった。これは、レンが実際に彼の家に赴かないと教えてもらえないに違いない。正直、得体の知れない「妖怪」の様なものに対して丸腰で行くのも気が引けたが……本人が言うように、呑気に電話をしてくるくらいなので、襲いかかって来るような怪異ではないのだろう。

「良いよ。見てやるよ。いつ行けば良い?」

『お前が泊まりがけで来られる日!』

「は?」

 レンは目を瞬かせた。

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