第6話 釣り出し

「メリーさんのラストがなんなのか。最も流布している噂の内容が具現化している筈です」

 ルイは副校長にそう説明した。

「ですから、協力してくれる生徒さんだけで良いのです。明日以降、警察に自分の知ってるメリーさんについて話してもらえるようにお願いしてもらえませんか。保護者の同意が必要なら同意して下さるご家庭だけで結構です」

「わ、わかりました……」

 副校長はぽかんとしてルイを見た。ルイは微笑むと、

「こう言う聞き取りも捜査の一環なんです。ご協力いただければ……」

「も、もちろん手配します」

「良かった。ありがとうございます。あくまで任意ですから……流石に、今日の五時までに取り付けるのは無理でしょうし、明日以降、平日の午前九時から午後五時の間にこちらにご連絡いただければ……」

 名刺を渡す。副校長は両手で受け取ると、

「はい、ご連絡します」

 何かを決心したように頷いた。


「室長さぁ、順応性高いって言われない?」

 帰り道、車を運転しながらナツがぼやくように言った。ルイは助手席、メグは後部座席だ。

「え? ど、どうして?」

「いやぁ……こんなトンチキな部署に入って二件目の事件で、よく任意の聴取なんか思いつくなって思って……」

「ああ、僕卒論が噂だったからだよ。とりあえずヒアリングしとけって感じ」

「そうかもしんないけど」

 ナツは目を細めて、ふっと笑った。嫌みや皮肉ではない。

「室長が来てくれて良かったなぁ」

「そ、そう?」

「ねえ、メグ。あんたもそう思うだろ?」

「うん!」

 打てば響くとはこのことか。メグは即答した。

「無事解決したいねぇ」

「うん。本当に。これから被害が増えちゃったら嫌だしね」

 ルイは心の底からそう言ってるみたいだった。その真面目さがなんだか面白くってナツはまた笑う。ルイはきょとんとしてナツを見て、メグを見た。


「戻ったよ」

 庁舎の部屋に戻ると、先にアサが戻ってパソコンとにらめっこしていた。ナツの声に振り返る。

「おう。早かったな。室長、お疲れ様です」

「桜木さんもお疲れ様」

「子どもたちの聴取をするとか」

「うん。今日手配をお願いしたから明日か明後日かな? 早ければ早いほど良い」

「理由を聞いてもよろしいですか?」

「え? 都市伝説は『こうだったら良いな、ああだったら怖いな、怖かったら面白いな』って言う消極的な『信仰』が具現化するんだよね? ということは、より流布している方が具現化するんじゃないかって……だからどのパターンが広まってるか確かめようと……佐崎さんに相談しないで思いつきで言っちゃったけど」

「室長」

「何?」

「聴取、よろしくお願いします」

「う、うん。皆来るよね?」

「一人にしないよ」

 ナツがウィンクした。かっこいい……と、ちょっとだけときめいたルイだった。

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