ループエンド

麻城すず

1 あのとき

 嘘、みたい。


 そう思ったのは、こちらからは絶対にふれられないと思っていた骨張った大きな手が、私の頬を掠めたから。


「すいません」


 そんな他愛もない一言が、確かに私だけに向かって放たれたから。


 馬鹿みたいって思った。


 そこにそんな大した意味なんてないのに、そんなこと分かっていたのに。

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