双子の少女

 翌朝、目を覚ますと早速全身を筋肉痛が襲った。

 動かすたびに悲鳴をあげる肉体に鞭打ちながら、何とか立ち上がる。そのまま冷蔵庫に行き、麦茶のペットボトルを取り出して半分ほど飲んだ。

 冴え始めてきた頭で今日は何から始めようかなどと考えながら頭を掻いた。じゃりじゃりとした感触が指先に伝わってくる。

「…………シャワー浴びるか」

 そう即決すると、棚に置いてあったずいぶん使っていないタオルを取り出して浴場へと向かった。


 浴室の手前、脱衣所に着くと何やら人の気配がした。

 そういえば昨晩、彼女が何か言っていてような……。

 思い出そうと考え始めた瞬間、浴場の扉が勢いよく開かれた。

「さっぱりしたわ~……え?」

 嫌な予感がして瞬時に振り返ったのが功を奏したようで、出てきた人物とは目を合わせずに済んだが……。

「何してんですか?」

 いつもと違った声音で話しかけてくる。

「す、すまない。てっきり誰もいないかと……」

 何とか誤解を解かなければと思い彼女に説明しようとしたが、その前に後ろからタオルで目隠しをされた。

「そんなところだと思いましたよ」

 どうやら難は逃れたようだ。ほっとため息をついた。

「私がいいって言うまで取らないでくださいね」

 彼女がそう言うと、後ろでガサガサと物音がし始めた。

 その間僕は息をひそめて、まるでその部屋のインテリアにでもなったように一寸も動かずにいた。

 しばらくして後ろから「いいですよ」と聞こえると、そっと目隠しを取った。既に脱衣所に彼女の姿はなかった。

 危うく今後の関係に大きな傷が付きかけたが、彼女が何とか機転を利かせてくれたおかげで回避することができた。


 風呂から上がるとさっそく昨日の収穫物を部屋に持ってきた。

 その中でも一番気になっているのがノートに何が書かれているかだが。僕はそのノートを手に取ると、そっとページをめくった。

 一番目のページの一番上の段には日付とその日の天気が書かれている。間違いなく日記といっていいだろう。

「それって昨日のやつですか……」

 部屋にマミが入ってくる。髪はまだ乾ききっていないようで、少し光沢を放っていた。

「そう、どうやら日記らしい」

「日記ですか……」

 彼女は椅子に腰かけてこちらを見てきた。

 僕はまた日記に視線を戻すと、中身を読み始めた。

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