死闘(2)
確かに引き金を引いた。なのにレールガンは沈黙したままであった。
「どういうことだ?」
嫌な汗が額をつたう。僕はもう一度レールガンの引き金を引いたが、結果は同じであった。
その間にも化け物は少しずつ電撃弾による麻痺状態から回復しつつある。このままでは絶好の機会を失うことになる。
「どうしたの!」
彼女も異変に気付いてこちらに叫んでくる。
「弾が発射されない!」
僕はパニック状態になりかけながらもそれに答えると、彼女はさらに続けた。
「電源は?電源がないと……」
はっと思い出す。そういえば彼女と地下に入る前にそんな会話をしたような……。
急いで手元を探すと、あった。この電源プラグのような穴。ここから電気を供給しなければならないのだろう。
「一体どうしたら……」
そうこうしている間に、再び化け物が暴れ始めた。それも先ほどよりも狂暴化していた。
彼女も折れた刀で構えの姿勢をとるが、もはやどうしようもない。
第一こんなところに電機などあるはずがない。僕は持っていた電撃弾を握りしめた……電撃弾?
「そうか……それに賭けてみるしかない」
成功確率は非常に低い。だが今はやるしかない。
「マミ、待ってくれ!」
再び突撃しようとする彼女にそう言い放つ。動揺してこちらを見る彼女。
「グルウオオオオオオオオオオオ!!!」
完全復活した化け物が叫ぶ。それと同時に電撃弾を電源プラグにねじ込んだ。
「うおおおおおおおおおお!!!」
その瞬間体中に今まで体験したことのないくらい強い衝撃が走る。それと同時に体の感覚も一瞬にして麻痺した。
視界がだんだんと暗くなっていく中、鈍い轟音を耳にして意識が途切れてしまった。今度は走馬灯さえ見れなかった。
鈍い痛みで目を覚ました。
「ここは……」
あたりを見回すが、一面瓦礫と砂だらけ。荒廃しきった風景が目に映る。
「大丈夫ですか!」
「ん?」
上を見ると少女がいた。彼女は涙目になりながら、僕の頬をはたいた。
「痛っ……!」
とっさに頬を抑える。触ってみると少し腫れていた。
「よかった!目が覚めたんですね!」
だが彼女はそんなことは気にしていないかのように笑顔を浮かべる。
「一体何が……」
僕はなおも頬を抑えながら起き上がると、目の前に横たわる異物に目を奪われた。
「うわっ……!」
反射的に飛び退く。そこには沈黙したあの化け物の巨体が横たわっていた。
「そうだ……」
やっと思い出した。僕は化け物を倒すためにレールガンを起動してそれから……。
「思い出したみたいですね」
「ああ、思い出した」
化け物の胸部には大きな穴が開いていた。ここをレールガンが撃ち抜いたのだろう。
「どうやら、レールガンで倒せたみたいだな」
「ほんと、ギリギリでしたけどね」
彼女はほっとため息をつくと、その場に座り込んだ。手には血まみれになった刀を持っている。
「危険な目に合わせて悪かった」
彼女の方を向いて頭を下げる。彼女がいなければ今ごろ僕はただの肉塊と化していただろう。
当の彼女には「別に慣れてますから」と軽く流されてしまったが。
かなり危険な目にあったが、今日は収穫が多かったのも事実。生きてるので結果オーライだろう。
「それじゃあ帰ろうか」
「めちゃくちゃ疲れましたからね」
「ははは」と力なく笑う彼女。僕もつられて笑った。
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