第2話蜘蛛の巣

50歳前に九州に戻された。

ちょうど福島原発事故が起きる6年程前のことである。

その直後に脅迫者らしい者から自宅に電話があり、妻がひどく怯える事件があった。電話の主を探そうとNTTや警察や駐屯地警務隊に通報したが、事件が起きていないと言うことで相手にされなかった。それから数日後にGと言う男が目の前に姿を現した。私が隊員の前で、「原発も絶対、安全」と言い切れるものではないと発言した直後に食って掛男である。その日も挑みかかるような一瞥を残し無言で目の前を去って行った。「柵の中にて」という小説に出てくる、過去の自己の女性体験を若い隊員の前で披露するSと言う男と、沖縄に奄美大島出身のOという隊員がいて沖縄赴任中に、「本土から隊員が赴任して来て、嫌な思いをした」と憎しみを込めて聞こえがしに話していた男である。彼らは沖縄県の本土復帰後、間近に沖縄に配置された者たちに違いない。まだ沖縄県の復帰後、10年も経たない時期だった。

それから数週間に名前は覚えていないが、「柵の中にて」という小説の舞台にした部外工事の現場にいた隊員が姿を現し、「余計なことを言うな」と、脅迫とも警告とも不明な言葉を二度三度と発して立ち去った。

このような脅迫や警告が数十年前の離婚の時にも行われていたと確信した。

彼らは私を淘汰しようとしていたのである。


Gが話した沖縄で一緒だったという奄美大島出身のOという隊員と一年ほど一緒に勤務した。多くの隊員から煙たがられている隊員だった。うるさいという評価や、人を苛めるという評価を受ける隊員だった。近親者に町長がいるから大きな態度が出来るという者もいた。双子の兄弟で弟はすこぶる大人しい性格で他人とのトラブルもないと言うことであった。

一言で言うと、生産性のない職場で、そのような隊員と付き合うことは大変なことです。兵士にとって戦場こそ生産性のある職場であり、淘汰される現場に他ならない。

しかし陸上自衛隊は戦後、ひたすら、その生産性のない現場を守るしかなかった。また、

少なくとも張り子の虎であると国際的な評価を下げる福島原発事故までは、戦前の日本の軍隊の歴史もあり、血を流さずに済んだ。

もし、あの福島原発事故を回避するために陸上自衛隊が後生に語り継がれるような捨て身の英雄的な行為を行っていたら、今でも、その非生産的な日常は続いていたかも知れない。

この数週間の出来事で私を淘汰しようと言う蜘蛛の糸が張り巡らされていたと確信した。その蜘蛛の糸はチェルノブイリ原発事故や柏崎原発停止以降始まっていた筈の政府中央や陸上幕僚監部にも影響を与え、福島原発事故初動対応にも関係していたかも知れない。

影響力を持たない存在の些細な小さな行為でも歴史を変えることがあるのである。例えば第一次世界大戦の火蓋もサラエボでのオーストリア皇太子暗殺に始まり、事件を起こしたテロリストが大戦争を起こしたと言えないこともない。

私の周囲に張り巡らされて蜘蛛の糸でなくても、似たような蜘蛛の糸が、政府部内に張り巡らされ、津波対策がなされなかったのかも知れない。もし、妨害行為を行っていたとしたら、国家的大不祥事「福島原発事故」だけでなく、その後の極東の「パワーバランス」崩壊について、当然、結果責任を追求されるべきであろう。

陸上自衛隊が国際的な義務を果たすために紛争地域に派遣される時代だと思う。勿論、敵の攻撃で淘汰される隊員もいよう。あるいは裏切り行為もあるかも知れない。

血縁、地縁、学歴、その他関係の蜘蛛の糸で反社会的な蜘蛛の巣が構成さるかも知れない。

悪意の蜘蛛の糸や蜘蛛の巣が、健全な日本社会を蝕まないように制度や法律、倫理観の確立が必要な時代だと思う。

また福島原発事故という東アジアの安全保障にも関係するような国家的大不祥事に対する責任追求は行われるべきだと思う。


その上で蛇足であるが、最近、アメリカ空軍がUFO映像を公開し、河野防衛大臣までUFOと遭遇時の対応について検討するようにと指示を出した。

福島原発事故が起きる前に、原発事故が起きたらという想定をしておくべきでした。しかも、既にアメリカスリマイル原発事故やロシアチェルノブイリ原発事故、新潟県の柏崎原発事故を体験し、あるいは想定し、すでに当時、研究が始まっていたように感じられる。それに対して防衛省内で妨害行為が起きて、頓挫していたと言うことが事実なら、二重三重の処罰が求められてもおかしくない。

そのように理解すれば、2011年3月12日の一度、名古屋基地を離陸した輸送機を浜松上空で引き返させるなどの狼狽ぶりも理解出来ます。


UFO遭遇時の対応を考えておくようにと言う警句は危機管理や安全保障に携わる者にとっては非常に大切な警句だと感じる。暗に中国海軍とアメリカ海軍が南シナ海か台湾海峡で交戦する不足の事態もあり得ることを予言しているかも知れない。

これらの安全保障上の不安定化にも福島原発事故も、それ以降の日本の対応が大きく影響しているように感じる。


自衛官生活や、これまでの人生を断捨離するために余生を過ごしている状況である。

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