大いなる力には、大いなる〇〇が伴う。

膝毛

第1話 大いなる力には、大いなる〇〇が伴う。

大いなる力には、大いなる〇〇が伴う。

 世の中に影響を与えてしまうような強大な力を持った者は、世界の平穏のためそれを管理する〇〇が発生する。

 あの時の俺はこのことをちゃんと理解していなかった。だからこそあんな悲劇が起こってしまった。もし、過去の自分に言葉を送れるのならば、俺は何度もこの言葉を贈るだろう・・・。


 ピンポーン

 安いアパートの一室にインターホンの音が鳴り響く。

 「・・・うーん・・・?」

男はその音で目を覚まし、ゆっくりとベッドから起き上がった。

 「今何時だ・・・?・・・まだ9時じゃねぇか・・・一体誰だこんな朝早くに・・・こちとら昨日の魔王軍撃退の任務で疲れてるってのによ・・・」

電気をつけず薄暗い部屋の中、のそのそと玄関へ向かう途中、

 「痛って・・・!」

ゴンッと、彼の足に固い何かがぶつかった。

「なんだ一体?」

足元に目を向ける。そこに落ちていたのは、一振りの剣だった。

「なんだ・・・ただの聖剣か・・・あーそういえば昨日家に帰ってきたとき、めっちゃ疲れてたからそこらへんに置いといたままだったっけ・・・まぁいいや、あとで片付けよ」

男は足で適当に剣を玄関の近くへ移動させた、その時だった。

 ピンポーン

もう一度インターホンの音が鳴る。

 「あー、はいはーい今出ますー」

男は急いで玄関のドアを開けた。


もしこの時しっかりとドアの外を確認していれば、彼は過酷な運命を辿ることはなかっただろう。男は常日頃から意識すべきだったのだ、大いなる力には大いなる〇〇が伴うということを。


 「おはようございます! 朝早くからすいません!こちらは平野 勇男様のお宅でよろしかったでしょうか。私、勇者活動を行われている方々の活動支援を行う


Light Holy Kingdom略して『LHK』のものです!聖剣使用料の徴収に参りました!」


 「・・・ッ!うちに聖剣はないので!」

その名を聞いた瞬間、男は反射的にそう叫んでドアを閉めようとするが、LHKを名乗る眼鏡をかけた笑顔の女性は瞬時にドアに足を引っかけそれを防いだ。

 「すいません、それでは聖剣をもっていないことを確認させていただきたいので、少々お時間よろしいでしょうか!」

 女性は一切笑顔を崩さずにこやかに、元気よく言葉を発する。まるで一切の悪意などないかのように。だが、勇男は一見好印象なこの女性からとてつもない恐ろしさを感じ取っていた。

 (ドアを閉めるの防ぐための足運び、全く悪意を感じさせない笑顔、間違いないこのLHK職員、とてつもないやり手だ・・・)

 勇男は自分の額から冷や汗が流れるのを感じた。彼は理解しているのだ、マンガやゲームのようなファンタジー世界となってしまったこの日本では、LHKが魔王軍よりも恐ろしいということを・・・


 それは突然の出来事だった。


 ある日、世界中のあらゆる場所から謎の建物や生き物が出現した。それこそ今まで実在しないといわれていたドラゴンやペガサス、スライムやゴブリンなどといったファンタジー世界の生き物たちだ。されに影響はそれだけではない、人々の中から現代科学では証明できない、不思議な力、いわゆる魔法に目覚める者たちが現れた。世界は一瞬で混乱の渦に陥った、暴れまわる無数のモンスターたち、魔法に目覚めそれを悪用する人間、果ては戦争まで起きてしまうのではないか、人々が恐れ絶望するそんな時だった。

 「皆さん!落ち着いて我々の指示に従ってください!私たちはこの世界を導くための組織、Light Holy Kingdom略して『LHK』です! 」

LHKと名乗る謎の集団が魔法を駆使し、世界中の争いを止めたのだ。この LHKという組織は世界の危機を救うべく、いち早く魔法の原理を解読し、その力によってモンスターの駆除、魔法を使う犯罪者たちの取り締まり、安全な生活圏の確保を実現させた。

 LHKが世界の管理をすることで混乱した世はどうにか落ち着き、人々も魔法が当たり前となった生活に順応してきたのだ。平野 勇男もそんな人間の一人である。勇男はある日、ダンジョンと化した(元からなっていた) 新宿駅で偶然伝説の聖剣を見つけ出し、それを用いてモンスターや略奪や破壊を行う悪の組織である魔王軍と戦い、その報酬を使ってそれなりに平和な生活をしていた。

 

 だがその平和は今日、玄関のドアを開けてしまったことで、大きく揺らいでしまったのだ。

 「えっと・・・先ほど聖剣を持っていらっしゃらないとおっしゃっていましたけど、私共が持っているこの『聖剣から放たれる魔力を探し当てる装置』だと確かにこの家から聖剣の魔力が検知されているのですが・・・? 」

そう言うと女性はカバンから、どうやって使うのか全く分からない謎の機械を取り出した。一見タブレットのようだが、画面上にはよくわからない数値と、よくわからないグラフが表示されている。

 「いやなんですかその見るからに怪しい装置・・・」

 「ほら、よく見てください、このグラフの数値が以上に高いでしょ?これが聖剣がここにあるという動かぬ証拠です」

 「いや、原理も何も聞かされていないのに証拠と言われても・・・」

 「すでにご存知でしょうか、聖剣を持つ人間が聖剣使用料を払うのは国の法律で決まっているので、払わないと最悪法的処置をとることとなりますが・・・」

 「すごい、全く人の話聞いてくれないんですね」

 女性は一切笑顔を崩さず、相手に考える隙を与えないよう恐ろしいスピードで話を進めていく。さらに話の中に法律や法的処理といったワードを含めることで、相手に心理的プレッシャーをかけていく。この女性が言うように、LHKが世界を管理するようになってから、世の中に影響を表すような力や道具、例えば世界を滅ぼす力をもった指輪や、禁断の魔術が書かれた魔導書、それこそ勇男が持っている聖剣などに対し、利用料を設けることが法律によって定められるようになった。LHKが政府から干渉を受けることなく自主性を保っていくために大きな力の利用者から、その力の利用費を負担してもらう仕組みとなっている。

 だが、もちろん国民全員がそのルールを守っているわけではない。なぜならこの利用費というのが結構高いのだ。特に勇男のようなお金のない一人暮らしでモンスター狩りを生業としている、駆け出しの勇者にとってLHKは天敵なのだ。駆け出し勇者の間では彼らのことをこの世界を荒らす魔王より恐れているものがいるほどである。もし相手がモンスターであれば叩き切れば問題は解決できる。だがLHKは違う、彼女たちは決して世界を荒らす悪の集団ではないし、どちらかというとお金を払わないこちらの方が悪だ。彼らからしてみれば、武力で解決することのできるモンスター相手の方が幾分か楽なのである。そんなLHKに嫌気がさしたのか、最近ではLHKをぶっ壊すことを目的とした「LKから国民を守る党」なんて政党まで出てくる始末だ。

 勇男は聖剣を持った日から今日まで、居留守を使いLHKの襲撃を躱してきたのだ。時には郵便局や配達員と間違って出そうになる時もあったが、のぞき穴からの確認をしっかり行うことによって、直接のコンタクトは避けてきた。しかし、久方ぶりの大きな仕事、肉体的疲労による思考力の低下により今日のようなミスを招いてしまった。だが、これで終わったわけではない。まだこの後のやり取り次第で挽回の余地はある、今月の生活費のため諦めるわけにはいかないのだ。

 (俺は・・・絶対にLHKなんかに負けない! )

 「い、いやー、すいません。じつは今風邪をひいていまして・・・ゴホッゴホッ、また後日お越しいただいてもいいですか? 」

仮病、古より使われし都合が悪い時の常套手段である、がLHKにはそんな言い訳は通用しない。

 「あ、それなら大丈夫ですよ。私回復魔法使えるんで。えいっ」

女性が軽く手を振ると一瞬、勇男の周りが緑色に光った。すると前日の仕事による疲れが嘘のように体からふきとんでいた。

 「これで心置きなくお支払いができますね! 」

 「わ、わーい・・・ありがとう・・・ございます・・・」

まさか魔法を使ってわざわざ風邪を治すとは予想外であった。仮病は失敗、だがまだ手はある。

 「そ、そもそもうちに聖剣なんてありませんよー、私みたいな普通の男がそんな大層なもの持っているわけないじゃないですかーあはははは」

誤魔化す。家の中に聖剣があるのを直接見たわけではないのだ。証拠がなければ聖剣を所持しているかどうかなんて証明できない。よくわからない機械だって故障とか言い切れば大丈夫なはず、そう勇男は考えた。


 だがここで二つ目のミスが発覚する。


 「いや、剣ならそこにあるじゃないですか」

 「えっ?」

女性が指さす先、そこにはまごうことなき聖剣エクスカリバーがゴミのように横たわっていた。

 (しまったああああああああああああ!さっき足でどけたままだったあああああ!)

不覚、普段から物の管理がなっていない上、疲れていつも以上に適当に扱ってしまったため嘘が一瞬でばれてしまった。

 (くっ・・・だが・・・まだあがける!)

だが勇男は諦めない、ここで諦めて利用料を払ってしまえば生活は一気に苦しくなってしまう。

 「い、いや・・・これは・・・その・・・そう!昨日酔った勢いで市ヶ谷駅に落ちてたこの剣を偶然拾ってしまったんです!いやーうっかりして忘れていました!あははは、まぁその辺に落ちてた剣ですし、こんなものが聖剣のわけないですよ!機械の故障かなにかじゃないですかねー」

 勇男自身も苦しい嘘だとわかっている、もちろん彼女もこの程度の嘘で誤魔化されるわけがない。次の言い訳を考え、構える勇男に対し、LHK職員の女性はあっさり笑顔でこう言った。

 「そうだったんですねー、わかりましたー」

 「いやー嘘じゃなくてホントで、あ、もしかしたら昨日剣に聖水で作ったカップ麺ののスープをこぼしたの原因かも・・・って・・・え?」

なんと予想に反して、彼女はあっさりと勇男の嘘を信じたのだ。

 「疑うようなこと言って申し訳ありません・・・勇男様のいうことが本当であればこの機械の数値も故障によるものかもしれませんね・・・」

女性は先ほどまでの笑顔とは対照的に、物凄く申し訳なさそうに謝る。

 「い、いえいえ、全然大丈夫ですよーあはは・・・」

予想外にあっさりと嘘を信じ拍子抜けしたことと、こちらが嘘をついていることに対する罪悪感で、勇男はなんとも言えない表情で言葉を返す。対する眼鏡の女性はニコニコ笑顔に戻っていた。

 「お時間をお取りして申し訳ありませんでした。・・・あのー剣をお持ちということは勇者系のお仕事をされているんですか? 」

 「えっ?あ、はい・・・そうです・・・」

女性はそのまま世間話を始めた。話が終わればすぐに帰ってもらうつもりだったが、先ほどの嘘による罪悪感でそんなことは言えず、勇男は話に少し付き合うことにした。

 「えー!すごいですね!だってあんなに強そうなモンスターと戦ったり、複雑なダンジョンで冒険したりするんですよね!かっこいいです!」

 「そ、そうですかね・・・あははは」

はたから見ればわかりやすいおべっかだが、先ほどまでの緊張が解けた影響か、はたまた日ごろ女性から褒められる機会がなかったためか、勇男はデレデレと気持ち悪い笑みを浮かべながら答える。女性は勇男の目をしっかりと見つめ、屈託のない笑顔で話し続ける。

 「いやいや!すごいですって!私なんてたとえ近くにすごい武器があったとしても、モンスターとなんて戦えないですし・・・」

 「いや、意外と何とかなりますよ。最近だとアイテムとか使えば、女性でモンスター狩りとかできますよ」

乗せるのが上手いのか、はたまた勇男が乗せられやすいのか、話していくうちに勇男はどんどん気分が乗ってしまう。

 「へー!そうなんですね!でも私アイテムの使い方とか知らないですし・・・」

 「それが、不思議なことにダンジョンで落ちてるアイテムを拾うと、頭の中で使い方を説明してくれる天の声みたいなのが聞こえてくるんですよ。あの剣を拾ったときなんかそれがまたいい声で・・・そう声優の花澤〇菜みたいな声でしたね」

これが三つ目のミスとなった。


 「それでは天の声サービスの受信料、払っていただけますか? 」

 「はははは・・・えっ?」


勇男は一瞬目が点になった。今の会話の流れでなぜ受信料という言葉が出てくるのか理解できなかったからだ。

 「えっと・・・天の声サービスの受信料って・・・どういうことですか? 」

思わず口から出た疑問に対し、女性は一瞬驚いたような顔をしたが瞬時に笑顔に戻し、しゃべり続けた。

 「あっ、ご存じなかったのですね・・・実は初めてアイテムをとった時の天の声って、我々LHKが洗脳魔法による電波で、勇者様方の頭の中に直接メッセージを送っているから聞こえてくるんですよ。」

 「何それ怖っ!っていうか今洗脳魔法って言いました!?」

 「ですから、こちらの天の声が聞こえた方々からは、受信料を徴収しているんです」

 「いや、そっちが一方的に送り付けてきたメッセージを受け取ったから金払えって、そんなの横暴でしょ!」

 「そう言われましても、こちら法律で決まっていることですので!」

聖剣の使用料については、力を持つ責任ということでまだ納得できた。だが、この天の声サービスについては話が別だ。これはこちらが望んだわけでもなく、一方的に電波を流しているだけで金を取ろうというのだ。そんなのは絶対におかしい。

 「法律で決まっているからって、こっちは道端のゴミ拾っただけでも強制的に『これは何の役にも立たないゴミ』ってメッセージが頭の中に流れてくるんですよ! こんなしょうもないサービスに金なんか払えません!」

勇男は声を荒げて反論するが、相手の女性は一切笑顔のままから表情を変えない。

 「そうは言われても、このまま払わないでいますと・・・」

 「なんですか、法的措置を取るって言うんですか!?上等です!いくらでもやってや」


 「次にアイテムをとった際に、頭がこう・・・パーンってなります」

 「頭がパーンってなるの!?」


 女性は笑顔でとんでもないことを言った。

 「はい、人間の脳の許容量を超える電波を魔法で送って、それはもう綺麗な花火みたいにパーンと」

 「そんな笑顔で物騒なこと言わないでくれます!?」

心なしか、先ほどまでより女性は楽しそうに話しているように見えた。

 「最近ではどこで入れ知恵をされたのか、受信料を払わなくても問題ないと言い張るかたが多くいらっしゃるので、そういった方々に対してはこういった対処をさせていただきます」

 「やってること魔王軍よりタチ悪いじゃないですか!?完全に公的機関がやっていいことじゃないですよ!」

 「あっ、ご心配なさらずともちゃんと蘇生魔法をかけて生き返らせますよ? ただ蘇生させる際、同時に洗脳魔法もかけるので二度とLHKに逆らえない体になりますが」

 「心配していたこと以上に心配することができたんですけど! 」

こんなあくどい商売をしているのに反論する世間の声が小さいわけだ。逆らうものは全て洗脳して証拠を消しているのだから、反論の声も世の中に出てこないのだろう。

 「そりゃあ『LHKから国民を守る党』なんて政党まで出てくるわけだ・・・あっ」

思わずボソッと心のに浮かんだ言葉を声に出してしまった。だが女性はこれまで以上の笑顔でこう返した。

 「ああ、あのLHKに逆らう犯罪予備集団ですね? 最近では目ざわりなのであの政党のメンバーを魔王軍としてメディアで取り上げていただいて、勇者の方々に取り締まっているんですよ。反乱軍を気取った結果、犯罪者扱いされるなんてハハッ、ウケますよね!」

 「今日一の笑顔で言うことじゃありませんよそれ!」

この十分ほどのやり取りで勇男は理解した、こいつらはヤバイと。だが言われるがままに金を払ってしまっては、いくら請求されるか分かったものではない。一度落ち着いて専門の機関に一度確認した方がいいだろう。そのためにもまずはこの状況から抜け出さなくては。

 「あ、あー! ヤバイ! もうこんな時間だ! 急がなきゃ次のクエストに遅れてしまう! というわけなので、この話はまた今度ということで・・・」

これならば向こうも引くしかあるまい・・・そう考えた勇男だったが、

 「あっ、そうでしたか!わかりました! それではいつ頃お戻りになられますか?」

LHKには通用しなかった。

 「え、えっと・・・ちょっと長めのクエストになるのでどれぐらいかかるのかわからなくて・・・下手したら数日かかるかも・・・」

 「承知いたしました!それでは念のため毎日料金の徴収に伺わせていただきますね!」

笑顔で悪魔のような提案をする。そう、彼女たちは狩人、勇男は狩りの獲物なのだ。

 「え!?そ、それはちょっと・・・その、あなた方にも悪いですし行き違いとかになったら時間の無駄とかになるじゃないですか」

 「その点はご安心ください!そうならないよう念のため、監視用の結界をこの家の近辺に張らせていただきます!これで勇男様がいつ家に帰られたのか把握できるので、家に着いた瞬間に伺わせていただきます!あ、もちろん結界に不具合が出るかもしれませんのでご自宅には毎日伺わせていただきますね!あと、さきほどお話を伺っていた際に、剣を拾ったとき花澤〇菜みたいな声が聞こえたっておっしゃっていましたが、花澤〇菜風の声が聞こえるのって聖剣を拾ったときだけなんですよね!なので勇男さんはご存知なかったかもしれませんが、その剣は聖剣ということになるので、聖剣利用料の方も一括で払っていただきます!あと、ご家族の方々も聖剣等を持っていらっしゃったら家族割引のほうを・・・」


 ここから俺の記憶はぷっつりと途切れている。この後何を言われたのか、何をしたのかさえ覚えていない。ただ一つ覚えているのは、なぜあの時無防備にドアを開けてしまったのかという後悔だけ。「大いなる力には、大いなる『料金』が伴う」俺はこの言葉の意味を理解していなかったのだ。だがそれを知ったころには、多数のよくわからない資料と料金の払い方と書かれた説明書が俺のもとに届いていた。LHKから追いかけられ続ける日々に疲れた俺はついに料金を払おうかと思った。

 (やっぱり・・・LHKには勝てなかったよ・・・ )

 諦めの言葉が頭に浮かんだその時、外から街頭演説の声が聞こえてきた。それは、LHKの情報操作によって、世の中から執拗にバッシングを受け、影で世を荒らす悪の軍団として成敗されている「LKから国民を守る党」の演説だった。

 「LHKから国民を守る党は、文字通りLHKから国民をお守りする為の党です。

LHKが行っている天の声サービスは、勝手にLHKの電波を勇者の頭に送りつけて、アイテムの説明を聞く気がなくても集金する送りつけ商法です。 国民が『アイテム説明は聞く必要がないので、受信料は払いたくないです』と言っても、強引な集金行為により被害者が絶えません。この現状を改善すべく、LHKの集金に関する苦情を受け付け、一件一件問題を解決しています。我々はLHKの強制的な集金行為の禁止実現をめざします!皆さま方のお力を貸してください!」

彼らの活動は何の成果も生まないかもしれない。むしろ犯罪者として世の中に取り上げられてしまうリスクの方が高い。

 だが彼らはくじけない。その決意ある行動から俺は勇気をもらった。そう、この圧政から立ち上がる勇気を。俺は彼らと共に戦うことを決意した。それから何年たっただろうか、俺と同じく受信料を払っていない仲間たちと出会い、戦い、別れ、もうこれ料金支払った方が手っ取り早いんじゃないかと思う日もあった。時には、LHKを信じ料金を払う人々から「もういい大人なんだしちゃんと払えば?」、「大した金額じゃないんだから払ってやればいいじゃん」、「お前だってたまにアイテムの説明ありがたいと思うことあるだろ? 」などとバッシングを受ける日もあった。だがそんな日々を乗り越え俺たちは戦い続けた。


 そして俺は今、LHKの社長室にいる。


 「ククク・・・よくぞここまで来たな、誉めてやろう。どうだ?私の下につけば受信料をサービスし、家族割を適用してやろう」

眼鏡をかけたおっさんが語りかける。

 「断る! ここに来るためにどれだけの仲間が、LHKの犠牲になったと思っている! 料金が払えずバイトを増やした結果、寝不足が原因でモンスターにやられた魔法使いの中谷、度重なるLHKの訪問でノイローゼになった戦士笠松、LHKに言われるがまま料金を払ったらよくわからない追加サービスに登録してしまった僧侶の本間、LHK職員とのやり取りで芋づる式に実家が料金を払っていないことがバレ、家族を人質に取られた遊び人の佐久間・・・散っていったあいつらの無念を晴らすために俺はここにいる!全てここで終わりだ!行くぞ!」

 「いいだろう・・・かかってこい!貴様から受信料と使用料を徴収してやる!」

「ウオオオオオオオオオ!くらえ必殺!『うちには聖剣はありませんし、一回もアイテム説明を聞いたことがありません斬りィィィィィィィィィ!』」


 こうしてLHKと勇男の最終決戦が始まった。

 戦え勇男!この世から受信料がなくなるその日まで!

 

 ※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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