最低で最高の風紀委員長
逆膝枕
第1話 王道学園と面食い風紀委員長
俺の名前は
何処にでもいるわけではないそれなりの家柄と、金持ちのためだけにあるかのような高校......いや、学園に通っている16歳だ。
16と行ってもただの早生まれで、今年は第2学年へと進級した。
俺の通う学園は小さな山の上に建設されている。白亜のように美しい壁の校舎は、感覚だけは庶民的な俺からすれば少し眩しすぎるとたまに感じざる得ない。
寮生活が出来るため、一々山を登って登校するなんて面倒なことをする必要性はないがごく稀に一般入試に通った外部生なんかが山の下に家を借りて山登りを日課に登校しているとかなんとか。
めんどくさそうだ。
さてさて立地の話は置いといて。
俺はなんやかんや、成り行きと委員からのエスカレーター形式で風紀委員長というこれまた大層な役職についてしまったわけだが、意外にもこの役職は役得だと気付いたのが生徒会室に行った時だった。
扉を開けた先で作業をしていたのは、学年どころかこの学園一顔が整っているだろう生徒会長、
圧倒的なカリスマ性に加えて、家系に海外の血が混じっているらしく、光に当たると透けているかと錯覚するほどに綺麗な金髪とすっと通った鼻筋、瞳は日本人の血が継がれたようで黒に近い焦げ茶ではあるがそれが逆に明るい髪と暗い瞳で絶妙な魅力を産み出している整った容姿。
どの部活にも所属していないが基本的なスポーツはルールさえわかれば人並み以上に出来る身体能力。
そしてさらには勉学まで出来るときた。
正確には多少難があるらしいが知ったこっちゃない。顔面のみから差し引いてもプラスが残ると俺は思っている。
この顔が拝めるのなら風紀委員長もいいかもしれない、そう思った。
ここで一つ勘違いをされては困るので言っておくが、まだ俺は彼奴に惚れているだとかそんなんじゃあない。
ただ整った容姿の人間、つまりは神宮寺の顔が好きなだけであってこれまで接点がなかったせいで中身は全くと言っていいほど知らない。そんな相手を好きになるわけ。
ああでも、親衛隊の子達がよく話題にしているが神宮寺には好きな相手がいるらしい。学園内にいるかどうかは知らないが完璧超人の生徒会長様が想いを寄せる相手が周りに知れ渡ったらそれはそれで大事になることだろう。
まぁその好いている人が女性なら男子校であるこの学園内にはいないことが確定するんだけども。
もしその相手が目の前に現れたら、神宮寺はどんな風に接するんだろうか。
少しばかり気になってその日の夜は何時もより寝付けなかった。
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「おはようございます、篁先輩」
そう声を掛けてきたのは俺の親衛隊?の隊長らしい小柄な男子生徒だった。
確か、えぇっと、
「おはよう、京君。」
思い出した。犬井 京だ。双子の兄がいるのだがそっちは友人で、兄の方は区別できるように名前で呼んでいるので弟君も馴れ馴れしいかも知れないけど名前呼びをさせてもらおうと思う。
「ぼっ、僕の名前、覚えてくれていたんですね!........篁先輩は他の親衛隊持ちの人達よりも親衛隊に興味がないみたいだったので、失礼とは思いながらもまさか誰一人名前を覚えられていないものかと......」
ごめん、君の兄さんがいなかったら覚えてなかった。
「いやいや、流石の俺でも一人くらいは覚えてるさ。あと小雪先輩とか、俺に話し掛けてくれる人は覚えてるよ。」
小雪先輩は元風紀委員の風紀OBで、儚げな雰囲気と華奢な体躯に可愛らしい顔立ちをした先輩。先輩こそ親衛隊がいそうなのに不思議なものだなぁと、たまに思う。
「小雪先輩はかなり篁先輩のことを気に入っていらっしゃいますもんね。親衛隊持ちが親衛隊に入るなんて前代未聞なんですが....」
やっぱり親衛隊いたのか。
「俺の親衛隊だなんて言っちゃなんだが物好きだなぁ、先輩も、京君も。」
ぽつりと口から本音が零れ落ちたのを犬井弟は聞き逃さなかったのか目を見開いて俺に詰め寄る。何々なに、何だい急に....
「先輩!!篁!先輩!!は!!!かっわいいんです!篁先輩に自覚があるかは知りませんが、同級生や後輩には誰にでも分け隔てなく接し、先輩への切り替えは忘れないものの多少頼りにしている風の雰囲気を出している時の顔と言ったらもうっ!!篁先輩は体格も良いし短く切り揃えられた髪も大変素敵でかっこいいですが常日頃感情の読み取れない表情をしているのに生徒会長に会いに行くときだけは少しだけ表情緩んでるしさながらかわいいの権化ですよ???ご自分の顔のいい意味での破壊力分かってますか??」
聞かなきゃよかったとまではいかないけどとてつもなく気恥ずかしいことを語られている気がする。
正直体格もそれなりにあって表情も変わりにくい俺を好いてくれてるのが不思議ではあったけど....そうか、神宮寺の顔面を拝めるから少しうきうきしてたのが顔に出てて、そこがギャップあったのか、........?
いやでもそこでかわいいに行き着くもの...?
うぅん、沢山語ってくれたものの俺には京君の趣味はよく分からん。以上、解散ッ!
「そ、そっかぁ....?よく分からないけど京君にはそう見えてるんだね。」
「はい!」
元気よく返事をされては嫌な顔も出来ないし、褒められて嬉しくないわけがない。少し表情筋が緩んでる気がするが褒められた後だ、意図的に直す気にはなれなかった。
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犬井side
僕には意中の先輩がいる。男同士だからと言っても、男だけの学園じゃ気が付けばそんなこと気にならないのが常識になっていた。
意中の先輩、篁先輩はかわいい。
青い目も短く切り揃えられた爽やかな黒髪も、細めのフレームの眼鏡も、稀に気付いてないままの寝癖も、たまに見せるはにかんだような微笑みも。全部かわいい。
前半部分だけ聞けばかっこいい部類に入るだろう。
確かに先輩はかっこいい。しゅっとした体躯は細すぎず、それでいて筋肉も付きすぎてはいない鍛えられた体。例外として胸囲は筋肉がついているようだがそこから母性を感じるのでそれはそれでいいと思う。見方によっては筋肉質に見えなくもない。
顔立ちは凛々しく爽やか。例えるなら暑苦しくない体育会系。
青い瞳に黒い髪、黒い瞳に金の髪。
生徒会長と瞳の色だけを交換したかのような色の組み合わせは見ていて飽きない。
成績はほどよく上位で、成績というよりも会話などの頭のよさがあるタイプで、生徒会長と遭遇したときは普段とは違ってかなり喋る。きっと理想の顔面が目の前に来て焦ってるんだろうなぁ。
そういうところはかわいい。
語ると長くなってしまうので一旦切るけど、篁先輩はかっこいい、でも時折愛嬌のあるかわいい先輩なのだ。
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再び篁side
「っは~~っ!!疲れたっ!!!」
俺は寮内にある、自室のベッドに身を投げ出した。
何故疲れたのかって?
それはついさっき、書類の山を片付けてそれを風紀委員長の俺が直々に生徒会室まで提出しに行ったから。
当たり前のように、というか当たり前に座っていた神宮寺となんてことない会話をしたが焦って結構煽り散らした気がする。
............
......
...
「こんにちは、神宮寺。今日の分の書類だ、明日までに目を通して置いてくれ。どうせ暇だろう?」
「お前は相変わらず俺を暇だと決め付けているが暇なわけあるか戯け。生徒会長という役柄に就いたからにはお前みたいに毎日毎日"これ生徒会長がやるもんか?"って思うような書類持ってくるやつらのお陰で暇じゃないんだ」
「おやおや、生徒会長だからこそ目を通さなければいけないというのに、そんな事言っていいんですか。........それに、毎日俺が持ってくる書類は君のところの部下、生徒会メンバーがやらかした事後処理ばかりだ。生徒会長ならしっかり面倒見たまえよ」
「確かにそうだが、........くそっ、本当に性格が悪いなお前。痛いところつついて愉しいか?」
「生徒会長を弄るのは生き甲斐だから愉しいの頂点くらいに位置してるけども、それについて聞くかい?」
「........はぁ、遠慮しておく。ほら、用事が終わったなら帰れ」
....
........
............
煽 り 散 ら し て ん な
あわーー穴があったら埋まって一週間くらい引きこもりてぇ!!
いくら彼奴の顔が近くにあって嬉しいからってあれはないな。
生徒会メンバーもなにも生徒会長関係ねぇし、神宮寺が責任を負ったりするような書類は一切無かった。土下座して謝りたい気分。
明日も話し合いでご対面すんのにどうやって顔合わせればいいんだろう。
自分の悪癖のせいで、明日の憂鬱が一つ増えてしまった。
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