祖母の言葉
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『2番目』というお題を見た時、真っ先に浮かんだのが祖母の言葉でした。
その言葉を聞いたのは多分私が中学生くらいだったと思います。
その当時私は反抗期のちょっと手前くらいの時期で、大人の些細な言動に敏感でした。
自分は長女で両親は共働き。必然的に祖母から育てられました。甘やかされて大きくなりましたが、それは祖母からの愛情。両親からの愛というものに飢えていたのかも知れません。
それに加え下に弟・妹が生まれた事によって、更にジレンマが募っていきました。
特に女同士である妹が両親に可愛がられているのを見るとイライラして、自分の方から両親を遠ざけていたと今になって思います。その反動なのか、私は年々祖母にべったりになっていきました。
そうこうしている内に私は中学生になり、妹は小学校に上がりました。ますますちやほやされていく妹を横目で見ながら、私のイライラは止まるどころか加速するばかりでした。
そんな中、私達は母方の祖母の家に遊びに行く事になりました。両親はおらず、姉妹と母方の祖母だけで家にいた時に事件は起こりました。
祖母が私の目の前で妹の事を贔屓したのです。
私は感情が高ぶり、つい言ってしまいました。
「どうして妹ばかり可愛がるの!?」
と。
妹も祖母もビックリして一瞬固まりましたが、次の祖母の言葉に今度は私が固まってしまいました。
「だってこの子は貴女より遅く生まれてきたのよ?私と一緒にいられる時間はその分短い。私が死ぬまでの間に同じくらいの愛情を注がないと不公平でしょ。」
頭を殴られたようでした。私にとってそれほどショッキングな言葉だったのです。
妹は私より6歳離れていました。この子が生まれた時、私は今のこの子と同じ小学生だった。
私の事を今にも泣きそうな顔で見つめてくる妹を見た瞬間、私は自分の中から妹に対するイライラが吹っ飛んでいくのを感じました。
「私もお父さんもお母さんも、あなた達の事を同じくらい可愛く思っているよ。歳が離れている分、下の子の方を贔屓していると思ってしまうのはしょうがない事かも知れないね。」
そう言って苦笑いする祖母に逆に申し訳なく思いました。
その時から私の妹に対する嫉妬はなくなりました。
自分は一番早く生まれて、その時ばかりは皆の愛情を一身に受けていたのだから。
このお題を見た時に一番に思い描いたのは、完璧な姉に嫉妬して両親の愛情を疑ってしまう妹、でした。
私の思い出とは逆になりますが、妹側からの視点の方が何故か書きやすそうだったからです。
それは大人になってから聞いた妹の告白も同時に思い出したからでしょうか。
妹は言いました。
「自分はお姉ちゃんが羨ましかった。」
と。
服でも何でも私からのお下がりだったのが嫌だったと。
それに
「プレゼントを貰う時はお姉ちゃんが一番最初だった。」
「何かあった時にお父さん達が頼るのはお姉ちゃん。発言権があるのもお姉ちゃん。自分は何でも一番最後だった。だからずっと敵わないと思っていた。」
そう言われた時は祖母から言われたあの言葉以上に衝撃でした。
上には上の、下には下の複雑な思いがあったという事をその時初めて知りました。そしてその事を思い出したからこそ、あの『2番目に生まれた私』が出来た訳です。
妹の陽子が両親の愛情を知ったのが両親の葬式の日だった――
という悲しい展開にしたのは、両親の二人への愛が本当に嘘偽りがない事を表現したかったのと、陽子の後悔をより鮮明にする為でした。(……書いた当時はそんな深く考えていなかったかも、知れませんが)。
結婚式に母が読むはずだった手紙を、葬式の日に自分で読む事になってしまったところは自分でもぐっときました(時々下書きもせずに感情だけで書いてしまう癖があるので……)
それでもただ悲しいだけでなく希望が持てる最後にしたかったので、前を向く陽子の姿で終わる事が出来て良かったと思います。
ちなみに姉の佐織に宛てた手紙はきっと、私が祖母から言われた言葉が書いてあったと想像します(描写がなかったので)。
―――
とまぁ、裏話としてはこんなものでしょうか。ただ私の思い出をつらつらと書いただけのような気がしますが、読んでくれる方はそういないと思うのでこれで良しとします(苦笑)
ではこれで2日目お題『2番目』参加作品
『二番目に生まれた私』の裏話でした!
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