第6話《旅立ち》

すっかり雪も溶け、草木の新芽が見え始めた頃。

そんな穏やかな季節に──“ソイツら”はやって来た。



『三人とも、早く逃げなさい!人間たちの狙いはあなたたちよ!!』



母さんの悲痛な声が聞こえた。

目の前には武装した人間の群れ。

ソイツらは……あの施設に居た者たちによく似ていた。



『早く行きなさい!ここは私と母さんで何とかするから……!』



傷ついた身体で。

それでもボクたちを庇い、人間たちを威嚇する白姉さん。




滲む涙を何とか振り払い、重たい身体を何とか持ち上げて走った。



追いかけてくる敵をライラの魔法で吊し上げて。



時に銀が鋭い氷柱で突き刺して。



途中、大きな爆発音が聞こえた。



本当は母さんたちと戦いたかった。

ボクだって森の守人たる大猫の娘なのに……。



この鎖が無ければ。

人間が持っていた嫌な気配のする結晶に……魔力を吸われる事もなかったのか。


この鎖が無ければ。

ボクと繋がっていたせいで……ライラの魔力まで奪われる事もなかったのか。


そもそも。

ボクが逃げたのが知られたからこそ、アイツらを引き寄せたのではないか?



それでも。

逃がしてくれた母さんに、姉さんに報いるために。

ひたすら走って、走って……走り続けた。





こうしてこの日、ボクたちは──家族と家を失った。




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