お姉さん、頑張る。~最強のお姉さんと世界の勇者。俺が魔王候補ってどういうことですかね?~
逆膝枕
第1話 初めまして、勇者さん。
ありきたりな学校生活。
ありきたりなオタクの俺。
視界の隅には陽キャのグループがそれはそれは楽しげにしているのが目にはいる。
あっちは俺のこと見えてねぇんだろうなぁ。きらきらとした容姿ときらきらとした生活が羨ましい。
何故グループの輪に入らないのかって?
それはだな。
高校デビューに失敗した俺こと
でもまぁ一人は気楽で好きだし、なんなら気持ち悪がられるタイプのオタクなのは否めない。今期のアニメは全て録画済みかつリアタイ視聴済みだ。趣味の事について話そうとすると早口の癖にどもる。めっちゃどもる。
たまに陽キャグループ以外からもハブられてるような気がしてならないが、多分クラスの女子なんかは「うっわマジ最悪~、今彼奴私のこと見てたんだけど~」とか言ってそう。何ならこの前言ってたのが聞こえた。
盗み聞きしたわけではないけどほんの少しだけ俺の豆腐メンタルに切れ込みが入ったよね。うん。
あんまり気にはしてなかったけど少しだけ気になっちゃうお年頃なわけだ。
そんな若干嫌がられて毎日を送っている俺としてはある日突然な感じに異世界に召喚されてみたいとは思うし、俺TUEEEEEEもしてみたい。なんなら超絶美人な王女様とかと話してみたい。会話だけでいい。付き合うとか滅相もない。
基本的に王女様とかはイケメンに惚れることが大抵だしそこに夢は持っちゃいないさ。ただ美人の顔は普通に近くで拝んでみたいじゃん?ってな。
それとあれだ、異世界召喚されて自分だけ落第生的な扱いを受けながら成長して後からチートでひゃっほいとかもロマンっちゃロマンだ。俺はあれ好き。
...なんてくだらないことを窓の外をぼんやり眺めていた矢先、教室内が眩い光に包まれたのだった。
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「....あー、あの、えっと、私の言葉が分かりますか?」
そう言って俺の方、........いや、俺達の方を心配そうに見つめるのは透き通るような長く綺麗な金髪にこれまた光の加減で輝かんばかりに碧眼の、一見清楚だが所々工夫の見え隠れするドレスに身を包んだ美少女だった。
「分かっている、と判断しても....?」
美少女さんおろおろしてて可愛いですね。
じゃなくてだな。
これはもしかして?もしかしなくても??
「私はあなたたちを召喚した、この国エンヴィール王国の王女、マリナ・エンヴィールともうします。この国は魔王により平穏な生活脅かされているのです!故に魔王を倒すべくあなた方、勇者の素質を持つ者達を召喚致しました。」
はぁーい異世界召喚。
魔王かぁ、典型的だね。
そして美少女が王女様なのも典型的だね。
さっきまで夢見てた妄想が現実になるなんて俺びっくり。
と、一人で意味もなく考えていると隣から声が聞こえた。
「貴女が王女で、この国の危機なのは分かりましたけど....俺達って勝手に呼ばれたわけじゃないですか。帰る方々だとか、何故戦わなきゃいけないのかをしっかりと説明していただかないわけには、貴女の要望を飲むことはできません。」
あっ!クラスのイケメンだ!!!
わりと冷静に、王族に物怖じせず発言したのは本物のイケメン、
名前もちょっとかっこいい。
基本的に物腰やわらかで誰にでも親切。
オタクにも根暗にもギャルにも、人が近付かなそうなタイプにだって親切な珍しい真性のイケメン。
容姿はというと、本人いわく生まれつきの明るい茶髪にはっきりとしつつもその優しさが滲み出ているかのような優しい顔立ち。
こう、何て言うんだろ。
きらっきらのイケメンじゃなくて道で困ってるおばあさん助ける感じの爽やかなイケメン。伝われ。
まとめると、兎に角いいやつ。
この前ラノベおすすめしたら3日後には整った顔面から繰り出される微笑みと物語をしっかり読み込まないと出てこないような感想付きで返してくれた。
こんな友達欲しい。一家に一台須藤君。
「そ、そうですよね....改めた説明が長くなるので、取り敢えず落ち着いていただければと用意した客室がありますからよければ休息を取ってください」
ふむ、何度見ても可愛いなこの王女様。
じゃなくてだな!!!(2回目)
休息も何も信用すら出来てない状況で他のみんなは王女様の提案を呑むみたいだ。俺も行くけど数人部屋だとハブられる自信があるから憂鬱な気がしなくもないが同意だけはしておく。協調性が無いと思われても、ねぇ?
「申し訳ありません....本当は今すぐ説明をしたいのですが私が不甲斐ないばかりに、少々召喚で疲れていまして....私も休ませていただきます。本当にすみません、客室への案内に関しては護衛の方々に案内をお任せしますので悪しからず。」
そう王女様が言えばたちまち俺達は兵士や魔導師のような人たちに囲まれて客室へと案内された。
が、
途中で他の人達とは違う服装の一人の女性を見かけた。
魔導師のような三角帽子に露出の少ないローブと裾を少しばかり引き摺る丈のドレス。体を覆うようなローブ越しにもわかるほどの抜群のスタイル。黒に近い艶のある灰色?の髪を三つ編みにして前に房を下ろした、垂れ目の美人さん。その瞳も髪色に近い色合いだったが帽子の影に隠れて見えづらかったのと、あまり見詰めては失礼だと感じてすぐに逸らしたせいではっきりとした色はわからなかった。
でもこれだけは分かる、物凄く好みだ。
その人は穏やかに垂れた目を此方に向けて、目の合った俺を一瞥しては口を動かした。
初めまして、世界の勇者さん。
と。
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休息を終えた後、謁見の間のような場所で受けた説明をかなり端折って説明しよう。
1、この国とこの国の状況について。
この国はエンヴィール王国。魔王が作り出す魔物からの被害で魔族の国に近い辺境地域が酷い被害と損害を受けているとのこと。
2、召喚について。
王女様が俺達を召喚したけど、召喚自体は国の高位の魔導師達が数年間貯め続けた魔力を消費して召喚をしているので今すぐには帰れないらしい。これについては王女様が涙目で謝っていた。
3、勇者ってなんぞ。
選ばれし力云々。
王国に伝わる召喚魔法にて呼び出せる強い力を宿した異世界人。この世界の人間が持たない力や知識を持っているとされているが勇者といっても力に差はあるらしい。
ざっとこんなもんだ。
勇者としてのステータスを見るにはまだ準備が必用らしく、直ぐには見れないと言っていた。召喚したわりに準備万端じゃないのな。
それは置いといて。
今日はもう休んでくれ、というのも伝えられた。なんでも、明日にはステータスを見れるように用意しておくから一先ず馴れない環境で疲れているであろう勇者様達には休んでいただこう、ということらしい。
夕飯は時間になるとちゃんと運ばれてきたし美味しいし風呂場は広いしベッドはふかふかだったと幼稚園児のような感想を残しておこう。
明日からどんな風になるか、楽しみだなぁ。
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