異世界転生でなんの努力もせずにチート能力で活躍し別にモテるようなやつでもないのにハーレム展開になりそうな主人公を担当しているが、いいかげん腹立つ♡〜タイトル「異世界ものに愛を込めて」〜

カナガワユウ

第1話 オモテ

「やれやれ……」


 目の前には、握りしめたその斧で僕を真っ二つにしようと振り上げているオーク・ケッコウツヨイ。


 後ろには震えている美少女二人。旅の途中山賊から救った短剣使いと弓使いの女の子だ。


 対峙しているこのふざけた名前のモンスターはその名のまま結構強くて並のやつでは敵わないらしい。


 まして後ろ二人の駆け出しの力では到底及ばない。そう震える声で丁寧に先程説明してくれた。


 だが、この人間の一回りも二回りもある凶悪そうなモンスターは所詮僕の敵ではないのだ。


 やつのステータスを確認したが足元にも及ばない。余裕の笑が溢れる。


 いや、油断は禁物。


 これはゲームでも漫画でもアニメでもない。命がかかった戦い。現実なんだ。


 そう、僕はつい最近凶悪なモンスターが闊歩し魔王が世界を脅かすこの剣と魔法の世界に転生したのだ。


 ずっと夢見てきた異世界転生。僕は女神様からもらったチート能力で無双し、こうしてかわいい女の子達と共に魔王を倒す旅をしている。


 オーク・ケッコウツヨイが雄叫びをあげる。ビリビリと肌を震わせるその叫びは後ろの女の子達を震え上がらせる。


 そしてついに何人もの人間を葬ってきたであろう錆び付いた斧が振り下ろされる。


 今までのヤツの攻撃よりも威力がありそうだ。おそらく必殺技なのだろう。これはゲームで言うタメ技のようなものなのか?


 振り下ろされた斧をひらりと簡単に交わし空中へ舞う。


 二つの月が目に映り僕を照らしている。


 たぶん、今、カッコいい。


 転生特典で体重を30キロほど落としてもらった。


 母からは、あんたは痩せれば男前なんだよ。と言われてきた。





 チラッと二人を見ると頬を赤く染め、熱のこもった眼差しで僕を見ている。


 ああ、やっぱり男前なんだ僕は。


 よし。


 先程のヤツの攻撃の衝撃波で女の子のスカートがめくれたのもしっかりと見れた。


 頑張っているんだ。これくらいのサービスはいいだろう。


 そうして体を反転させこの伝説の聖剣、デンセツソードヤイバカタナケンでやつの頭上より攻撃を加える。


「八ノ型! 紅蓮爆炎邪殺龍鳳凰白虎玄武斬!!」


 技名を腹の底から叫ぶとオーク・ケッコウツヨイは真っ二つになり、その巨体を地面に沈めた。


 その上に華麗に着地。


 のはずが、足がもつれ転びそうになる。

すると突然の突風により体制を立て直すことができた。危ないところだった。


 勇者である僕は常に勇者らしく決まってないといけない。どうやら自然も僕の味方のようだ。


 血振りし、振り返る。


 眼下には笑顔の二人。その笑顔に応えるように僕も転生で治してもらった白い歯を二人に向ける。


 今、おそらく月明かりで歯が光った筈。風でこの葉が舞う。


 僕には大切な2人の仲間と、そして天から見守ってくれている女神様がついている。


 僕は感じる。女神様の温かな視線を。きっと今も女神様は僕の活躍を今も見ているはずだ。


 先程の激しい戦いが嘘のように月明かりが優しく僕たちを照らしてくれている。


 これが僕の異世界での任務。魔王討伐に向け剣を振るう。


「さ、町、帰ろう」

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