キリストに膝をつくは雷犬と男巫女
~神~
翌朝。
早朝、5時。
(昨日の…、なんだったんだろ…)
澪が△の
「んーっ…!」
「ま、なんでも良いや! 仮に宇宙人でも! 普通に生きてるんだし! 気にしない!」
正直なところ、△の光で何かをした自分が
「やば…、秋起こさないと…」
今日の行動を始めるためにはまず、
「部屋の鍵…、預かっててよかった…」
昨晩、「何かあったら助けに行けないから、私が鍵、持ってていい?」と言った澪に対し、「この部屋から出るつもりないから、好きにしてくれ。部屋から出たら…、
「入りまーす…」
鍵を開け、そーっと部屋に入る。
秋は壁の方を向いて横向きで眠っている。
「まずは…」
カーテンを開ける。
なるべく勢いよく。
「次は…」
ポンポン…と布団の上から秋の体を叩く。
「ま、起きないよね、それなら…」
秋の耳元に口を近づける。
「ふぅーーー…」
耳の穴に、空気を流し込んでみた。
「––––ん?」
一瞬、おきた。
「秋? 起きて。早めに動かないとすぐ暑くなっちゃう」
澪は秋の肩を
「
謎の寝言を発する。
まだ浅い眠り、レム睡眠だろう。
「もう…、おもしろっ…」
ニヤニヤしながら、澪は再び秋の耳に息を吹き掛けようとした…。しかし、次に秋が発した寝言を聞いてしまった途端、それこそ、寝耳に水を打たれたような感覚を、澪は覚えてしまう。
「とう…こ…」
息が詰まった。
とっさに秋から顔を離した。
空気が凍る。
血の気も引いた。
焦り。
悲しみ。
寂しさ。
どれも当てはまるような。
どれも当てはまらないような。
完成間近のジグソーパズル——
それを、思い切り
そんな感覚が澪を襲う。
「今、
泣きそうな顔になる。
心を整理する。
だんだんと——
自分の感情。
今、この男に言いたいこと。
これは…、苛立ち。
そうだ。
腹が立っている。
誰のおかげでここに来れたの?
一人で来れなかったでしょ?
私は——
誰よりも君のことを想ってる。
私がそばにいて。
近くにいて。
好きなのに。
大好きなのに。
この男は、
今、なんて言った?
でも…。
そうだ。
寝ている。
寝ているんだ。
寝言だ。
それなら仕方ない。
私よりも東子さんだよね。
一緒に闘ったもん、
命をかけて…。
私は何も役に立たない。
少なくとも東子さんよりは——
私は
ほら…、解決した。
飲み込めた。
いつもこう。
イライラも。
もどかしさも。
大好きって気持ちも。
こうやって、無くせる。
自分のせいにしちゃえばいい。
なんの
自分のせいに——
「……おはよう」
澪は、なぜか
「おい…、でかい声出すなよ、しかも耳元で…ドSなのか?」
澪はフンっ! とそっぽを向きながら立ち上がり「早く準備してね! 20分後にロビーに集合っ!」怒りながらそう言ってバタン…! とドアを鳴らして部屋から出て行ってしまった。
「なん、なん…だ…」
秋は、忍者の
「秋…、荷物それだけ?」
ホテルのロビーで合流した二人。ソファに座っている秋が
「ん?」
「ん? じゃないよ。それ刀でしょ? 刀しか持たなくていいの?」
「あぁ…、他にもちょっと色々…」
確かに、いつも刀をしまっている
「本当に、持たなくていいの?財布」
「うん。必要な時だけ使ってくれ。あ、水だけは欲しいって言うかも…
澪は財布をしまいながら、砂漠に行くんじゃないんだから…、と思った。しかし、やたらとここに行きたい、あれを見たい、あれを食べたい——と、観光ばかりに気をとられたりしない分、目的も行動もシンプルでハッキリしているから、それはそれで良いのか…、とも思った。
「じゃぁ、いこ? まずは…」澪はスマホの地図アプリを開く。「ここから歩いて15分のところに、一軒、教会ある。行ってみよ?」
秋がソファから立ち上がり、澪の
ガラスの自動ドアが開くと朝6時の
*
同時刻。とある教会。
横に長いベンチ状の椅子が、左右に規則正しく並ぶキリストの
「神の
男は背中に——刀が
男のイカツイ容姿を一言で
「リク、今日は風がやけに
十字架に
手には身の丈ほどの長い
「なんだそれ?
リクと呼ばれた男が十字架に手を合わせながら後ろの男子に言った。
「〝フラクガントウ〟——風の使い手だよ。東京では見かけないね。東北とか、
リクは手をほどき、十字架に
「僕は興味あるなー。身を軽くしたり重くしたりできる能力。でも、本人の体重も、その周辺の重力も変わっていないはずなのに、よく
「だぁあ! もうちょっとこう短く、まとまんねぇのかよ!」
リクが立ち上がり、振り向きざまに後ろの男子を軽く
「あ、ごめん、ごめん、つい…」
男子は、困り顔と笑顔を足して2で割ったような顔をリクに向けた。リクは、背中の
右手を、額、胸、左肩、右肩の順でそれぞれ触れてから、両手を胸の前に置き、軽く合掌をした。祈りを終えると、ルイの方を振り向き、礼拝堂の出口に向かって歩き出した。自分を横切ったリクの
「なんか、雨が降りそうだよ。リク、傘いらないかな?」
リクは、重たい木製の
「もう、僕の
そう言ってルイが口を
「お、やさしい」
ルイはにこやかに言いながら外に出る。
「お前、一回、ガチで
リクが扉から手を離して言った。重たい
リクは空を見上げた。空には分厚い灰色の雨雲がかかっている。マジで降りそうだな…ま、いっか…、そう思いながら横に立つルイに「行けるか?」と、確かめるように口を開く。ルイは
「うん。
ルイは一度、大きく深呼吸をしてからリクに言った。
刀闘記
~神~
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