御柱様と瘧様 5
壁に老人がはりつけられている。両腕、両足を水晶の杭で打たれ、傷からは血が流れていた。床には溝が彫られ、血を受け止めてどこかへと流している。老人は体を壁に向けているので顔を見ることはできない。しわだらけの裸体だ。
「汝ら、何者じゃ」
老人がうめく。祐矢は少し考えてから、
「柱と旦那です。あなたは」
「覆。瘧様の眷属。ここから下ろして我を解放せよ」
瘧様の眷属が捕えられていることに祐矢は戸惑う。仲間ではなかったのか。
「どうすればいいんです」
「杭を、抜け。わしの顔を、見ろ。見れば、死ぬ。さすれば、わしは解放される」
「ふざけるな!」
祐矢は怒鳴った。死ぬと分かって助ける者があるか。しかし真白は、
「旦那様、真白が見ます。真白は大丈夫ですから」
真白は真顔だった。祐矢には真白を疑うことなどできなかった。しばし躊躇したが、
「よし。やろう、真白」
杭に手をかける。全力で引っ張る。杭はしっかりと食い込んでいて、びくともしない。真白が手を重ねた。その暖かさに、祐矢は引き込まれそうになる。二人は力を合わせて杭を引く。祐矢は、さらにもう一組の手が重ねられたように感じた。
「真希姉さん」
真白が呟く。杭は突然支えを失ったように外れ、砕け散った。バランスを失って、祐矢と真白は倒れる。祐矢の下に真白の体があった。もう耐え切れなかった。
「真白!」
真白のか細い体を祐矢は全身で感じた。真白を抱きしめ、唇を奪おうとした。真白は、
「いけません!」
顔をそむける。きゃしゃな腕が全力で祐矢を突き放そうとする。真白は歯を食いしばり、目には涙をためていた。
「真白の勇気を奪わないで……」
祐矢は呆然としながら体を離した。真白は立ち上がり、一人で残りの杭を抜こうとする。祐矢もそっと手を重ねる。真白の体がびくりとした。祐矢はただ力をこめて、杭を引き抜く。今度は要領が分かっている。倒れることなどなかった。
最後の杭を抜き終わった。祐矢は目をつぶって老人の体を受け止め、床に横たえる。真白は老人を仰向けにした。その顔を直視した。
「ああっ!」
真白があえぐ。老人の顔はデスマスクだった。幾百、幾千、幾万、幾千万、多くの人々が浮かべた死相。虐殺された者たち。その最後に見た銃口、愛した家族の姿、突き立てられる刃。誰が殺した、この老人が殺した。老人は自らの罪業を背負って、永劫にこの獄で血を流し続ける。その血は大地を呪い、病となるのだ。
老人の生み出してきた苦痛が真白を襲う。
老人は唇を動かした。
「柱よ。我を呪うか。死を滅ぼすことなどできぬ。共に呪われるがよい」
真白の体を無数の死が貫く。老人はしわだらけのやせた腕で真白の首をつかむ。
真白はあえぎながら、手を伸ばした。老人は死眼で真白をにらみ、首を絞める手に力を込める。
「呪いは解かれぬ結び目。絡み合い、もはや誰にも解くことなどできぬ」
祐矢は目をつぶっているが、真白が危ないことは分かる。
「真白、もういい! 俺がやる!」
その目を開いて真白を助けようとしたときだった。真白は伸ばした手で老人をかき抱いた。老人の頭を胸に抱きしめた。
「は、はしらが、呪いを、背負います」
自分の首を絞めて殺そうとしている老人に、真白は微笑んでいた。アルカイックスマイル。真白は許していた。老人はうめく。
「呪いは解かれぬ」
「解かれずともよいのです」
真白の言葉に、老人の手がゆるんだ。
「我は殺した」
真白がうなずく。
「我は殺された」
真白が老人を抱く手に力をこめる。
「我は許されぬ!」
「いいえ! いいえ! 大地は血に呪われる。でも、地の母は誓いました。柱となりて、血を導こうと! 血を受け入れようと! 呪いは柱が背負います。あなたは許されるのです!」
老人が背負っていた苦痛、今、その全てを真白が受け入れた。
「お…… おおお……! おおおおお!」
老人は真白の胸で泣いた。老人の肌からしわが消え、体が縮んでいく。杭のうがたれた傷がなくなる。老人は少年となった。無垢となった。赤黒かった壁が透き通る。
少年は立ち上がって真白に、
「御柱様。他にも送りを待つ者たちがいます。あなたを次の眷属へと導きましょう」
真白は少年と手をつなぎ、歩き始めた。御蛙様を送った後のように倒れるのではないかと祐矢は心配したが、真白の顔は命に輝いていた。足取りもしっかりしている。大丈夫そうだ。しかし祐矢は知らなかったのだ。命が燃え尽きる寸前の輝きを。
御柱様と旦那様は、眷属を解放していった。そのたびに、解放した場所の壁は透き通っていった。流れる血が失われたからだ。
百七の眷属が自由となり、祐矢と真白と共に歩む。その行く先は最後に残された赤黒い壁。瘧様の領域。
長い回廊を抜けて、急に景色が開けた。水晶の広間、その奥には石柱が墓碑のように並んでいる。瘧様はいた。祐矢たちに背を向け立っていた。
祐矢は真白を制して、
「ここは俺が行く。行かなきゃいけないんだ」
瘧様へと進む。祐矢は大声で問う。
「瘧様! あなたは何者です!」
小声で瘧様は答える。
「我は疫神の長、瘧」
「それだけではないはずだ!」
「我は百八番目の呪い、悪作。後悔する者」
広間の奥にある石柱を、祐矢は見たことがあった。緑宝山の山頂、御柱様たちの墓碑。同じものだ。
祐矢は瘧様の肩を後ろからつかんだ。
「真実を語れ!」
祐矢は瘧様を振り返らせた。その顔を見た。瘧様は絶叫した。
「我は、ダーナ! 贈られ送る者!」
その顔は白羽頭矢、曾祖父だった。
瘧様の布が広がり、祐矢を包み込む。
「うっ!」
布は全身にくまなく巻きつき、祐矢を覆い尽くしていく。瘧様の体は消えていた。瘧様は布と化したのだ。もともと布こそが体だったのかもしれなかった。
「祐矢よ、ダーナであるお前の体を病に捕えることはできぬ。しかし心はどうかな」
瘧様が話しかけてくる。
「おじいちゃん、止めてくれ! どうしてなんだ!」
「祐矢だ! 祐矢のせいだ! わしはただ、御柱様とダーナの関係を断ち切ろうとしただけなのに! 祐矢がそれを台無しにした! 真希を殺した! わしは血の呪いを憎む! 故に血を止める! 瘧が人を終わらせる!」
「おじいちゃん、分からないのか…… 今のおじいちゃんこそが、血の呪いだ」
「違う! わしは呪いを解き、御柱様を救い出す! ああ、真耶を送るべきではなかった。失ってはならなかった。だから、わしはあらゆる手を尽くした。ダーナへと贈られた力で、この領域も生み出した。最後の最後まで封じてはいたのだ。だが、なんということだ、わしは真希の命を奪ってしまった。守り抜こうと誓った命を、このわし自身の力で。この上に真白まで失うことは、断じて、どんな手を使おうとも許さん!」
「そうか…… 前の送りでただ一つ送れなかった呪いとは、おじいちゃん自身の後悔だったんだな。それがここまで育ってしまった」
祐矢は瘧様と心で会話するのみ、身動き一つできない。だが、真白の姿は感じる。真白は祐矢を救うため布を引き剥がそうとしていた。しかし布は剥がしてもまた伸びていく。布には文字が繰り返し書かれていた。
甲と乙の間には一切の貸借関係がありません。今後いかなる場合においても甲と乙の間に貸借は行われません。いかなる行動にも関わらず、甲と乙の間に行われた行為および今後行われる行為を貸借とはみなしません……
「あの証文は、贈られ送る関係を拒絶していたんだ!」
「お前は送りに耐えられるというのか。愛する者を送るのだぞ! 真白を失うことができるのか! 祐矢よ、ここにいれば永劫に真白とお前は、御柱様と旦那様は共にあることができる」
「こんなところにずっといるなんて、死んでいるのと同じだ!」
祐矢は抗う。瘧様は語り続ける。
「そうかな。お前は気付いておらぬようだが、真白の生命は燃え尽きかけておる。この水晶獄を出ても、時の流れはすぐに真白を殺すぞ。真白を失うのだぞ! しかしここにあれば時が過ぎることはない」
真白を失わずにすむ。逆らいきれない誘惑が祐矢の心に裂け目を作った。瘧様の意志が侵入してくる。
「お前は真白を苦しめている。真白とお前を水晶壁がさえぎったであろう。あれを作ったのは、わしではない。真白だ」
そんな馬鹿な。しかし真白はいつも、祐矢がある一線以上に入ってくることを避けようとしていた。
「真白は怯えている。お前に近づきすぎれば離れられなくなり、送りができなくなるとな」
祐矢は否定できない。
「愛する者をなぜ送らねばならん。ずっとここにいればよいのだ」
それでは、瘧様が世界を滅ぼす。
「大地の救いと真白、どちらが大事だ。言うまでもない」
祐矢の心と瘧様の意志が重なった。
布に覆われきった男が立ち上がる。男は真白に手を伸ばす。
「旦那様……?」
真白は戸惑う。
「真白…… 瘧様は、俺だ」
瘧様はほくそえむ。
「真白と出会ってから、俺は本当に幸せだった。欠けていた半身を得たんだ。二人は一つ、別れてしまえば俺はもう俺でいられなくなる」
瘧様は笑う。
「俺は真白を守りたい、真白と離れたくない! そのためなら、どんなものと引き換えにしてもいい! 君を愛しているんだ!」
真白は応える。
「旦那様と出会ってから…… 真白は本当に幸せでした。真白は、旦那様とずっと一緒にいたいんです! あなたが好きなんです!」
瘧様は歓喜する。
「だから」
水晶獄で二人、永劫の時を過ごすのだ。瘧様は勝ち誇る。
「だから俺は!」
真白は男の布に包まれた顔を見つめ、その手をとった。
「だから真白は!」
そして二人は共に叫んだ。
「心を一つにして」
「贈る!」「送る!」
その言葉に石柱が共鳴する。祐矢と真白の間に、生命の力がつながる。布は微塵となって吹き飛んだ!
「ナゼダアアアアツ! ココニハ大地ガナイトイウノニ!」
空間に絶叫が轟く。
「石柱はお墓じゃないと先輩が調べてくれた。そう、御柱様と大地を結ぶ絆の柱だったんだ!」
石柱は祐矢と真白の心をつなぎ、金色に光り輝く。ひとつひとつの石柱から、御柱様たちが語りかけてくる。大地への愛を。ダーナへの思いを。
「おじい様、聞こえるはずです! 御柱真耶は補陀落で今もおじい様を思い続けています! おじい様は一人ではないんです!」
「アア、ナニモ聞コエヌ! ナニモ感ジヌ!」
水晶獄全体が震えるように叫ぶ。
祐矢には分かっていた。瘧様は祐矢自身を写す鏡だ。御柱真耶を自ら送ったとき、曾祖父の心は悲しみに閉ざされてしまった。それは自分の未来に待つ姿なのかもしれない。しかし、ここには真白がいる。自分がいる。曾祖父を思う者たちがいるのだ。それもまた、世界線の彼方に待つ可能性。
自分は進もう。真白の心と共に。どれほどの苦しみが待ち受けようとも。
「旦那様、瘧様の体はこの閉ざされた水晶獄そのものです。これにおじい様の魂は囚われているんです」
「今でも御柱様の声は届いているんだから、隙間はあるはずなんだ。それをこじ開けられれば」
広間に待っていた百七の眷属が、それに答える。
「我々は解放された。血の壁は流れ去り、水晶獄の深淵にまで大地の絆は及ぼうとしている。しかし、まだ遠い。遠いのだ」
「そうか!」
祐矢は真白を見つめる。真白は祐矢を見つめる。
祐矢は御柱様の旦那様であることを望む。真白は旦那様の御柱様であることを信じる。
真白は今、全てを祐矢に贈る。祐矢はその全てを受け取る。
柱送りのときが来たのだ。
瘧様の領域に真白の贈る力が満ちた。無数に分岐していこうとする世界線を祐矢は感じ取る。祐矢は世界の運命を選び取る。瘧様の領域は向かっていく。狭間の領域、始まりも終わりもない場所、御柱様たちの待つ補陀落へ。
石柱の輝きはいや増し、放たれる光は細い線となって上へと伸びていく。壁を穿たんとする。
「イヤダアアアアッ!」
水晶獄の赤黒き血壁は、光に抗った。しかし補陀落に近づき、御柱様たちの声はより強く届く。光は力を増す。
旦那様……
優しい声が響き渡った。真白の声ではなかった。
真耶……!
水晶獄が答えた。光が壁を貫く。そこから無数のひびが生じていく。水晶獄は砕け散った。
老人が石柱にすがりついている。御柱真耶の石柱だ。その傍に、祐矢と真白が寄り添い立つ。石柱からは、細い光の柱がはるか天空に向かって伸びている。
真白は白羽頭矢の隣に座り、その手を抱いた。
「おじい様。御柱様が補陀落で旦那様を待っています」
「わしは許されざることをしたのだ! 真耶が待っていようとも会えぬ」
「おじい様は呪いに囚われました。多くの不幸がありました。だから、共に補陀落へ参りましょう」
「わしは呪いに敗れた。わしは呪いとなった。わしには資格がない」
「いいえ、だからこそ資格があるんです。ほら聞こえるでしょう、御柱様の声が」
頭矢は聞いた。
あなたはわたしのだんなさま。あいしています。どこまでも、いつまでも……
「……真耶!」
頭矢のまとう布がはがれていく。塵となる。
真白は裸となった頭矢の手を引いて立ち上がった。
真白は祐矢に告げた。
「旦那様、真白を送ってください」
送れば、二度と真白は戻ってこないであろう。
「代わりに俺が行く! 真白が不運を背負うことはないんだ! 幸せになっていいんだ!」
祐矢の言葉に真白は優しく微笑んだ。
「幸運と幸せは別。真白は幸せです。だって、旦那様の御柱様なんですもの」
祐矢は知った。別れるのではなかった。もう会えなくても、二人は一つなのだ。旦那様の御柱様、御柱様の旦那様なのだ。二人はどこにいようともつながっている。
「でも、まだ!」
祐矢が食い下がろうとしたとき、真白がふらついた。倒れるところを祐矢は受け止める。馬鹿な、体が冷たい!
真白は力を振り絞って、
「もう時間が。早く」
真白は命を燃やし尽くし、贈りつくしたのだ。祐矢は声にならない叫びを上げた。強く抱きしめた。腕の中で真白はより冷たくなっていく。
「お願い、旦那様」
祐矢は真白を抱きかかえた。光の柱へと進む。祐矢の願いに応えて、柱の光は広がりあふれていく。光ははるか天空へと走り、補陀落へと至るのだ。光を受けて、真白の体が浮き上がろうとする。
真白は最後の力を込めて、その腕で祐矢を抱きしめた。その耳に告げた。
「あなたを、好きになれてよかった……」
真白の腕が離れる。祐矢はその腕をつかむ。
「真白!」
「離して…… 旦那様……」
祐矢の心は決して離したくないと叫び、体は真白の望みに応えた。真白の体は手の届かない高みへと浮き上がっていく。
「真白、俺は、お前の旦那様だ! 御柱様の旦那様だ!」
真白はうなずいた。その双眸から落ちてきた滴が、祐矢の頬を濡らした。
「行ってきます、旦那様」
それが最後の言葉だった。
光の柱は拡大していき、眷属たちを包み込んだ。彼らもまた浮き上がり、真白に導かれて天へと昇る。彼らは声を残していく。
ダーナよ、我は癒しを贈ろう。
ダーナよ、我は大地の知恵を贈ろう。
我は幸運を。我は生命を。
我が曾孫よ。我にはもはや贈るものが残されておらぬ。我はただ言葉を贈ろう。お前ならば違う道を歩むことができると。
白羽頭矢もまた真白に導かれていくのを祐矢は見送る。傍らに御柱真希の姿もあった。その言葉に応えることを祐矢は誓う。
昇天していく中に、熊の縫いぐるみがあった。
「熊神様!」
祐矢が叫ぶ。熊神様の言葉が届いた。
いい機会じゃによって、我は国に帰る。いずれ遊びに来るから、また送るのじゃぞ。
昇っていくものは、それだけではなかった。光の柱は血の大河にまで広がり、大河から無数の光が真白を追って昇る。
彼らは血の呪いに沈んでいた魂。祐矢に祝福を贈って、補陀落へと去っていく。
声があった。声は詠った。
「二人の偉大なる神が天下った。一人は力もて地に祝福を望みダーナとなった。一人は力を贈りて地の癒しを願い、身を捨てて地の母となった。地の母は誓った。我が一族最後の一人となる日まで、地の母は補陀落に至る大地の柱となりて血の呪いを受け入れん」
飛鳥先生だった。三月兄妹、皆歌がそろっている。眷属が送られて、病を癒すことができたのだ。
先生は呟いた。
「最後の御柱様が送られた。御柱様と旦那様の伝承はここに終わる」
三月兄妹の体からも血の呪いが光となってはがれ、上昇していった。呪いは拭い去られたのだった。
全てが終わったとき、祐矢と三月兄妹、飛鳥先生の四人だけが残されていた。
「語り部がいなくなった。この領域はもう長いことないぞ。さっさと脱出するんだ」
飛鳥先生が叱咤して、自失した祐矢を無理やりに動かす。三月兄妹が御蛙様に変じて、朱美が祐矢を、ミカエルが飛鳥先生を載せる。清流となった大河に入り、下っていく。先生の予測では、これで元の領域まで戻れるはずだった。
青御蛙様の上で、先生が肩を震わせている。
「先生……」
心配したミカエルの言葉に、飛鳥先生はコートの端で目を拭って、
「なんでもない! 熊神様のまた送れというのは、まったくもって勘弁してほしいもんだな。また狩りをさせるつもりかね」
悪態をついてみせる。先生の涙が御蛙様を濡らしているのに、ミカエルは気が付かないふりをした。
飛鳥瑞希は嗚咽した。また、目の前で友を失った。なにもできなかった。
だが、彼女は御柱様のいなくなった世界で大地の呪いを救うために生き、新たな伝承となったのだった。旦那様と共に。
天から白い雪が降る。大規模な噴火で発生した異常気象によるものか、あらゆる大陸、あらゆる海へと。真白な雪が世界に降り積もる。
雪に含まれていたオコリ病の突然変異菌はどうして発生し、どこからやってきたのか、諸説があって明確ではない。たまたま運良く突然変異したという説もあったが都合が良すぎると退けられ、細菌兵器とその対抗細菌兵器であった、という説が有力になりつつある。
突然変異菌は本来の菌に遺伝子を転移し、驚異的な短期間で駆逐してしまった。変異菌自体は毒素を持たず、それどころか、地中の重金属化合物など有害物質を選択的に分解するという報告すら見られる。
一ヶ月の間、世界で猛威を振るったオコリ菌は、わずかな期間で病原体から有用菌へと名前を変えつつあった。
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