御柱様の旦那様
モト
御柱様と熊神様 1
「旦那様、焼かなかったんでしょ」
見知らぬ少女がそう話しかけてきたのは曾祖父を焼く火葬場でのことだった。
でも彼女だったらこう主張するに違いない。
幸運と幸せは別。
祐矢もまた彼女に反論などできはしない。彼女は本当に幸せそうなのだから。
それはもはや語られることもなき、小さな街の小さな少女が大地を救済した物語。
御柱様と熊神様 1
その日の火葬場は、証文を持った弔問客であふれ返っていた。
両親たちが挨拶と証文の受け取りに忙しい中、近い歳の親類がいない白羽祐矢は、話し相手もおらず手持ち無沙汰だ。
急なこととて祐矢に喪服は間に合わず、高校の冬服を着込んでいる。そろそろ四月になろうという上天気の日には、ちょっと暑い格好だった。
弔問客たちの持ってきた証文は、いずれも曾祖父に書かされたものだ。曾祖父が火葬される際、証文は一緒に焼こうという話に誰からともなく決まっていた。
曾祖父は付き合いのある相手からはだれかれ区別なく証文を取る人だった。
甲と乙の間には一切の貸借関係がありません。今後いかなる場合においても甲と乙の間に貸借は行われません。いかなる行動にも関わらず、甲と乙の間に行われた行為および今後行われる行為を貸借とはみなしません。
その証文には偏執狂的なまでに、貸し借りのない関係であることがうたわれている。
かといって、曾祖父がけちだった訳ではない。
奇跡の相場師と異名を取るほどに相場でならしていた曾祖父は、まだ若い時分に突然隠居してからというもの、もっぱら人助けのために奔走して大金を惜しげもなくばらまいた。証文を取り始めたのはその頃だという。貸し借りなしでは商売をしようもないが、よほどそれまでに貯めこんでいたのだろう、お金に困ることはなかったようだ。たっぷりと遺産も残されているらしい。
曾祖父の証文取りは、尊敬する太っ腹な旦那の愛すべき奇矯な振る舞いとして受け入れられていた。お礼をしようとする人たちには証文を盾にして、金品はおろか礼状の類ですら一切受け取ろうとしなかった。
弔問客たちは曾祖父の棺に深々と一礼してから、まるで捧げものように恭しく、両親へと証文を渡す。証文は、曾祖父から受けた恩義の象徴だった。
もっとも受け取る両親はといえば、肉親の祐矢なればこそ分かるのだが、証文に対してあまり好意的とは見えなかった。
曾祖父はこの証文を徹底し、友人知己はもとより、息子に孫、そして曾孫である祐矢にまで書かせたからだ。家族に対してすら証文を取っているようでは、あまり暖かい関係にならないのも無理はない。
曾祖父と心底から仲が良かったといえる家族は、祐矢だけだったろう。
子供の祐矢を対等に扱ってくれた曾祖父が祐矢は大好きだったし、深く感謝もしている。
証文を取らされていた祐矢は、しかし八十以上も歳の離れた曾祖父に対して貸しなど生じるはずもなく、遠慮なく小遣いをたかり、遊び相手を強制したものだった。曾祖父もまた遠慮なく相手をしてくれていたと祐矢は信じている。
ジャンケン、双六、人生ゲームなど、どんなに頼もうと、泣こうが喚こうが運を試すような遊びは頑として拒否する曾祖父だった。勝負の大半は運が絡む。必然的に、遊びは凧や紙飛行機を作るといった、勝負なしですむものになった。相場師を引退して以来、祖父は賭け事の匂いがするものには手を出さなくなったと聞いている。
そんな曾祖父ではあるが、両親の話によると祐矢のために一度だけ強運を試したことがあったそうだ。
祐矢は生まれつき心臓に欠陥があり、六歳のときに心臓を移植するほか手がなくなった。ただでさえ移植用心臓の提供は少ないのに、幼児ときたら尚更だ。しかも国内では幼児に移植手術をすること自体が禁じられている。八方塞りで絶望的な状況に、曾祖父は全部自分が面倒を見ると言い出して強引に仕切った。
世界的な定評のあるアメリカの移植医師をすぐに押さえることができ、アメリカ到着の直後にドナーから心臓の提供があった。完璧な適合で拒否反応もなく、手術も無事成功。その後も祐矢の胸中で心臓は元気に拍動を続けている。
今思えば夢のような偶然ばかり、奇跡の相場師とはこのことかと両親は語ったものだ。もっとも曾祖父はこの件について一言たりとも話すことはなく、実際のところはどうだったのか、もはや知る由もない。
こうした曾祖父と小さなときから遊んでいたせいか、祐矢はどうにも曾祖父に似てしまっているらしい。
貸し借りなし、賭け事せずはまあ良いとして、太っ腹というか困っている人がいたら助けずにはいられないのだ。曾祖父のように資産家であればともかく、高校生でこの性では厄介なはめになることが多々あった。
いつの間にかついてしまった仇名にも困ったものだ。奇跡のなんとかだったらまだしも、この歳で旦那呼ばわりはないだろう。別に老け顔でもないのだし、せめて若旦那にして欲しいというのが祐矢の切なる願いだ。誰も聞いてはくれないが。
両親たちがようやく証文を集め終わった。曾祖父と共に、証文は棺に収められる。火葬炉へと棺は運ばれ、大人たちの見守る前で点火がおこなわれた。
三月の空に煙突から細く立ち上る煙が消えていくのを、祐矢は火葬場の外で一人見上げる。
大人であればきっとこんなときには煙草でも吸って、紫煙を手向けてから、思い出の一つに収めてしまうのだろう。残念ながらまだ十六歳の高校生である祐矢は、どう整理したらよいのか分からない気持ちと正面から取っ組み合わねばならなかった。
だから祐矢の内ポケットには証文が入ったままだ。
黄ばんだ封筒に収めたまま、見返すこともなく放置してきた証文。皆は証文を焼いてしまった。残るのはきっとこの一枚だけ。学生服の上から証文を押さえてみる。紙がこすれて、乾いた音がした。
火葬場の外、広場の向こうから女の子の歩いてくるのが祐矢の目に入った。悪いことをしているのを見つかったような気がして、慌てて手をポケットに突っ込む。女の子は火葬場に近づきかけて、しかし足を止める。
こんな子、葬式にはいただろうか。
黒いワンピースを着ているところからして、弔問客ではあるのだろう。
女の子は捨てられた子犬のような眼差しで、火葬場を見つめている。誰かを探しているようでもあった。
面倒だ。変に思われるかもしれない。ご縁を結ぶこともなかろう。
だが困っている人を見ると、祐矢の理性を無視して反射的に体が動いてしまう。
祐矢は所在なさげな彼女の元へと向かった。用事がなければ不自然なぐらいに接近したときだ。
女の子はこちらに気付くと、表情が急に明るくなった。こちらに駆け寄ってくる。
祐矢より頭一つほど背は低い。年齢は同じぐらいのようだ。あまりめでたい話ではないが、黒いワンピースの喪服姿はしっくりと似合っている。
と、そのとき祐矢は突然つんのめった。突然足にしびれるような衝撃を受け、全身をなにかにつかまれて引っ張られたかのごとく女の子の方へとよろける。
「うわっ!」
だが、祐矢の叫びはそれとは違うことが原因だった。
「きゃっ!」
女の子もまたつんのめり、祐矢に向かって飛ぶように突っ込んできたのだ。視界が激しく動き、思わず目をつぶる。衝撃を恐れて体が硬直する。
痛くない。むしろ柔らかくて、その、なんだ、心地よい。
二人は豪快に折り重なっていた。祐矢は女の子を下敷きにしていると知り、
「ごめん!」
慌てて飛びのく。女の子は、土の上でうつぶせに倒れたままだ。嫌な汗が祐矢の背中をつたう。
祐矢は膝を着いておそるおそる女の子を覗き込み、全然大丈夫そうでない彼女に、
「だ、大丈夫?」
声をかける。女の子がいきなり裏返って、仰向けになった。
祐矢は息を呑む。
女の子の瞳が祐矢を捉えた。今一つ焦点の合わない目で微笑み、額に血を流しながら、線の細そうな笑顔を浮かべる。
腰まで伸ばした美しい長髪にきゃしゃな体つき。ちょっとたれ目で大きな瞳に細めの顔立ち、通った鼻筋に太めの眉、印象的な組み合わせが総合的には祐矢の心臓を高鳴らせるだけの美しさを生み出していた。正直、タイプだ。可憐ではかなげ、思わず守りたくなる。
いや、それどころじゃない! 血が額から耳までつたっているではないか。顔には砂や小石がくっついており、鼻の先が痛そうに赤くなっている。
状況を整理できなくなった祐矢の頭はさておいて、体は反射的にポケットから白い葬式用ハンカチを取り出した。
「ち、血が出てるから」
言い訳をしてからハンカチで女の子の額をそっと押さえようとしたとき、女の子は上半身を起こした。思わず手を離したハンカチは女の子が代わりに白く細い指先で押さえる。
彼女は上目遣いで興味津々に祐矢の顔を覗き込む。どこか記憶にあるような顔だが、会ったことはない。こういう顔つきの知り合いを忘れるほど記憶力に乏しくはないつもりだ。
どう言葉をかけたものか詰まってしまった祐矢の前で、彼女の上半身が急によろけた。慌てて支えようとした祐矢の胸へと、すがりつくように抱きついてくる。
内ポケットから、かさりと音がした。血はもう止まったらしく、ハンカチは片手に握られている。もう片方の手が祐矢の胸をまさぐり、制服のボタンを外して内側に侵入した。
祐矢は訳が分からず、ただ心臓を早鐘のように打たせる。
暖かくて柔らかい。重みと温もりとは、こんなに気持ちよいものなのか。黒いワンピースの下にある体の起伏を、学生服越しにどうしても意識してしまう。祐矢は唾を飲み込んだ。これは、なんだ。どうしたことなのだ。
彼女の手はなにかを探り当てた。素早く手は引き抜かれ、彼女の体が離れる。手の先には黄色く変色した封筒があった。内ポケットに祐矢が収めていたものだ。
「旦那様、焼かなかったんでしょ」
彼女は封筒をひらひらと振ってみせた。彼女は実に満足げな表情を浮かべ、そのかわいい瞳はいたずらっぽく輝いている。
つかの間の幸運を惜しむ暇もなかった。
それが目当てだったのか。別に悪いことではないはずだが、ひとりだけ焼いていないのを知られるのは間が悪い。
「返してくれ。大事なものなんだ」
「中身を見せてもらったら、お返しします」
彼女の細くて白い指が封を丁寧に剥がし、中身の証文を取り出す。古ぼけた証文の紙は茶色に染まっている。
ペースをすっかり奪われてしまったことに祐矢は大仰なため息をついてから、
「君は、いったい誰なんだよ」
彼女は脆くなった紙に気を付けて、折り畳まれた証文を丁寧に広げながら、
「家族です」
曾祖父も祖父も子供は一人、父の子も自分一人で、親戚に従兄弟や兄弟の類を持ったことのない祐矢にとって、それは自分の属する世界の枠組みが崩れ落ちるぐらいには衝撃的だった。
しばらく凍りついた後、彼女の言葉を脳内でぐるぐると反芻してから、祐矢は搾り出すように、
「ま、まさか! 父さんの隠し子とか!」
彼女は小首をかしげて、
「あたしは、旦那様のお父上のお父上のお父上の、奥様の弟の息子の息子の娘です」
祐矢は頭の中で家系図を描きかけて、すぐ訳が分からなくなった。
「その、ちょっと待った。まずその旦那様って誰だ」
証文を広げて読み始めていた彼女の動きが止まった。瞳が祐矢を真っ直ぐに捉え、そして唐突に潤み始める。
「分かっていて仰るんですね。知らないふりをなさるんですね。あたしは、真白は、旦那様のため生まれたのに」
真白と名乗った子の表情がにわかに曇った。たちまち瞳が潤み、白い頬を滴が伝い始める。人の世話なら慣れたものだが女の子を泣かしたのは初めての祐矢は困り果てて、
「分かった、分かったよ。その呼ばれ方は心外だが、俺のことなのは分かったから」
祐矢の手がまた反射的にティッシュをポケットから取り出し、彼女の頬を軽くぬぐう。こういう妙な子を放置できないから、厄介ごとを背負い込んで旦那呼ばわりされるのだと反省が脳裏を渦巻く。
真白は泣くのを止めた。今度はなぜか急に頬を上気させ、人形のように美しく整っている白い指先で証文に記されている一文を示し、
「旦那様、ここ」
祐矢は覗き込んだ。いつもの貸し借り無し条項がつらつらと並んでいる。が、真白の示しているのはそこではなかった。いかにも幼児の手になるとおぼしき、平仮名で記されている鉛筆書きの箇所だった。へたくそで跳ね回っているような字なのに、祐矢はすらすらと読めた。自分が書いた字だからだ。
「しらはね、ゆうやは、しらはね、とうやの、あとつぎと、して、だんな、に、なり、みはしらさまの、めんどうを、みます」
祐矢は読み上げてみた。しらはねゆうやは、自分、白羽祐矢のことだ。しらはねとうやは白羽頭矢、つまり曾祖父。
白羽祐矢は白羽頭矢の跡継ぎとして、旦那になり、みはしら様の面倒を見ます。
文の趣旨はともかく、単語の意味が一つ分からない。
「みはしらさま?」
呟いた祐矢に、真白は自分を指差して、
「旦那様、これ、これ」
「はあ?」
意味をつかみかねた祐矢の頭が、真白の両腕で突然に抱きしめられた。真白の胸に押し付けられる。
呼吸が苦しい。視界が覆われている。柔らかい。もっと柔らかい。これはいったい全体なにごとか。空転する祐矢の思考を無視して、祐矢の体は勝手に動き、自分の腕を真白の背中に回してしまう。
いや、俺の体よ、それは間違っているだろう。体が世話焼きなのと、女の子にすぐ手を出すのとは違う。違うんじゃなかったっけ。いや、据え膳食わねば男の恥といって、これも旦那たるにふさわしいのだ。いやいや、俺は旦那なんかじゃない! ないんだ!
パニック真っ只中の祐矢を優しく抱いたまま、真白は陶然として、
「真白が柱です。旦那様に全てを贈る御柱様となる者です」
そう告げた。
それが二人の出会いだった。幸福と不運の始まりだった。
火葬場から、祐矢を呼ぶ声がする。親父の声だ。真白は祐矢からそっと腕を外し、軽くワンピースをなびかせて立ち上がった。
「またね、旦那様」
手を振ってから、元気そうに走り去っていく。またつんのめるんじゃないかと心配だ。しかし何度も自分の名が呼ばれるのでは眺めている訳にもいかない。彼女の姿が坂道の向こうに消えてから、祐矢は火葬場にいる家族の元へと戻った。
「それでだな、祐矢。お前は高校まで遠すぎると文句を言っていただろう」
祐矢を呼びつけた父は、なぜかうれしそうに言った。
「うん、何度も言ったけどさ、塔之原まで電車で片道二時間だよ。絶対に遠いって。でも、寮に入れてくれなかったのは親父だろ」
話の流れが見えない祐矢に、
「お客さんで、御柱家の代理人という方がみえられてな。御柱家は白羽の遠い親戚で、もうその血筋の方は失礼ながら一人も残っていないと聞いていたんだが、それがまだ、いらっしゃったんだよ」
「はあ」
父はそれがうれしかったらしい。祐矢にはまるでぴんと来ない話だ。
「その方は塔之原高校の近所に一軒家をお持ちで、女の一人暮らしでは無用心だからお前も一緒に住まないかと言ってくれたんだ」
なぜだろう、まるで啓示でも受けたかのように、祐矢の足から全身へと衝撃のようなものが走った。
「女の一人暮らし?」
祐矢が全身を震わせたのを父はからかうような目で見て笑い、
「言っとくが、おばさんにあたる方だぞ。下宿と思ってもらえれば良いそうだ」
通学時間が大幅短縮できて、今より自由な生活もできる。下宿であれば、自分一人だけの独立した住まいでないとはいえ悪い話ではなかった。むしろ、これはかなりの幸運だ。なんといっても今まで家から出ること自体に反対だった父が、自ら勧めてくれる状況というのはラッキーという他にない。葬式の忙しさでハイになっていて、細かいことが今は頭に入らないのだろう。
「その話、お願いします!」
祐矢は父に勢いよく頭を下げる。そのとき、遠くで車の急ブレーキらしき甲高い音が響いた。続いて、なにかにぶつかるような鈍い音。
「ちょっと見てくる!」
もっと詳しい話を聞きたかったのに、事故で困っている人がいるのではないかと、祐矢の体は自動で動いてしまう。火葬場を出て、音のした方向へと祐矢は駆け出した。嫌な予感がする。
火葬場脇の坂道を駆け上った。曲がった先ではガードレールにセダンが突き刺さり、アスファルトに黒いワンピース姿が倒れていた。
もう夜も遅い。
祐矢は自宅の自室でベッドに腰掛け、そのまま倒れこむ。目まぐるしい一日にぐったりと疲れきっていた。
車に跳ねられていた真白のために救急車を呼び、茫然自失のドライバーに代わって警察と保険会社に連絡を取り、病院まで真白に付き添ってきた。手際の良さには警察官までが感心していた。何度も他人の事故に首を突っ込んできて経験を積んでしまっただけなのだが。
事故の原因は前方不注意だった。よそ見をしていてハンドルを切り損ね、スリップした先に真白が出てきたというのが鑑識結果だ。実に運の悪い話だが、まともに跳ねられて腕と足首の捻挫程度ですんだのだから良しとすべきかもしれない。ドライバーは大きな黒い影が山から現れたと主張していたが、そんなものは見当たらず、野犬でも見間違えたのだろうという結論になった。
治療が終わり腕を吊った姿で診察室を出てきた真白は、意外と元気、いやむしろ幸せそうなまでの笑顔を浮かべていた。心配で尋ねた祐矢に連絡先を教えることもなく、なのに、また今度と言い残してから去っていった。また事故にでも会うのではないかと目を離すのが心配でならないが、真白の家までついていく訳にもいかない。
祐矢は寝転がったまま証文を開いた。
白羽祐矢は白羽頭矢の跡継ぎとしてみはしら様の面倒を見ます、か。自分の人生、面倒を見てばかりだ。それもこれも、こんな証文を書いてしまったせいかもしれない。
折り畳もうとして、証文の裏側に薄く記されている文字が目に入った。まだなにか書いているのか。
「ええと、ましろの、ふうんは、だんなさまの、こううん、だんなさまの、しあわせは、ましろの、しあわせ。みはしらましろ。なんだ、こりゃ?」
小さくかわいい字だ。祐矢の書いた字ではないだろう。
ましろ、ましろ、真白。今日出会った彼女の名。偶然の一致にしては、できすぎている。しかし、まさか。もしかしたら今日、祐矢の隙を見て彼女が書き込んだのかもしれない。
非現実的な結論で強引に納得してから起き上がり、祐矢は明日の引越し準備を始めた。今は春休みではあるが、早速引越し作業を始めることにしたので、のんびり休んではいられない。自分の性に祐矢はため息をつく。さっさと眠りたいのに、人様には迷惑をかけられないと体が勝手に働きたがるのだった。これじゃ、旦那というよりも貧乏性だ。
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