第45話 痛みがあるのは特別仕様!?

「ぐあああっ!!」

「どうした、リーダー! 反撃しないのか? それとも完全に引退してやる気すら出ないのか!」

「……そ、そんなことは」


 実際には痛みは無いが、画面上では何度も血しぶきが上がっていて精神がやられそう。

 反撃したくてもこのゲームはどう考えても、リンだけが攻撃できる仕様だ。


 両足が拘束されていることがVR上でも反映していて、その場に張り付け状態になっている。

 避けることも出来ないし、ガードも取れない。


 それなのにリンからは、やる気を見せろだの戦えだの、言うこととやってることが違いすぎる。

 両手のコントローラーも、動かせないという意味で”固定”されている状態だ。


 恐らくリンは俺がいる部屋にはいなく、別のきちんとしたモニター部屋でキャラを動かしている。

 この状態でどうやって反撃しろというのか。


「リーダー! いい加減、ふざけてると……直接行くからな!!」

「うええ!? い、いや、そんなこと言われても」


 いや、むしろ俺の現状を見てくれた方がいい気がする。

 それを見たら彼女のことだから、猫撫で声を出しながら助けてくれるに違いない。


 ◇◇


 しばらくして――。

 VR画面上のフィールドでは、ぼっちにされた俺のキャラだけがただただ取り残されている。


 どうやらリンの方は、言葉通りに行動を起こしたらしい。

 俺の方はというと、特に何かされたでも無く相変わらず身動きが取れないままだ。


 時間も分からないうえ、昼なのか夜なのか分からない状態である。

 声は出せるが、黒服のお姉さんが傍にいるとしたら、助けてくれるはずが無い。

 

 そうして時間の概念を感じずに待機していると、両手が勝手に動かされた感じがした。

 そうなると当然だが、俺のキャラはNPCのごとく立ち尽くした状態になる。


 棒立ちな自キャラと背景を眺めていたら、突然画面がブラックアウト――ではなく、VRを外されて今度は目隠しをされたようだ。


 視界はともかくようやく耳が聞こえるようになったところで、シュルッとした音が聞こえて来た。

 この感じを予想するに、両手を何か感触の柔らかいモノで縛られたと思われる。


「――!? 痛っ!? な、何だ!?」


 両手両足を拘束され、視界は真っ暗だ。

 辛うじて耳と口は動かせているが、腕に何か痛みを感じる。


 これは一体何なのだろうか。

 もしかして画面が見えないだけで、別のゲームに突入したのでは。


「いだっ――!? や、やめ……やめろって! 何だ、誰だよ!!」


 そんな何も見えない状態になってから、腕や足に痛みが出て来た。

 しかもその痛みは、まるで何かの動物に噛まれているような感覚だ。


「がぶっ!」

「――のわぁ!? や、やめてーー!」

「甘噛みなのに、痛がるなんてひどくないですか? イツキくん」


 この声、もしやリンなのか。

 しかも甘噛みって、そんな生易しいものじゃないんだが。


「痛いって!!」

「え~? おかしいなぁ? リーダーって、痛みも嬉しいはずですよ?」

「いやいやいやいや!!!」

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