第37話 女子の方が一枚以上、上だった件
義妹の
元々は本名で生活していたのに、攻略組だった彼女たちがハンドルネームで呼び続けていたせいであって、俺が悪いわけでないのに。
「じゃあミキちゃん。教室でね!」
「分かったから、早く行った方がいいぞ~」
「お先に~!」
何でこうなったんだ。
一樹と主に接触してたのはリンとヒナだけのはず。
それが何故こんな急に……。
ともかく、学校に行ったらリンに声をかけて、それからだ。
そう思ってリンに近づいたのに、
「おはよ、
「はっ? えっ? リン……? え、俺のこと?」
「何言ってるんですか? どう見ても幹くんじゃないですか」
「そ、そうだけど……え、何で?」
「さっきからおかしなことを言ってますね。おかしいのはわたしですか? それとも幹くん?」
「おかしくな……い」
「良かったです! それじゃ、わたし席に着きたいので行ってもいいですか?」
「は、はい」
何だこれ……。先を越されたというとおかしな意味になるけど、何があったんだろうか。
同じクラスにはリンの他に、一樹……。それから……。
休み時間まで待って、それから心を落ち着かせてから話しかけよう。
恐らくリンのことだから、令嬢の独自情報で事前に知っていた可能性がある。
「あ、あのさ、えっとミズハ。俺の名前のことなん――」
「小野瀬の名前のこと? 幹って知ってるけど。それと、ミズハはここじゃ呼ぶなよ? やっぱりそこはTPOをわきまえるべきだ。青ざめた顔でどうかしたのか? 雑魚小野瀬」
「小野瀬って……そんな風に呼んだことなんて一度も」
「忘れてるだけだろ? 気安く気兼ねなくの関係で行くって言ったのは、小野瀬だぞ? 忘れたのか?」
「そ、そうだったかも。わ、悪いな、はずみ」
おかしい……ミズハも俺のことを本名で呼んで来る。
口が悪いのはリアルでもゲームでも変わっていないが、さらに磨きがかっているなんて。
他に俺のことをイツキ呼びしていた女子は……。
ヒナは生徒会で一樹と仲がいいから除外だとして、後はみこさんとユウキだ。
みこさんはそもそも、リンの姉で一樹と出会う確率は高くないのだから、別に本名呼びしてもしなくてもいいか。
そうなると後は、ユウキになる。中性的な女子で、果たして攻略組のメンバーだったかも記憶に無い。
そうして休み時間になるたびに、俺は思い当たる女子を探し回った。
同じ教室にいても、そう簡単に女子の輪の中に入って行けるほどの高度なスキルは持ち合わせていないので、なるべく一人になるのを待ち続けていたら昼休みになってしまう。
さすがに昼を潰してまで本名呼びを呼びかけるとかは無いので、一人で学食に行くと向こうから近付いて来た。
「……キミ、もしかして、僕を探してるのかな?」
「ユ、ユウキ……か?」
「そう。僕はキミのユウキ。ハーレム空間の一員さ」
「ハーレム空間って……それは非現実的で――」
「違わないよ。そうだろ、幹」
ま、まただ。コイツも俺の名前で呼んで来る。いや、正しいことだけど。
何でこんなことになっているんだろうか。
いくら委員長でも、俺に近づいて来ていた女子全てを、把握していたわけでは無かったのに。
そう考えると寒気がする。
「うううぅっ……」
「もしかして具合悪い? 保健室に連れて行こうか」
「だ、大丈……」
「無理しちゃ駄目だよ。いいさ、幹の体はキミだけのものじゃないからね。さぁ、行こうか」
「はっ? 今なんて……」
「保健室でゆっくり聞かせてあげるよ。キミの秘密事をね……もちろん、今の行動は僕の独断だ」
「……くっぅ」
もしや寒気を通り越して、風邪でも引いてしまったのか。
思い当たるのは、リンの屋敷でのあれこれ。裸にされていたし、湯冷めしたせいもありそう。
それにしても本名で呼ばれるのが正しいことなのに、どうして寒気を覚える程の反応になるんだろうか。
そんなことを思いながら、猛烈な眠気とともに目を閉じていた。
「あははっ。幹は甘いね、本当に。女子の包囲網を甘く見てたよね。うん、僕が先に貰ってあげるよ。あんな攻略組……の女子たちよりも、ずっと見続けていた僕がいるよ……幹」
「……ん、んん……」
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