第35話 チート姉妹の谷間の狭間で?

「か、覚悟……? え、俺?」

「イツキさま、お下がりください! ここはわたくしが!」

「え、な、何を……!?」


 みこさんは、一体どこに隠し持っていたのかというくらいの、細剣を手にしている。

 まさか実戦向けじゃないよな。


「へぇ……? 本気なんだ、みこ……」

「ええ、わたくしは時間を十分に頂いた上で、イツキさまとの思い出を作ることが出来ました。それをリンさまは、破られた。その所業、許すわけには参りません!」

「じゃあ、私も出すけど?」

「……構いません」

「そう……それなら――」


 リンまで……。

 一体どういう恐ろしい武器を手にするつもりなんだ!?


 この部屋の空間はあまりに狭い。

 それなのに、みこさんとリンがこれから戦おうとしている。


 みこさんはゲームの中でも、決して負けることが無い最強の軍人だった。

 片やリンも、狂戦士としてパーティメンバーの誰よりも特攻していたが、こんな狭い所で始めるつもりなのか。


 こんな展開は望んでない。やめさせないと駄目だ。

 力も何も持たない俺は、何かを手にしようとするリンと、すでに武器を手にしたみこさんの前に突っ込む。


『わあああああああ!!』


 もはやなりふり構わず状態だ。

 前なんて途中までしか見ていない。後はどうにでもなれ。


「えっ?」

「イ、イツキさまっ!?」


 二人の困惑する声が聞こえる。

 俺は声のする方にタックルに近い形で、突っ込んでみた。


「「あぁぁっ!?」」


 ◇


 ううーん……随分と静かだ。

 音も無ければ、声も聞こえない。もしや俺は、あの世にでも逝ってしまったのだろうか。


「ぁっ……うぅっ――」

「はぁっ、はぁはぁ……こ、こんなこと」


 どうやらこの世らしく、リンとみこさんの荒々しい息遣いが、耳元で聞こえて来る。

 それも左右どちらもで、左からはリン。右からはみこさんの声だ。


 幸いにして両手は何事も無く動かせるようなので、手当たり次第に動かしてみる。

 手から伝わる感触は、どちらも真っ平で起伏があるようだ。


 それよりも顔の頬に当てられている感触はまるで、紅白饅頭のような柔らかさで満たされている。

 もしやこれはそのままの意味で、餅の中に突っ込んだ感じだろうか。


「イ、ツキく……ん、そ、そろそろ離れてもいいよ、ね?」

「イツキさまっ、ふぅぅ~これがお望みでしたら、初めからおっしゃってくださいませ……」


 二人ともまだ息が荒いようだが、苦しい姿勢で動きを止めてしまったのか。

 そうなるとまずは、目を開けて……。


『うわっっ!? え、えええ!!』

「バカッッ!! 離れろっ!」

「……ハーレム野郎は真でしたか。これは容認出来ませんね」


 俺の両手は見事に二人の背中にあり、身動きを封じてしまっていたらしい。

 そして俺の顔は、彼女たちの谷間に挟まった状態で固定していた。

 

 つまり、そういうことをお楽しみしたようだ。


「イツキくん。ハーレムは許さないからね? き、今日は家に帰してあげるけど、次は無いよ?」

「ソ、ソウダネ」

「イツキさま。わたくしは一筋主義にあります。ですので、此度の行為は許すことは出来ません。次、お会いした時までに、かつてのお姿に戻られていることを望みます。よろしいですね?」

「ラ、ラジャー」


 わざとでもなければ、ハーレムを作り出そうとしたわけでもない。

 いやいやまさか、そんな幸運な狭間になっているなんて。


 そんなこんなで、ようやく俺は自宅に帰されることになった。

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