第22話 中身を気にして罰が下る!?
「め、命令と言われても……それに、LORでそんなに命令した覚えは……」
「いいえ、イツキリーダーは、リンに厳しく命令をしてくれましたよ? それも記憶から抹消しちゃったんです? 妄想じゃなくてリアルを忘れられては困りますっ!」
「うっ……」
姉のミコがいるからなのか、いつもよりもわがまま娘になっている気がする。
その仕草もあざとさを惜しげも無く全面に出していて、身長のハンデを使い、斜め下からのお伺いポーズを得意技にしているようだ。
「……イツキさま、デパートはいかがでしょうか?」
「デ、デートで?」
「ええ。本来なら男性がエスコートして頂けると嬉しいのですが、今回に限りましては、お嬢様のお望みに近い形を取らせて頂ければと存じます」
「いや、助かるよ! ありがとう、ミコ」
「いえいえ、イツキさまの為を思えばこそ」
普通に考えれば、令嬢相手のデートに庶民の俺がエスコート出来るはずも無く、むしろ払ってもらうことしか出来ない。
しかし今回は突然のわがままによるものだ。
デートプランが思いつかなくても、リンとミコ……特にリンのご機嫌がよければ何も問題が無い。
不思議なのは、二人とも紙袋を手にしていることだ。
何が入っているのか俺からは見ることが出来ないが、着替えの服に違いないと思われる。
「そんなことより、リーダー! さっさと行きません? 送迎の車がいない以上、リーダーに付き合って歩いて行かなきゃなんですよ?」
「その通りです、イツキさま」
「デ、デパートまで徒歩で……?」
「他に何があるっていうんですか? でも、リンと手繋ぎしながらなんですから、嬉しいですよね?」
「いやぁ~まぁ~」
ミコの方を見てみると、彼女も照れながら嬉しそうにしている。
それはいいとして、何で送迎車を帰してしまったのかと言いたくなるくらいの、どんよりとした雲の塊が上空に広がっていて、決して近くないデパートに無事にたどり着けるのか不安でしょうがない。
そんな俺の予感は的中。
「嬉しいってことはポジティブなことなんです! ですので、はりきって歩きません?」
「同感です」
「そ、そうだね」
「それじゃあ、行っくぞ~!」
何やら言葉をくだき、何だか可愛くやる気を出すリンだったのだが――。
『ザアアアアアアァァ――!!』
よりにもよって、リンとミコが全く予期も準備もしていなかったような、局地的な豪雨が降って来た。
やる気を出したリンに呼応したかのような雨だ。
『ひゃぁぁぁっ……!? つ、冷たぁぁい!!』
『お嬢様っ!!』
デパートがある繁華街までは距離があり、とてもじゃないがそこまで走ってはいけない。
それもあって、急いで民家の軒下で雨をしのぐことに成功。
ずぶ濡れな三人のうち、俺だけは慣れたものだったので動じることが無かったのだが……。
「リーダー!! 何とかして欲しいです! 制服がヤバいんですってば!!」
「ええ? で、でも俺にはどうすることも……」
「イツキさま、わたくしもお願いします……このままでは執事服を傷めてしまいます」
そう言われても非常に困るんだけど……ついでに言うと、目のやり場にも困る。
何の解決策も無いままで、俺たちは豪雨を降らした雲が通り過ぎるのを待つしか無かった。
「もぉぉぉぉぉ!! どうしてこうなるの!?」
それが素なのかな? と本人だけが気付かない言葉遣いに、身近に感じる俺だった。
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