第21話 白と銀の競演と選択肢
リンとの放課後デートと言えば聞こえだけはいいが、俺にとっては選択肢の無い無限ループのような時間に過ぎない。
可愛ければいいとかそういうことじゃないのに、どうして今日はわざわざ俺に合わせようとしたのか。
「――ええっ!? あ、歩いて行くの?」
「そうですよ? 何かおかしいこと言ってますか? というか、イツキくんは大体いつも徒歩通学じゃないんですか?」
「そ、それはだって、令嬢とかじゃないんだし……家から学院まで、そんな大したことないわけだし」
「あーっ! 何かバカにしてません? わたしだって歩くんですよ? 歩けないわけじゃないんですからね!」
「そ、そうは言ってないです……」
「そんなに言うならいいです!! イツキくんは、そこがそもそも問題だって言いたいわけなんですから、今日からそうしますから!」
「何がどういう……」
怒らせるようなことを言った覚えは無い。
――にもかかわらず、リンはいつも迎えに来ている送迎車を追い返そうとしている。
「な、何もそこまで……」
どうやら別の思惑がリンの中に芽生えたらしく、車はあっさりと行ったものの、お付きのみこさんだけがこの場に残っていた。
「お久しぶりです。イツキさま。それとも、ミキさまとお呼びした方が?」
「呼びやすい方で大丈夫ですよ……みこさん」
「では、わたくしのことはミコとお呼びくださいませ」
「よ、呼び捨て……」
「ええ、お願い致します」
「ミ、ミコ」
「イツキさま」
何か気恥ずかしい現象が起きている。
リン付きの執事をやっているミコとは初対面のはずなのに、お互いを呼び合うことに何の不自然さも感じないのは、何故だろう。
「……二人の世界に入ることを認めた覚えはありません! リンのイツキくん……ううん、リーダーなんですよ? 姉に見惚れないで、わたしだけを見て下さい!!」
「ご、ごめん」
「選ぶのはリーダーにお任せしちゃいますから、今から準備してもらわないと怒りますからね」
「へっ? 選ぶ? 準備って何の……」
よくよく見たら、リンもミコもそれぞれ片手に紙袋を手にしていて、空いている手は俺を逃すまいと、がっちりと掴んでいた。
二人とも通学路付近で見かけない女子ということもあって、注目を集めまくっているが、ぼっちだった俺からすればいい迷惑である。
リンの服装は学院からの流れで来ているので制服、ミコは執事服のまま歩いているので、どこからどう見ても俺は雑用係としか見られていない。
「まずはどこへ行くんですか? リーダー」
「はっ? え、どこって……」
「デートなんですから、男の子が選んで連れて行ってくれるんですよね?」
「こ、ここまで来といて、俺!? 俺が選ぶの?」
「イツキさまの腕の見せ所ですね。わたくしも期待しております」
「ええええ!? そ、そんな……」
放課後デートも妹から逃れられるためだけだとばかり思っていたし、またリンの屋敷でVRをやると思っていたのに、どうして白と銀の美少女に付き合うことになったんだ。
VRはデート認定されていなかったのか、それとも今日からがデートの開幕ですか。
「リンはリーダーの言うことに逆らいませんから、命令して下さいね?」
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