ローンアニムズの二人組

 ランナーズストアにいきなり入って来た二人組は、チビの男とノッポの男だった。どちらも黒いスーツに黒いハット、それにサングラスという出で立ちだ。種族は二人ともヒューマンではない。こんな言い方はこの世界だと差別にあたるのかも分からないが、簡単に言うとチビのほうがブタ人間で、ノッポのほうはサメ人間という印象だった。

「テッサという女のファドラはいないか!?」

 ブタ男がもう一度叫んだ。

 できれば関わりたくないタイプの人だとすぐに分かった。

 物々しい雰囲気で、嫌な予感がぷんぷんする。

 だが、店内に人は少ない。

 テッサはすぐに見つかってしまった。

「なんだ、いるじゃねえか」

 ブタ男とサメ男が俺たちのいるテーブルまでやって来た。

「あなたたちは?」とテッサが訊ねる。

「ローンアニムズの者だ。これで分かるだろう?」とブタ男が言った。

「ローンアニムズ?」

「お前に金を貸している金融機関だ」と今度はサメ男が言った。

「ああ、そういえばそんな名前だったわね。それで、ローンアニムズが私に何の用?」

「何の用じゃねえぞ、返済を滞納しているだろうがゴルァ!」ブタ男が突然恫喝した。

「はあ?」だがテッサは怖がる様子もなく言う。「前にも言ったじゃない。魔王を討伐したら2倍にでも3倍にでもして返してあげるから、ちょっと待ってなさいよ」

「そんな戯言が通ると思っているのか?」とサメ男。「返済は毎月してもらう。そういう決まりだ」

「しつこいわね。払わないと言ったら払わないわよ」

「ほーう? どうやら痛い目を見ないと分からないようだな?」

「何よ、やる気?」

「金の回収に手段を選ばない。それが俺たちローンアニムズのやり方だ」

「あっそう。そっちから手を出すって言うのなら、正当防衛ってことで相手をしてあげてもいいわよ?」

「女の癖にいい度胸だぜ。だったら表に出な!」

「無関係の人は巻き込まない。これも俺たちローンアニムズのやり方だ」

「はいはい、分かったわよ。付いて行けばいいんでしょう?」

 テッサはブタ男とサメ男に連れられて、ランナーズストアの外へと向かった。

 と、思ったら振り向いた。

「何をしているの、タツルの来なさいよ」

「へ? 俺も?」

「当たり前じゃない。同じクランの仲間でしょう?」

 それを聞いた二人組が俺のことを睨んだ。

 関係のある人は巻き込まれる。

 どうやら俺は、逃れられないらしい。

「ひゃい……」

 情けない声を出して、俺は三人のあとに続いたのだった。

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