第29話 迫害

放課後になった。




総理は昇降口の外に立っていた。




携帯電話を握り締めて。




画面には「美稀」の文字。




いっこうに電話に出てくる気配がない。




総理は溜息を零して携帯電話をズボンのポケットにしまい込んだ。




諦めて、薄ぼんやりとした校舎内に入っていく。




と、昇降口を通過した廊下で担任の橋本に遭遇した。あらっと驚いた表情の橋本。




「あら横山君どうしたの?」




橋本はこの時間に昇降口でうろうろしていた様子の総理を見て驚いている。




「これから対策委員会です」




総理は答える。




橋本はやや険しい表情を見せる。




「ああ、ロスト・チャイルド現象対策委員会ね。今すごく大変らしいから。横山君みたいな真面目な子が行ってくれたら助かるわね」




ここで総理は引っかかっていたことを橋本にぶつける。




「そういえば今日、先生から渡井に何か電話ってしましたか?」




橋本は呆気にとられたような表情を見せた。




「え、それはどういうこと?」




「あんまり深い意味はないんですが。どうなのかなと」




橋本は訝し気な様子でいたが、




「うーん、そうね。朝、渡井さんのお母様から欠席の連絡があったからそれの対応をしただけよ」




「そんなに長話はしていないですよね?」




奇妙な事かもしれないが、総理は橋本に質問攻めをする。




「ええ、欠席についての話だけよ。ほんの2分くらいよ」




「……」




総理は考え込む素振りを見せる。




そして、ペコリと橋本に頭を下げた。




「わかりました。ありがとうございます」




総理はそそくさと退散した。




状況によっては美稀から松坂に直接欠席を伝えたのではなく、電話連絡を受けた橋本から松坂に話をしたのかもしれない。




総理の心が少し軽やかになった。




橋本は終始いまいち腑に落ちないような顔であった。




 しばらく静かな廊下を進むと、対策委員会の会場である視聴覚室の明かりが漏れているのが見えた。




 どうやら、まだ話し合いの続きがなされているようで、熱く議論しているような緊張感の漂う雰囲気が教室から漏れ出ていた。




 やや入りづらい印象だったが、総理はゆっくりと扉を開いた。




 室内には数名の学生がバラバラに座っており、中央の教壇には切れ長の目で栗色の長髪の美少女が立っていた。




生徒会長の伊東由寧だ。




その傍らには生徒会秘書の眼鏡の男子生徒五十嵐千尋が控えていた。




そして、生徒側の席では、1人の類人猿風の女子生徒が貧乏ゆすりをしながら不貞腐れるようにして突っ立っている。




「お前遅いぞ、早く座れ。次からもっと早く来い」




伊東が恐ろしい声色で総理に指示出しする。




既に入室していた大聖が振り返って手を振るので、総理はそそくさと大聖の隣の席へと座る。




その隣にはボサボサ頭の楠田もいた。




「今、ちょっと揉めてんだ」




大聖は小声で総理に伝える。




「ああ、あれが問題の生徒か」




総理は松坂や楠田から聞いた、問題の女子生徒を思い出した。




あの類人猿風の女子生徒が内申点目当ての菅原か。




おおよそ、威張り散らす伊東に対して菅原が反発したのが原因だろうか。




真面目に取り組んでいる女子生徒というのは、おそらく前方に座っている凛とした印象の黒髪の少女だろうか。




このグループの中で一際活力を感じる。




 教壇に両手を伸ばして突っ立っている伊東が口を開いた。




「で、話を戻す。お前は内申点のためにやってるんだったら、さっさと出ていけって話だ」




伊東の強気な声色が周囲に恐怖を与える。




伊東の後ろに控えている松坂もニコニコ笑ってはいるが、やや引きつった表情である。




そのほかの生徒も同様に緊張を隠せない様子だ。




いつも以上に背筋をピンと伸ばして座っている。




「何でですかあ?伊東会長だって内申点のために生徒会長やってるんですよねえ?校長先生や教頭先生とかにも媚び売ってえ。だったら、伊東会長の方こそ生徒会辞められた方がいいんじゃないですかあ?あっそうかあ。でもそろそろ任期ですよね」




菅原の不貞腐れた態度に対して、伊東のぎらついた目がさらに険しくなる。




ヒヤヒヤとした空気が一気に張り詰めてきた。




「馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。私はお前と違って場の空気を読めるんだよ。お前のせいで話し合いが進まねえんだよ。やる気がねえんならとっとと出ていけって言ってんだろ」




「はあ?うざあ。やる気はありますう」




菅原がぶつくさ言って聞かなかった。




伊東は不服そうな表情を浮かべた。




「だったらいちいち盾突いてくるんじゃねえよ。従えよ私らに。お前のやってることは足並みを乱してんだよ。そんなこともわからねえのか?」




「盾突いてませんー。足並み乱してませんー」




ピリピリとした空気は一向に緩和されることがなさそうだ。




「お前、後で担任と学年主任に報告しておくからな。いちいちくだらねえことで突っかかってきやがって。ああん?」




伊東がボードマーカーを床に叩きつけた。




「うっわ最低。パワハラー。こんな奴絶対上司にしたくないわーマジでえ」




菅原が明後日の方向に向かって叫ぶ。




癪に障ったのか、伊東は菅原の元へと歩み寄る。




さすがに及び腰になる菅原。




松坂と秘書の五十嵐が慌てて伊東を宥める。




が、2人の腕を振り払うと菅原をひと睨みした。




「てめえ勘違いしてねえか?てめえなんかパワハラする価値もねえんだよ。クビだよ。最初から出てけしか言ってねえだろ」




「はあ?うざあ」




菅原がぶつくさ言いながら、鞄を拾い上げた。




 そして、菅原は勢いよく扉を開け、扉が壊れんばかりに力強く閉めて出ていった。




 伊東はつんとした表情を崩さずに、教壇にゆっくりと戻ると再び向き直った。




松坂と五十嵐もせかせかと定位置に戻る。




「まあ、そういうことだ。他にも不埒な理由でこの委員会に参加している奴がいたら私は許さないからな。ちゃんと心して参加しろよ」




その言葉に総理は左足で軽く大聖の右足を蹴った。




大聖は伊東に見惚れている様子だった。




すっかり鼻の下を伸ばしている。




大聖は両頬をパチンと叩いて、伊東に向き直った。




真剣な表情に戻る大聖。




「それでは続ける。昨日の対策委員会で案を皆にいくつか挙げてもらったが、この中から3つのグループに分かれてそれぞれの対策を実施してもらいたい」




 伊東の言葉に、五十嵐がホワイトボードに文字を書き込んでいく。




書き込まれているのは、相談室設置、警備員配置、防犯ブザーの配布・携帯の3つだった。




総理は違和感を抱いた。




「これらの各項目について、グループを割り振り、対策活動を実行してもらう」




伊東の迫力ある声に、生徒たちは押され気味である。




本来、先程の菅原のような問題児を排除するのが最大の目的だろう。




しかし、今日は進行まで伊東が担当するようだ。




残った生徒たちも恐怖のあまり従わざるを得ないのが見て取れる。




緊張感は未だに教室内を支配していた。




「では、グループの振り分けについて実施させてもらう。今ここに居る者は計7人。基本的には1項目2人までとする。まずは各自挙手制でどれをやりたいのか決めるぞ。特に希望の無い者はこちらで勝手に決めさせてもらう。五十嵐、そう書いとけ」




「はい、会長」




五十嵐は活動日誌に黙々とペンを走らせる。




伊東の提案に一同力なくうなずく。




 結果、相談室設置を総理、湯浅。




警備員配置を楠田、井関。防犯ブザーの配布・携帯を大聖、片岡、津田が担当することとなった。




「お前たちにインセンティブを用意しよう」




伊東がにんまりと笑う。




「校長や教頭を唸らせるような成功に導いたグループについては、そういう風に通知表に書いてもらおうじゃないか。もちろん、やる気の見られない者は即刻クビを言い渡す。いいな。この対策委員会は実力至上主義だ。お前たちのがんばりに学園は掛かっているんだ。五十嵐、そう書いとけ」




「はい、会長」




伊東は周囲をぐるりと見渡す。




五十嵐は眼鏡をクイッと指で押し上げ、活動日誌にペンを走らせる。




 周囲の生徒たちの緊張感もいよいよピークに達してきた。




と、同時に伊東からインセンティブについて話が出るとは夢にも思っていなかったので、高揚感もあった。




「あ、それと途中で投げ出すような輩はいないよな。そんな中途半端な心の持ち主がいたら私に知らせろ。そんな奴は、消す」




総理は頭上に疑問符が湧き出てきた。




消す?




伊東は極道の関係者だろうか。




総理は身震いした。




これで途中での離脱はできなくなった。




今回だけで辞めようと思っていたのに、伊東に消されるのでは次回以降の参加もしなければならない。




伊東は満足そうに笑う。




「これで決まったな。じゃあ、各自の担当業務に取り掛かれ」




伊東は右手を周囲にかざすと、そそくさと視聴覚室を出ていった。










「お腹空きましたねー」




湯浅は総理にのんびりとつぶやいた。




グループごとに島を作り、作業方針の確認と松坂への報告を実施して今日はお開きになるとのことだった。




総理は湯浅とコンビを組むことに決まった。




総理が湯浅の隣に腰かけるや否や、そう話しかけられた。ここからは松坂の進行に切り替わり、教室内にはリラックスした雰囲気が流れ出す。




時計は既に午後6時30分を回っていた。午後7時での終了を言い渡されていた。




「あ、湯浅裕子ですー。よろしくですー」




随分とのんびりとした少女だ。




可愛らしい容姿ではある。




いつもニコニコしているタイプの少女だ。




しかし、どことなく人に心を読ませないような、とっつきにくい印象を受ける。




「横山総理だ」




総理は軽く会釈する。




「そしたら、相談室の設置ですねー」




湯浅はのんびりとした口調で言う。




「まずは相談場所の確保と、相談室開設のチラシ作成だな」




総理は白紙の上にペンを走らせる。




湯浅もほおと頷きながら、総理のメモを見入る。




「正直言って俺は広告デザインとかは一切才能がない。湯浅はできるか?」




「やってみますよそしたらー」




緩い返答をする湯浅。




「そしたらPCでの打ち込みが必要だから、ワークステーションでの作業が必要だな」




総理が考え込みながら、チラシのラフ画を何となく完成させた。




「こんな感じで作ってほしい」




出来上がったラフ画を湯浅に見せる。




湯浅は何となく理解したようで、ゆっくりとうなずいた。




「わかりましたー」




「そしたらこれを松坂に報告して終わりだ」




総理は立ち上がり、前方の席で待機している松坂の元へと足を運んだ。




と、警備員配置のグループである楠田と井関がいかんせんまとまっていなかった。




楠田は可愛らしい女性を前にして、顔を真っ赤にして俯いてしまっている。




力なくうなずくだけだ。




井関はどことなく苛立った様子で話し合いをリードしている。




 これはどうやら人選をミスしてしまったようだ。




気の弱い楠田と気の強い井関は混ぜるべきではなかったかもしれない。




逆に大聖、片岡、津田のグループは小気味よく物事が進んでいるようだった。




「おお総理、早いね」




松坂がにっこりと笑う。




総理は先程の会話の内容を松坂に伝える。




「わかった。それで明日から頼むよ」




松坂はあっさりと承諾した。




総理は気になっていたことを尋ねることにした。




「ところで松坂」




「なんだい?」




「この3つの実施項目を考えたのってお前か?」




「いや違うよ。昨日参加したメンバーが実施したい項目をいくつか書き出して、その中から実施したい項目を皆に投票してもらったんだ」




「ふーん」




総理は顎に手をやった。




「何かおかしいことでもあったかい?」




「うーん。下校時のスクールバス運行みたいな安全策が無いのが意外だなって思って」




「予算面じゃないの?」




「ああーまあそうか」




総理は合点がいかぬと言った表情で、自席に戻った。




湯浅は呑気に携帯を操作している。




総理が湯浅の隣に腰かけると、湯浅が口を開いた。




「横山先輩って彼女いるんですかー?」




いきなりの直球質問に口をあんぐりと開ける総理。




「何でそんなこと言わないといけない」




えーと腰をクネクネさせる湯浅。




「いいじゃないですかー。教えてくださいよー」




何となくこの湯浅という少女は、世間の感覚からはみ出した考え方を持っていそうな子だった。




どちらかというと物事の本質を見るタイプ。




総理自身がそうだからだ。




おそらく、それに勘付いた湯浅が、総理に興味を抱いて尋ねたのだろう。




 とはいっても普通の女子高生か。恋愛沙汰に興味が湧くのも当然と言える。




「いない」




総理は吐き捨てるように言う。




湯浅がにわかに色めき出す。




「そうなんですねー。横山先輩クール過ぎるからじゃないですかー?」




湯浅はさほど感情の入ってなさそうなトーンで返す。




この子はやはり何を考えているのかわからない子だな。総理は感じた。




「余計なお世話だ」




「じゃあじゃあ、好きな人とかいないんですかー?」




湯浅の問いかけに総理は顔を赤らめた。




「いません」




総理は顔を反らした。




湯浅はその様子を見てニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた。




「おおーこれは片思い中の人がいますねー」




意外と鋭いことに総理は驚いた。




「うるさい。もう終わったから今日は帰っていいぞ」




「えー私はまだ井関を待ってますから帰れませんよー」




湯浅が意地悪そうに笑う。




もう少し話をしたいといったところか。




手が空いた時間を作るとだいぶ面倒くさそうなタイプだ。




 と、ここで大聖が立ち上がって松坂の元へ向かう。




どうやら大聖のグループも話がまとまったようである。




間もなく帰ることができるだろう。




総理はホッと溜息をこぼす。




「おう、総理も一段落したか。そろそろ帰ろうぜ。随分遅くなっちまったぜ」




「頼む」




大聖がヒラヒラと手に持った紙を振った。




大聖は松坂と話し始めた。




「で、好きな人って同じクラスの人ですかー?」




湯浅がすかさず質問を繰り出す。




総理はもう無視した。




「ああ、これは図星ですねー。たぶん横山先輩は私みたいなうるさい奴が嫌いだと思うので、おとなしめの女の子らしい人なんじゃないかなあー」




「勝手に分析するな」




あほそうに見えて、意外と鋭い分析をしてくる。




どうやら、ここに参加している1年生は優秀そうである。




井関は見ての通りだし、津田も体育会系で根性がありそう。




片岡も仕事を黙々とこなしそうだし、湯浅も洞察力がある。




しかし、2年生がパッとしない。




問題児の菅原はもう戻ってこないにしても、楠田は終始おどおどしているし、大聖は注意してくれる人がいないと喋り続ける。




総理は溜息をついた。




俺がしっかりしなければ。




2年生は大したことが無いと1年生に嘗められてしまうかもしれない。




「ふふー横山先輩が意外と可愛いってことがわかって良かったですー」




さっそく嘗めてかかる湯浅。




これは先輩の威厳を見せつけて厳しく叱ってやろうかと思ったが、総理は伊東のやり方にはそぐわなかった。




「はいはい」




こういう輩は軽く流してやるのがちょうどいい。




しっかりと相手するとつけ上がるし、無視していると構ってほしい雰囲気を醸し出してくる。




「終わったぜー総理。そろそろ帰ろうか」




気が付くと大聖が総理の横で伸びをしていた。




「おお」




総理は気の抜けた返事をする。そして、鞄を持って立ち上がる。




「赤嶺大聖です。えっと湯浅さん?ぜひ一緒に帰らない?」




傍らでナンパする2年生の姿があった。




「はい、湯浅裕子って言いますー。ごめんなさいー井関を待っているのでー」




「そうか、じゃあまたの機会にぜひー」




大聖は笑顔で自席に戻り、鞄を拾い上げた。




総理も大聖を追う。




「片岡ちゃん一緒に帰ろうよー」




またしてもこの男は女子生徒に声掛けをする。




総理は苛立ちを覚えた。




「あ、今日は寄るところあるのですみません」




片岡はそそくさと教室を後にした。




「ちぇーみんなして付き合い悪いんだから」




大聖は溜息をついた。




2人して視聴覚室を後にして、すっかり静まり返った廊下を歩いていく。




「お前、いろんな奴に話しかけ過ぎだ」




総理は文句をつけた。




しかし、大聖に悪びれた様子はなかった。




「だってよお、男2人で帰ったってつまんねえじゃねえかよ」




大聖は嘆いた。




その気持ちもわからないでもないが。このままだと2年生はろくな奴がいないとレッテルを貼られる。




「2年生はろくな奴がいねえと思われるだろ」




総理は溜息をつく。




「まあそうかもしれないけど、俺はそんなことよりも、突然学校来なくなって会えないまま終わっちゃうと悲しいじゃんよ。せっかくの縁でこうして出会えたのによ」




大聖が珍しく感傷的な表情を見せた。




たまには良いことを言う。




「でもそれはなるべく可愛い女の子の方が良い」




大聖は拳を握り締めた。




好感度がやや下がった。




「相変わらずだなお前は」




総理ががっくりと肩を落とした。




昇降口を出て、とっぷりと日が暮れた校内を歩いていく。




部活動をしている生徒の姿もすでになく、校庭もひっそりしている。




「これから参加し続けないと会長に消されるんだぞ。少しは世間体も考えろ」




「いやあー伊東会長かっこよかったよなあ。あんだけビシッと言ってくれたから、あのへんてこりんな奴も出ていったしな」




大聖は鼻息を荒くした。




もうこいつは女の子のことしか頭にないようだ。










 菅原は苛立っていた。ここは夕刻の武蔵大宮駅の繁華街、南銀座通りである。




 伊東に怒声を浴びせられて退室したあの直後、菅原はその足で職員室に足を運んでいた。




教頭が在室していたので、教頭に悪態の限りをついた。




教頭に何度も宥められていたが、菅原はそれでも怒りを抑えることができなかった。




何度も何度もあの会長を停学にしろと直訴したが、当然聞き入れられることはなかった。




教育委員会の腰塚とも懇意があったが、殺人事件に巻き込まれてしまい、当然会うこともできない。




権力のある人によって会長を処分することは早々に諦め、菅原は大学生の彼氏に電話を掛けて愚痴を並べ続けた。




これから飲み会だと早々に電話を切られてしまった。




「マジかよ死ね。どいつもこいつも」




菅原は電話を地面に叩きつけた。




派手に画面にヒビが入る。




人混みからわっと声が上がったが、気にしない。




菅原は黙って携帯電話を拾い上げ、ポケットにしまい込んだ。




「どいつもこいつもマジで使えねえ」




 菅原の怒りは伊東と井関に向けられていた。




どうも美人に対しての僻みなのか、菅原は自分よりも美人に出しゃばられると喧嘩を売ってしまう悪い癖があった。




昔からそうだ。




男は美人にばかり優しい。




自分のような不美女にはちっとも優しくない。




「絶対復讐してやる。あいつら」




歯ぎしりをする菅原。




憤怒の表情に通行人がサーっと菅原の周囲だけ引いていく。




と、そこに1人だけ菅原に近づいていく影があった。




「あれ?あなたは?」




菅原がきょとんとした表情を浮かべた。




菅原はいつの間にか街の喧騒の中に飲み込まれてしまった。

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