盲目

かな

盲目

「ねえ、今日もいっしょに寝よ」


 リナリアはそういって私の手を引っ張ってきた。大学生なのに私と一緒じゃないと寝られないなんてかわいい子だ。だが、この状況だと仕方ない気もする。


 平均身長くらいの金髪の彼女はアメリカからの留学生だった。日本語が上手だ。そしてかわいい、私好みの顔をしている。そんな天使のような子は私の顔を見上げて今日も甘えてくるので当然快く受け入れた。


 ベッドに入ると彼女が聞いてくる。


「明日は人に会えるよね?」


 私はいつも通り、慰めるように「できればいいね」と答えた。



 どういうわけか、5月の半ば頃、突然私とリナリア以外の人がみな消えたようだ。さらに交通手段も消えた。車や自転車などがあれば移動に時間はかからないが、どうもそうはさせないらしい。


リナリアはもとの生活に戻りたいというので私たちは他に人がいないか探しながら生活している。


 彼女とは同じ大学の同じ学年の女同士ということで多少交流があったので行動を共にするのは問題なかった。むしろ一緒にいれてうれしい。


 普段は日中にひたすら西へ向かって歩きながらスーパーやコンビニから食料などを補給したり人がいそうな場所を探索したり、夜はその辺の家で過ごすというのを繰り返している。


 いままで他の人にあったこともなければ、いた痕跡も見たことない――いや、最近まではいたはずなのだ。


 自分たち以外にも人がいて、普通に生活していた。なのに忽然と消えたのだ。


 初夏を感じさせる暑さがいつまでも続いている。食料の心配をする必要がなさそうだ。


 

 ――ふと横を見ると彼女はすでに寝ている。


 母性をくすぐられるような寝顔の彼女を見守るように私も眠りについた。





 朝を迎えると、彼女はすでに起きていた。期待しているのだろう。


 荷物と身支度を整え、出発する。私は彼女の手をつないでゆっくりと歩き始めた。


 ただ西に向かって歩くだけのこの生活はいつまで続くのだろう。何も考えずに毎日同じことをし続け、騙すのはしたくない。


 しかし私はリナリアが悲しむところを見たくない。リナリアは自分たち以外にも人がいると信じている。いつか元の生活に戻れることを信じている。




 ――わずか数時間でまた戻ってきた。


 

 今度はなんて言おうか。



「瑠衣、人はいそう?」


 

 瑠衣は私の名。私はリナリアが好きで二人しかいない今のままがいい。でもリナリアは望まない。私はリナリアのいうことはなんだって聴く。だがそれは叶わないんだ。


 この町から抜け出すことはできない。リナリアが悲しむ顔を見たくない。


 私たちはこの町の中で一生歩き続けるしかない。




「人はいないように見える。ただ……あまり景観はよくないね」




















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