第8部 春代のケース 2014年2月下旬
春代は縁側で読書をしている。
しかし、数十分で集中力が途切れ、また頭にモヤモヤしたものを感じる。
たまたま売店ですれ違った戸叶英輔の姿態がちらつく。
あら、私なんて淫らなこと思ってるんでしょう……。
春代は2月の下旬の冬の終わりに1人黄昏ていた。
淳一さんにまた相談しようか?
なんだかんだで淳一さんを頼ってばかり……いっそ淳一さんが……私なんてことを失言だわ。
春代は肩をトントン叩かれ、ビクっと振り返る。
ベレー帽に黒のスーツ。淳一さんだ。春代の目から涙が溢れる。
「あれれどうして泣いてるの春ちゃん」
春代は体を震わせて泣きじゃくる。
「どうしたの?春ちゃん、取り乱して」
淳一は春代の両肩を押して落ち着かせる。
「春ちゃんいつもの君らしくないぞ」
「ごめんなさい、淳一さん、違うの、違うの……」
春代は勢いに任せ泣きまくった。
泣くことで体からモヤモヤしたものが晴れていく気がした。
自分の涙にこれだけ限界がないと初めて知った。
きりなく泣き続ける春代を見て淳一は彼女の幼少時代を思い出す。
「春ちゃんはそれほど泣き虫じゃなかったけど、泣き始めると止まらなかったね」
春代は目を赤くして涙を拭う。
淳一は春代の隣りに座り「春がやってきますね」と一言。
今日は陽がよく出ていてほの暖かい。
2021(R3)3/12(金)
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