絶望的にファンタジー

モリアミ

ゾンビ君のこと

 小学生の時、僕のクラスにゾンビがいた。

 昔の映画だと、フラフラ歩いて人を襲う、それがゾンビのステレオタイプだった。でも、ゾンビ君は人を襲ったりはしない、フラフラ歩きではあったけどね。

 実を言うと、僕はゾンビ君の名前を知らない。もしかしたら、もう誰も知らないのかも知れない。ゾンビ君が死んだのは、何十年も昔のことで、近くに親戚もいなかった。それに、自分のこともあんまり覚えてはいなかった。

 ゾンビ君は学校に住んでいて、服はみんなのお下がりだった。何も食べなかったし、夜も寝ないと言っていた。よく笑ったし、よく遊んだけど、足が遅くて鬼ごっこは苦手だった。

 ゾンビ君は進級しなかった。年はとらないし、忘れっぽすぎて、ずっと同じ勉強をしていた。ゾンビ君には友達がいっぱいいたけど、実は誰が誰だか分かっていなかったと思う。それでも、誰も気にしなかったし、ゾンビ君も気にしなかった。

 ゾンビ君は今も学校に居るのかな、夜は何しているのかな、誰もいない学校で。僕を覚えていなくても、僕達はずっと友達なんだ、僕が覚えている限り。

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