第12話 鍛冶屋

 ハーリーアーサーの討伐で、お金に猶予ができた。そして俺は、そのお金で新しい武器を購入することに決める。


「武器ってどんなのが良いんだ?」


 俺は単刀直入に、クリスに聞いた。

 クリスは得意げにこう話した。


「大抵は得意としている技やスキルに合わせて作ったりするのが基本だね」

「俺の場合はどうしたらいいんだ?」


 俺の特技は技やスキルのコピーだ。


「んー。サクトは凄いたくさんの数の技やスキルを持っているからなぁ」


 俺の使える技とスキルは、【ハイハイパー】、【ガードブロック】、【デス・バデット】、【ハーリー・ブラット】の4つ。今はこれだけだが、今後増えていく可能性だってある。特別得意というものはないが、一番威力があるのは【ハーリー・ブラット】で間違いないだろう。


「もしかしたら今後、魔術や魔法も使えるようになるかもしれないからねー」

「そういえばそんなのもあるらしいな」

「んー。中位生ではちょこちょこ魔術を使う人が出てくるんじゃないか?」


 それは期待できそう。なにせそれを受ければ俺の技ともなるからな。


「じゃあやっぱり今と同じ片手剣かな」

「そうなるよな……」

「まあ一応、鍛冶屋の人にも聞いてみるか」


 俺たちは、鍛冶屋に向かった。


 鍛冶屋の中は少し薄暗く、さまざまな剣や弓、盾などの武器がそろっていた。

 店の少し奥まで行くと、カウンターにおじさんが立っていた。


「技やスキルをたくさん持っている人におすすめの武器ってあるか?」

「どんな武器の技でも使えるってか?」

「そうだ」


 鍛冶屋のおじちゃんは腕を組んで少し悩んだ表情を見せた。


「やっぱり片手剣が一番いいかなぁ」

「んー。じゃあさっき言ったのに丁度いい片手剣はないか?」

「そうだな……うちは小さい剣はあまり扱ってないかなぁ」

「わかりました……」


 クリスは落ち込む素振りを見せた。


「あっ! そういえば!」


 鍛冶屋のおじちゃんは、店の脇からチラシのようなものを見せた。


「これは――」


 そこには、『下位生限定大会』の文字が書かれていた。


「これの優勝賞品が、オーディングブレードだぞ」


 オーディングブレードとは、かなり有名な小さい剣の事だ。素材を集めることが難しいこともあり、入手は困難。その剣の軽さ含め、扱いやすさに下位生~中位生ほどの間の人気は抜群に高い。上位生からは、軽すぎるという点で人気は劣るが、それでも一部の人からは安定の人気を保つ。


「お! サクト! これは出るしかないよ!」

「そうだな」


 俺はランクが爆速に上がった。それによって、この辺のランクの人たちの強さがいまいち理解できていない。下位生限定といっても、下位生は500000位程までいる。実力的に考えて、その辺の人たちが来るのは予想できる。


「ありがとう!」

「あいよー」


 俺たちは、鍛冶屋を出た後、詳細を確認しに喫軌本部前の掲示板にすぐさま向かった。


 条件は下位生であることのみ。優勝者の賞品として、オーディングブレードが手に入る。後はランクの移動は認められる。つまり、どちらも承諾すればランクを変動させてもいいという事だ。もちろん提示はする。だが今回はランク目的ではなく、賞品のオーディングブレードを目的とする。だからこちらが提示することもなければ、相手側からランク変動を挑まれたとしても、承諾しないだろう。


 大会の日は明後日の13時から。その前に事前申し込みを済ませる必要がある。参加することに関しては無料のようだ。


「じゃあ闘技場に行こうか」


 闘技場とは、以前三桁大会を行った場所だ。ランク含めて強さは圧倒的にこちらが低いにもかかわらず、同じ場所でやるらしい。こんな低ランクの争いなんて、本当に観客は埋まるのだろうか。


 闘技場に入ると、そこには受付のお姉さんが立っていた。


「はい。大会の参加ですね。では、こちらにランクと名前を明確にお願いします。ランクは念のため、パスカードを確認させてもらいます」


 渡された紙に俺は、ランク68091位、名前サクトと記入し、お姉さんに渡した。そして俺はパスカードをお姉さんに見せた。


「はい。間違いありませんね。それでは明後日、開始1時間前ほどにまたお越しください」


 パスカードを提示する必要はあったものの、ランクと名前だけで参加できるなんて少し適当すぎるとも思ったが、下位生の大会ならこれくらいでも無理ないだろう。


「よっし。じゃあ大会は明日なんだし、今日は早めに寝よう!」


 早めと言っても今の時刻は午後5時。寝るには早すぎる。


 クリスに誘導され、渋々家に帰ったはいいものの、まだ時刻は6時を回っていない。同室から個室に移ったばかりという事もあり、静かで孤独感が漂っていた。賑やかの方が好んでいるかと言われるとそうでもないが、一人よりはみんなと一緒にいたほうが良い。同室だったころを思い出しながら、この孤独を癒しつつ、暇をつぶしていた。



「……寝た……のか」


 俺はいつの間にか寝ていたらしい。時刻は7時を回り、大会までのタイムリミットも近くなってきた。

 俺は残りの時間を部屋で有意義に過ごし、大会のシュミレーションを頭の中で描いていた。


「お! サクト来たか!」


 まさに準備万端。絶好調。これなら優勝も狙えるだろう。シュミレーションもばっちりだ。


「それじゃあ会場に向かおうか」

「そうだなー」


 俺たちは闘技場に向かった。


 受付のお姉さんに一声を掛けると、待機場まで案内された。







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