3「魔法少女の事情」
桜井修一の質問に、直ぐに回答できない三人
「言えないなら別にいいんだけど、まあ俺の悪い病気だから……」
と言うと、春奈は
「誰かは、言えないんだけど、ある日、ステッキを渡されて」
麻衣も
「私も、ステッキだった。誰からかは、すいませんが言えません」
ちなみに、そのステッキは、魔法少女が持つ可愛らしいものだったらしい。
渡した人物は、言えないもののそれぞれ別人であったが
「アナタの自由に使いなさい」
と言ったと言う。なおステッキは二人の手に渡った途端、魔法陣が刻まれた石、
すなわち、願力の魔法石、そのものに戻ったと言う。ただ千代子は
「ウチは、親父の実家の物置に手紙付きで石を見つけたんや」
彼女は願力の魔法石の状態で置かれていたのを見つけたと言う。
余談であるが、現在彼女は、その実家で暮らしている。
しかし、最初から魔法少女に成りたかった訳じゃなくて、
「最初は、どうしようかな思っていて、その内、麻衣や千代子が、
同じ石を持ってるって知って、皆で集まってたのよ」
それが、彼女たちが14歳の夏休みである。
「私と麻衣は元々、魔法に詳しいから、
石が『願力の魔法石』だって知ってたわ」
「ウチは石が何なのか、全く分からへんかったけどな」
と千代子は恥ずかしそうに笑いながら言った。
ちなみに集まっていた場所は、町はずれにある広場で
その時、魔獣がゲートから現れ襲われて、身を守る為に力を使った。
そして春奈は、
「私は、魔法が得意だけど、正直、超科学に興味があって、」
その後、部長の方を見て
「実は、部長の、あのパワードスーツに興味があって……」
すると、部長が恥ずかしそうに、
「ありがとう……」
と言う。ただその憧れが影響したのか、魔法石の力がパワードスーツの形になった。
麻衣は、
「私は……先代の魔法少女『メルティー』に助けてもらった事があって……」
なおこのメルティ―も童話の世界を基にした魔法を使うので
その異名もフェイブルと同じく「物語の魔法少女」である。
「それ以来、憧れがあって、私の望む魔法少女の姿になりました」
ちなみに鉄仮面は、魔法少女にはなりたいが、
元々、引っ込み思案である為、
顔を出すのが恥ずかしいと言う彼女の想いが反映されたもの。
千代子は
「ウチは、昔っから忍者が好きでな、それで、こっちに引っ越すことになって、
山風学園に入ったんや」
山風学園は、忍術を教える学校でもある。
この忍術と言うのは、フィクションに出て来るような忍者の術で、
所謂、超技能である。そして彼女の忍者好きが反映されて、
忍者の姿になってしまったのである。
そして、魔法少女を望んだ麻衣とは違う二人も
変身的な物になっているが、これは魔法石に付いた癖、
これまで、魔法少女の力を生み出し続けた所為だと思われる。
それは、ともかく、力を得た三人は、魔獣を撃退した。
力を得た三人、春奈は
「私は、先代の魔法少女から魔法少女の力として、
渡されているから、だから、後を継ぐべきじゃないかって思って
だから、あの姿だけど魔法少女って名乗ってるの」
パワードスーツなのでメタリックな外観で魔法を使っているから
金属の魔法使い、メタルマギアと名乗った。
そして麻衣は、
「私も、春奈と同じ。力を得た以上、意志を次ぐべきだと思ったの」
物語の元にした魔法を使うので、フェイブルと名乗った。
なお二人は活動を始めたものの、去年は受験の為、
あまり活動が出来なかったという。
さて二人は、直ぐに活動を始めたが、千代子は、当時は普段は別の場所で、
暮らしていたのと、手紙はあったが、誰かから渡されたわけじゃないので、
使命感が薄く。特に何もしていなかった。
「でも、こっちに引っ越して、二人の活躍を見てなあ。
ウチも、何かせなあかんって気になったんや」
と言う訳で彼女も、活動を始めた。ちなみに鬼姫と言う名は
適当に決めた名前だと言う。
話を聞いた修一は、
(だから、最初は二人だけ一緒だったのか……)
と思った。そして春奈は、自虐的に、
「でも、結局のところ成り行きだよね」
「そうだね……」
「そうそう……」
とほかの二人も同意する。
確かに、三人とも、魔法少女になりたいとは思っていなくて
魔獣に襲われて、咄嗟に力を得たわけだから、
春奈の言う通り成り行きであり、覚悟とかない、
いわば半端なものであった。三人ともその事を気にしてるようだった。
そして修一は、
「俺のオタク的な視点で悪いけど……」
と前置きをしつつ
「物語の魔法少女って大抵が、成り行きだぞ。魔法少女に限らず
特撮ヒーローとか、ロボットアニメの主人公とか大抵は成り行きだ。
だから、気にする必要は無いけどな」
とフォローになっているかは不明であるか、彼なりのフォローを入れる。
しかし、春奈は、
「私も、オタクだから、そう言うのは知ってるけど……」
更に、千代子は、
「それって、作りもんの話やろ」
「でも、現実でも似たような事はあるだろ。
要はどう始まるかじゃなくて、どうあるかなんだよ。
実際、お前ら、中々のご活躍だって聞くぞ」
ここで、部長も
「そうそう、皆の活躍は素晴らしいし、立派だと思う」
と言いつつも自虐的に
「喧嘩に明け暮れてる。ヴィランな私が言うのもなんだけどさ……」
すると春奈が
「いや、部長は、他の、それこそ皿番とは違って、
面倒見のいい先輩だと思いますよ」
とフォローを入れる。
あの一件以降、他の部員も、お菊番長を皿番と呼ぶようになった。
そして、春奈のフォローに対し、部長は
「ありがとう……」
と静かに、それでいて嬉しそうに答えた。
ここで麻衣が、
「でも……あの二人はどうなのか……」
と気まずそうに目線をそらしながら言う。
「二人って、イクシードとロストルナの事か?」
「ええ……」
と言った後、ハッとなったように
「どこの誰かは言えませんよ!」
と声を上げたので、
「俺は、別に聞くつもりはないよ」
「私もよ」
と答える修一と部長。
その後、麻衣は、どこか安堵した様子で、話を始める。
「あの二人とは、特にロストルナさんとは、
最近まで面識がないくらいで」
ここで部長は、
「ロストルナは、貴女たちの中でも一番の古株よね」
当代の魔法少女の中で、最初にその名が知られた存在である。
「ええ、とにかく面識がありませんから、どういう理由で
魔法少女になったのか知りません。
だから成り行きで魔法少女になった私たちをどう思っているか……」
麻衣は、その事が気になるとの事。
ここで、千代子が
「まあ、イクシードの方は、幼馴染で面識あるけど、
まあ、昔から。いけ好かん奴で、なんで、魔法少女になったかは、
教えてくれんし、そもそも、何考えてるかわからん奴やで」
何を考えてるか、わからない奴と言えば、修一の周辺にいる
まあ長瀬メイの事だが。彼女は春奈たちと一緒にいる事が多いが、
秋人から、イクシードの活躍時期は聞いていて、違うのは確かである。
イクシードが、出現した時、彼女は組織に追われ修一の元にいたのだから。
ただ、最近修一は、メイとは違う。
何を考えてるかわからない少女と出会っていた。
この時、冗談のつもりで、その少女の名前を出した。
「イクシードって、創月瞳じゃないよな」
次の瞬間、
「「「!」」」
修一は、場が凍り付くのを感じた。どうやら図星だったようである。
その為、彼は物凄く気まずい感じがして、
「すまん、俺の言ったことは忘れてくれ……」
と言って、その場を繕ったものの、微妙な雰囲気は、中々拭えなかった。
そこで、話の話題を変えた
「ところで、あのエクスマキナって何者だ?」
ここで部長が、
「桜井君はまだ知らないのね」
この街に来たばかりと言う事もあって、修一は知らなかったが、
街じゃ知られてる人間らしい。
「偶に、街でロボットが暴れてる事あるでしょ」
「そう言えば……」
修一には思い当たる節があった。
妙に古臭いデザインのロボットが街中で、暴れていて
警察や冒険者らしき人達が、取り押さえると言うのを、
何度か見た事があった。
「アレを作っているのがエクスマキナって名乗る。
マッドサイエンティストなの。私も何度か戦ってる」
この人物は、自分の作ったロボの制作過程を撮影し、
更に、ロボが街で暴れる姿を撮影して、その動画をネットで配信している。
「何で、そんな事を?」
「自分の技術力自慢よ」
暗く自虐的に
「私と同じね……」
春奈は
「先輩とは全然違います。アイツは愉快犯ですから」
とフォローを入れる。なおエクスマキナは、動画投稿時のハンドル名でもある。
ちなみに、凄腕のハッカーでもあるので、投稿者の特定はできていない。
そしてエクスマキナは、犯罪者であるが、物語で出て来るような
魔法少女の宿敵と言う訳じゃ無かったらしい。
ところが、最近、春奈が暴れるロボと出くわし、
メタルマギアとなって倒して以来、目をつけられてしまい。
執拗に、メタルマギアを狙ってくると言う
ちなみに、謎のロボット軍団もエクスマキナの仕業と思われる。
「でも奴がパワードスーツで、直接攻撃して来たのは初めてです」
と言う春奈。部長も、
「確かに、ロボ一辺倒だった奴が、パワードスーツ作って来るのは初めてね」
と疑問を呈するが、春奈には思い当たる節があるようで、
「私が腹立ちまぎれに、弱虫って言ったからかもしれません」
相手はロボを使って、卑怯な事も堂々とするから、腹が立った春奈は、
卑怯者と言いたかったが、こういう連中には、誉め言葉になってしまうで、
卑怯な事をする事=弱いと言う考えから、おもわず「弱虫」と言ってしまった。
本人に面と向かってではなく、ロボットに向かってである。
「遠隔とは言え直接操作してるみたいですから、
ヤツに伝わった可能性が有ります」
「多分確実だと思うわ」
ここで修一が
「それでキレて、乗り込んできたわけか」
「卑怯者が誉め言葉になっても、弱虫は流石にプライドが許さないか」
と部長は言い、更に修一は、
(俺も、アイツを怒らせてたから、ヤバいかもな)
とそんな事を思っていた。
その後、修一と部長は、三人の事は改めて秘密にすることを約束し、
三人は、部長宅を後にした。修一も一緒に、出ていくはずだったが、
外に置きっぱなしになっている部長の荷物に気づいた。
軽く戦闘になっていた割には、奇跡的に荷物は無事であり、
「先に、帰っててくれ」
と修一は言って、彼はそれを持って、部長宅に戻ったので、
三人とは、別々に帰った。
そして帰り道で
(そう言えば、御神と夢沢は、よく用事とか言って居なくなる事があったけど、
あれって、魔法少女の活動があったからなんだな)
と、そんな事を思っていた。
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