第9話「5人の魔法少女」
1「魔法少女っぽくないけど、一応、魔法少女」
ブローカー連中が嗾けてきた魔獣軍団との一件の翌日
学校の掲示板には、学級新聞の一面は、
街中に現れたデモスゴードの事と、
それを倒した魔法少女の事が写真付きで載っていた。
新聞を見ている生徒たちの中に、修一の姿があって
「魔法少女か……」
と興味深そうにしていた。
5人の魔法少女。この街でいわゆるヒーロー活動している者たちの
一部である。そして、
「ほう魔法少女か、新聞に載るのは、怪獣の一件以来だな……」
声の主は、現視研部長こと、鋼のスケ番で、その登場に生徒たちはざわつくが、
修一は、
「どうも部長」
とごく普通に声を掛ける。
番長として恐れられている彼女に、この様に声を掛けられる人間は
現視研の部員と、真一くらいであろう。
「魔法少女の事をご存じなんですか?」
「有名だからな」
「五人と聞きましたが、三人しかいませんね?」
と修一が写真を指差しながら聞くと、
「あの三人は、よく一緒に、現れる」
ただし常に三人一緒と言うわけではないと言う。
なお最初の頃は、二人だけで、鬼姫が加わったのは三月くらいらしい。
「残り二人『巨人の魔法少女イクシード』は滅多に現れないし、
『孤高の魔法少女ロストルナ』は単独行動が多いらしいから、
5人が揃う事は、滅多に無い。最後に揃ったのは怪獣が現れた時だ」
ちなみに、その時は5人を含めた街の正義の味方達が、
集まって勝利はしたものの、ボロボロだった。
「その影響か、最近まで、魔法少女を含め、正義の味方達は、
姿を見せなかった。前に、ワイバーンが現れた時もな」
以前、修一も見た街中にワイバーンが出た一件、普通だったら、
魔法少女など、正義の味方達がやって来る出来事らしい。
修一が興味を抱いた事を察したのか部長は、
「気になるなら、アタシ、残り二人の画像持ってるけど、
送ろうか?」
修一は
「お願いします」
その画像を、メールで修一のパソコンに送ってもらった。
この後、お菊の殴り込みがあったので、詳しい話は聞けなかったが
後に修一は画像を見て、
(魔法少女じゃ無いな。イクシードは光の巨人だし、
ロストルナはバイク乗りだし、これじゃあ特撮ヒーローだよ)
と思うのであった。
後日、教室にて秋人に、「魔法少女」の詳しい話を聞く。
ここ最近、秋人は、修一に何かを言いたげにしていて、
修一も、その事が気になっていたが、今は魔法少女の事が優先だった。
「魔法少女を語るには、『願力の魔法石』の話をしなきゃいけない。
それはファンタテーラに存在した特別な魔法石なんだ」
その魔法石は、宝石のように美しく、更に加工され魔法陣が刻まれた状態で、
発見されたと言う。
「それは手にした者の望む力を具現化させると言われていてね
専用の魔法を生み出したり、武器や鎧、時には生物だって、
生み出すと言われている」
魔法石自身も持ち主の、願いに答え姿を変えると言う。
ただ、同じような願いが続くと癖が付くこともある。
「もしかしてその力で、生まれたのが魔法少女なのか?」
ここで、秋人は、スマホを取り出し、ある動画を再生させる。
その動画には、魔獣と戦うメタルマギアの姿が映っていた。
「これは僕が、偶然、撮った『鉄の魔法少女メタルマギア』の
映像なんだけど……」
メタルマギアの攻撃の瞬間に魔法陣が、浮かび上がる。
その部分で動画を一時停止した。
「この魔方陣は、『願力の魔法石』の力を行使した際に、
必ず現れる魔法陣なんだ」
この魔方陣こそが、魔法石に刻まれていた魔法陣でもある。
「『願力の魔法石』はその力を恐れられたけど、いかなる方法を持っても、
破壊できない。だから封印されたんだけど、
ゲート事件の際に、この世界に来たんだろうね」
ここまで話を聞いたところで、修一は、
「彼女たちが、『願力の魔法石』とかいう奴で力を得てるとしてだ。
どうして、魔法少女なんだ?一人を覗いて、どう見ても、魔法少女っぽくないぞ」
唯一魔法少女っぽい、フェイブルは、鉄仮面の所為でなんか怖い。
「最初の頃は、見るからに、魔法少女だったんだよ」
と言った後
「論より証拠、昼休みに図書室に行こうよ」
そんな訳で、修一は、昼休みに秋人と図書室に向かった。
図書室に着くと、秋人は、本棚から、この街に関する書籍を持ってきた。
そして、あるページを開き、
「ここだよ」
そこには、ヒラヒラな可愛らしい服を着て、手には、
これまた、可愛さあふれるデザインの杖を持った少女の写真があった。
もちろん少女の容貌も可愛かった。
そして、似たような恰好をした美少女たちの写真が、
その子を含め、五人分あった。
「この子達が初代の『5人の魔法少女』だよ」
「初代?」
「魔法少女達は、代替わりしてると思われるからね。
最初に、現れたのは、五十年くらい前。ゲート事件の直後の混乱期さ」
当時は、ゲートからやって来たもの達によって、街は混乱の極みにあり、
困っている人間は多かった。
そんな人々を助けようと奔走した人々がいたが、その中に、
魔法少女たちがいたのだ。
彼女たちは、一般的に使われている魔法とは異なる独自の魔法を
使い人々を助けていた。
更に本のページをめくると、更なる魔法少女達の写真が写っていた。
「混乱期が終結しても、代替わりしつつ魔法少女の活躍は続いた。
いつの時代も困ってる人はいるからね」
初代と、その後の魔法少女たちは異なる姿をしているが、
全員、力を行使する際に、同じ魔方陣が現れる。
それは、「願力の魔法石」の魔方陣である。
「恐らく、『願力の魔法石』が人から人に受け継がれて、
それを手にしたものが、新たな魔法少女になっていった」
ここで修一は
「ここに載っているのは、魔法少女だけど、でも今のアイツらは、全然違うよな」
「『願力の魔法石』は、使い手の望む力を具現化するから、
必ずしも、魔法少女の姿になるとは限らないんだよね」
実際、ファンタテーラで使われていたころは、
魔法少女のような姿になったものはいない。
「多分最初の、五人は魔法少女になりたいと、望んだからで、
受け継いだ人間達も、魔法少女なのは、その流れを汲んだんだと思うよ」
「けど今の奴らは、力は受け継いだが、一人を除いて、
魔法少女の力とか姿を望まなかったって事か」
「でも何人かは、魔法少女って名乗ってるし、やってる事も
これまで通りだから、役目は受け継いでるんだろうけど……」
と秋人は、言う。
ここで修一は
「これは、俺のオタク的な視点から、思うんだが、フィクションにおける
昨今の魔法少女は、昔のような、可愛らしさ、華やかさ、勧善懲悪とは、
かけ離れてるというかな……」
「それってどういう事?」
「ある作品は、魔法少女になるのに、理不尽にでかい代償が必要としたり、
またある作品は、魔法少女同士で殺し合いをしたり、
またある作品では、魔法少女自体が化け物のような扱いだったり、
これまで通りの可愛らしい外観とは裏腹に、陰惨な作品が多い」
「そうなんだ。そう言うのあんまり詳しくなくて……」
と言う秋人に対し、修一は、
「つまり昨今の、魔法少女作品の傾向が、影響を与えてるんじゃないかって事。
昔とは違って、魔法少女に負のイメージが付いて、
魔法少女と言う存在を忌避した結果なんじゃないかって、
それに唯一魔法少女っぽいフェイブルだって、なんか怖いしな」
と言った後、
「まあ、俺のオタク的な意見だけどな。実際はどうなんだか」
どこか自虐的に言う。すると秋人は
「僕はあまり詳しくから、どうこう言えないけどね。
でもさっきも言ったけど、やっている事はね。これまで通り、
人助けだから、その意志は確実に受け継いでいると思う」
と断言するように言うのだった。
修一は、そんな魔法少女たちと、かかわりを持つことになる。
それはとある日曜日の事。修一は、暇を持て余して散歩に出かけた。すると
「部長?」
「桜井君……」
ばったり、現視研の部長とあった。ただいつもと違って、
例のパワードスーツは着てなくて、その上、両手には紙袋があり
それを重そうに持っていた。
「そう言えば、今日は同人誌即売会でしたね」
以前部室で、そんな話をしていた事を思い出した。
紙袋の中身は、即売会で買った同人誌とグッズであった。
そして部長が、重そうに紙袋を持っていたので、放っておけず。
荷物を持つのを手伝った。
「ごめんね。桜井君」
「別にいいですよ。俺の病気ですから」
これは彼の「正義感」と言う病気から来るものである。
「病気って……」
「気にしないでください。好きでやってる事ですから」
ちなみに、今日、部長がパワードスーツを着ていないのは、
メンテナンス中と言う事もあるが、それ以前に同人イベントには、
あの格好で行かないと決めていた。
「せっかくのイベントに争いごとを持ち込みたくないから」
との事。
さて修一が荷物を持つ形で、坂を上る途中で、空の方から爆発音がした。
「なんだ!」
さら部長の家の当りに、何かが落下したようだった。
二人は、一度顔を会わせた後、急ぎ足で、坂を上った。
そして部長の家の直ぐ側で、倒れている者がいた。
「えっ!」
「まさか、メタルマギア……」
倒れていたのは、「5人の魔法少女」の一人、
「鉄の魔法少女メタルマギア」であった。
しかし驚くべきことは、この直後に起きた。
メタルマギアの体が光に包まれると、一人の少女に姿を変えた。
「御神!」
「御神さん!」
そこには、修一のクラスメイトにして、
同じ部に所属する御神春奈の姿があった。
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