第32話 キャンプ


夏休み前の学校。

試験も終わり、どこか気の抜けた雰囲気が漂っている。

放課後に雄介からキャンプの話があった。


「真尋、キャンプ場が決まった。JRとバスで1時間ちょっとだ。食料の買出しは現地のスーパー。泊まるのはコテージだな。夜にラインするから。その時詳細を発表する。まぁ、楽しみにしておけ」


雄介はご機嫌だ。

いい場所が見つかったのだろう。

 

 


その晩のライングループ。


本田「”夏だ川だ!思い出作りの大キャンプ大会in丹沢”の詳細が決まった。これから発表する」

江藤「タイトルなげーよ」

稲川「なにそのダサいタイトル」

松木「本田くんマジ受ける」

大津「テンション下がった」

本田「お前ら」

稲川「”同級生との蜜月”位のシンプルさがないと」

宮原「上に同じ」

小林「上に同じ」

前川「やーめーてぇぇぇ」

小島「前川くんがおかしくなった」

稲川「もとからおかしいと思うよ」

     :

     :

本田「そろそろ本題に入る。夏休み最初の土日。場所は丹沢。コテージを1棟借りました。BBQの道具はレンタル。食材は現地のスーパーで。コテージの隣に川があるので泳げる。キャンプ場には売店もあるので忘れ物あっても困らない。携帯使用可能。まだ新しいキャンプ場でキレイ。コテージに水洗トイレ完備。温泉もあり。コテージ内に風呂もある。どうだ最高だろ」

岡本「長文おつかれ」

安藤「長文すぎて読むのがつらい」

松木「簡単にまとめると?」

小林「キャンプに行くよ!じゃない?」

大津「理解」

小島「理解」

前川「虫いないの?」

本田「安心しろ。森の中だ」

前川「……」

宮原「大丈夫だよ?飛んできた虫は私が叩き落すから」

稲川「バドミントンのラケットもっていこうかな」

小林「殺虫剤を3本位持って行けば大丈夫」

本田「お前ら……」

     :

     :



「由香、キャンプ決まったな」


由香は俺のベッドで漫画を読んでいた。


「道具はレンタルだから水着もっていけばいいの?」

「水着なんてないよ」

「じゃあ買いに行かなきゃ」


面倒くさい。短パンで川に入っちゃえばよくないか?

 

「まーくんは、私を海に連れてってくれないの?」

「海とか何が潜んでいるか分からないから怖くね?怪物とかいて足を引っ張られるかもよ」

「漫画の見すぎ。休みの日に買いに行くからね」

「はーい」

 

用意するものないよな?



 

後日、由香に連れられて近所のショッピングモールで水着を買った。

南国風の青い水着だ。

これは家に帰って気がついたんだが、由香のやつペアの揃いの水着を買ってきやがった。家に帰って気がついた。

僕は会計時にいなかったので、店では全然気がつかなかった。

由香の水着は、すごくセクシーで可愛いんだけど、お揃いとか恥ずかしいよな。

買っちゃったものはしょうがないので着用はするけど。

  

「由香の水着すがたセクシーで好き。すごく興奮する。だからちょっとだけおっぱい触っていい?」


水着の上から触らせてもらった。

がっかりだよ!

やっぱり生がいい。あ、でも水着の生地越しのおっぱいはロマンがあると思います。





キャンプ当日。


朝8時に駅に集合。

現在の時刻は7時半。しかも今起きた。

やーばーいーぞー!

由香も大慌てで用意している。

15分以内に用意して出ないと間に合わない。

いや、奥の手だ!


「母さん、駅まで車で送って。俺も由香も寝坊した」

「あら、あんたは分かるけど、由香ちゃんが寝坊ってめずらしいわね。いいわよ。用意が終わったら言いなさい」


ラッキー、これで5分前までに用意をすれば何とかなるだろう。

 

「由香ーっ、母さんが車で送ってくれるって。55分に出れば間に合う」


どうして寝坊したのか?

昨晩は由香と寝たが、ずっと体を撫で回していたから。

由香が寝た振りしてるのが悪い。

調子にのって頬や唇にチュッチュとキスの嵐をふらせてやったからだ。

顔は真っ赤なのに目を開けないので、おっぱい触りながら夜中までキスをしてた。

それでも目を開けないので諦めた。

途中で僕が根負けしたのだ。

ちくしょう、次は絶対に勝つ。


 

駅には8時ジャストについた。

時計では8時5分だったが、僕の体内時計では8時ジャストだ。


「遅刻だよ!」


遙に怒られた。

大津さん、小島さん、江藤くんは、僕が由香と同じ車で来たことに驚いていた。そういえば僕らの関係知らないんだよな。

とりあえず家が隣で仲良しですと伝えておいた。

きっと誰かが説明してくれるだろう。


「んじゃ、行くぞ!」


出発のシーンを三脚立てて自分で動画撮影する雄介が可愛い。

誰かに頼めばいいのに。


全員集合したので出発だ。

僕は今日の為にコロコロのついている鞄を買った。

これが楽なんだわ。

みんなの後を突いて歩く。コロコロ。

駅のホームでもコロコロ。


もうこんだけ楽しんだから帰っていいよね。

虫が沢山いるキャンプ場なんて本当は行きたくないんだ。

むしろ逃げたい。

はぐれた振りして帰ろうかな。


由香が隣に並んできた。


「まーくん、何か考えてるの?本当は行きたくないの?」


よく分かったな、流石は幼馴染ってところか。


「虫キモイ。近くにいるとご飯食べれない」


これは本当だ。

僕は中学にあがる頃から虫をみると気持ち悪くなる体質になった。

蚊や蟻は平気だけど一般的に虫といわれる蝶やカブトムシ、蝉や蜂。

とにかく全部ダメ。

触ると吐き気をもよおす。

中学の頃、由香の前で吐いたこともある。その時は蝉だ。


「まだダメなの?」

「ダメ」

「気持ち悪くなっちゃう?私がちゃんと守ってあげるから頑張ろう?」


みんな楽しみにしてるんだから我慢しなきゃな。

 

「わかった。頑張る。できるだけ」


他の楽しみで虫を忘れるしかない。


「由香、昨日みたいにキスしていい?」

「キスとか知らないし。何のことか分からないし」


あれれー、顔赤くなってきたぞ。おかしなー。不思議だなー。

 

「体をなでなでしてたらあえぎ声出てたよ」

「出してません!あ」


やっぱり起きてたんだ。僕の最高の笑顔で由香に微笑む。

 

「とにかく行くよ。虫は何とかしてあげるから」


ひゃっはー、新鮮な乙女の照れ顔は最高だぜ!

誤魔化しても無駄だ!


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