第8話 シャチやばい


「始まるよ」


岡本くんの声でステージのプールをみると、何匹ものイルカが飛び出してきてプールを縦横無尽に泳ぎだした。

係りのお姉さんの笛の音でジャンプしたり、くす球を割ったり、キャッチボール?をしたり。

想像以上に頭がいいねイルカ。


「イルカすげーな」


雄介の呟きに僕も納得。マジ凄い。

ジャンプも5メーター位跳んでるし。


「宮原さんどう?イルカ凄くない?」

 

おお、雄介が由香に話しかけてる。

 

「そうですね、想像はしてましたが迫力が凄いですね」


雄介は由香と話できて嬉しそうだな。うんうん。

反対側の席に座っていた稲川さんは大声で喜んでいる。

小林さんもその声につられるように歓声を上げていた。

岡本くんも楽しそうだ。むろん僕も楽しい。

あっという間の30分。

イルカのショーは終わった。次はアザラシのショーが始まる。

15分の時間があったのでトイレ休憩。

僕と岡本くん以外はトイレに。残った僕らは席を取って待っていた。


「前川くん、俺のことは淳一って呼んで」

「OK淳一、僕も真尋で」

「今日は女の子とこれて最高だな。しかも女の子が学年可愛いランキングの1位、2位、3位だなんて」

「え、何それ」

「知らないの?うちの学校の可愛いランキング。トップ3が全部1-5組なんだよ。他のクラスの奴に奇跡の5組って言われてるんだぜ」

「へぇ、初めて聞いたよ。ちなみに順位は?」

「1位はぶっちぎりで宮原さん。2位が稲川さん、3位が僅差で小林さんだよ」

「小林さんのお胸はすごいよね。感動を覚える。稲川さんのナイ胸もいい。かすかなふくらみがたまらない」

「真尋エロいな」

「男なんかみんなそうでしょ」

 

淳一はいいやつだな。しばらくおっぱい談議に花をさかせた。

ちょうどアシカショーが始まるタイミングでみんなが帰ってきた。

 

「アシカもジャンプするの?」


稲川さんの問いに岡本くんが答えてくれた。


「アシカはボールや輪投げの遊びとか倒立してバランスとったりとかかな。イルカみたいな派手さはないと思うよ」


アシカがちまちまと芸を披露する。

イルカの後に見たせいか地味だ。

ボールを鼻にのせてバランスを取ったり、係員さんと踊ったりするが地味だ。

うん、とても地味だ。

15分ほどでアシカショーが終わった。


「次のシャチで野外ショーは終わりだよ。全部見たことになる」


岡本くんから説明があった。

今度は僕と岡本くんがトイレに。

由香と雄介が飲み物を買いに行き、小林さんと稲川さんが席取りだ。


トイレから戻り席に着く。シャチのショーは楽しいらしい。

時間ぎりぎりに雄介たちも戻ってきた。

由香からコーラを渡された。

うん、僕の好きな飲み物。

飲みきれないから半分は由香が飲むのは、いつもの僕たちのスタイル。

一口、二口と飲んで由香に渡した。


シャチのショーが始まった。

前列の人たちはみんな雨合羽を着ている。何故かな?って想像つくだろ。


「雄介は最前列に行かないの?」


「合羽ないからここで見てる」


残念そうな雄介。今から買いにも行けないからね。

シャチのショーはもの凄い迫力だ。

シャチの大きな体でジャンプする度に水がはねる。

バシャじゃなくてザブンだ。

あれは合羽無しだとパンツまで濡れるぞ。


「いいなー面白そう」


うん、元気っ子の稲川さんらしい発言だ。

シャチはお客さんに近い場所でバンバンとジャンプをする。

その度に客席に水がはねる。バケツをひっくり返したような量で。

親子連れの子供たちは大はしゃぎである。


「シャチやべーよ。マジでやばい。観客を殺しにきてるぜ」


雄介の呟きに、全く持ってその通りと頷く僕だった。

あれ、知らない女性とか大惨事だろ。

大惨事を見たい僕も確かにいるがな。



その後はウミガメを触ったり、ナマコと写真をとったりして遊んだ。

水族館を一周した頃にちょうどランチの時間になった。

僕たちは水族館を出て向かい側にあるファミレスに入る。


注文をしてイルカやシャチの話になった。

どっちが面白かったか?

結果は、

    シャチ:雄介、淳一、稲川さん

    イルカ:僕、由香、小林さん

 

見事に別れた。性格の違いかな。ある意味予想通りの別れ方だ。


「豪快かテクニックかの違いか」

 

岡本くん、その通りだぜ。

こりゃもう好みの問題だからな。どっちが正しいとかないぞ。

イルカ派に入れたが本当はどっでもいーよ。

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