魔装降臨

第66話 三体の敵

 暗い空間。何処までも続く天井と草も石ころですら一切ない平地。先が見えない程に広い。


 不気味なほどに何もない。しかし、その空間には石像が四つ。


 一つは、角が生えた悪魔の石像。大きさは二メートルほどで白衣を着ている。


 一つは、全長三メートルはある大きなゴーレム。


 一つは、百八十センチメートルほどのスケルトンの剣士の石像。骨に服を着せており一本の剣を背負っている。


 そして、その三つとは比べ物にならない程の大きな禍々しい存在。龍の様な二つの翼。


 異常なほどに伸びた爪。大きな角が一つあり全長15メートルはある。



 全く動かない石像。しかし、その内の三つにひびが入り始めた。少しづつ、しかしそれはドンドン大きくなり石像全体にひびが入ると石像の外装がはがれ中から生命が出てくる。


 ゴーレム、若々しい悪魔、スケルトンの剣士。それぞれが現状を確認する。頬を触ったり手をグーパーしたり……その後一息をついて三体は話し始めた。



「ようやく、石化の封印が解けたわね~。全く、星霊せいれいもやってくれるわね~」


 男の悪魔は女口調で話し始めた。首をぽきぽきと鳴らす


「全くだぜ。咄嗟に魔王様まおうさまとしてもこんなに長いとは思わなかったぜ」


 大きなゴーレムが肩をグルグル回し辺りに土塊をまき散らす。ゲラゲラと笑いお調子者の雰囲気が漂う。


「……魔王様の封印は解けてはいない……か……」


 スケルトンの剣士は僅かな言葉を紡ぎ自身よりはるかにデカい石像を眺めた。ここにある大きな石像の事を魔王と呼んでいる。


 その後、自身が背負ってる剣を抜き眺めた。シンプルなデザインのロングソード。剣の柄は黒で刀身は真っ白のように光り輝いている。


「まぁ、いい。それより剣は……特に変わりなしか……流石……魔剣まけんデルフィッド……」


 スケルトンの剣士は魔王の石像には既に興味はなく剣に夢中である。寡黙キャラのようだ……


「それにしても一体何年たったのかしら? 大分長い事石化状態が続いてたけど」

「さぁな。俺にはわからねぇぜ」

「……約千年……」

「あら、骨三郎ほねさぶろう流石ね。数えてるなんて」

魔の三銃士トライ・リベリオン最強の名は伊達じゃなぇな。おい」

「……そういうのはいらん……そんなことを言う暇があるなら《ミッシェル》ここから脱出する方法を考えろ」

「はいはい、照れ屋なのは相変わらずね。けど脱出って簡単に言うけどここはあの星霊が私を封印した結界のような場所なのよ。そう簡単に出られるとは思えないわ。下以外何処までも続く平地……」


 ミッシェルと言われた白衣を着た悪魔は辺りを見回す。そして足がつき唯一限界がある地面をジッと見る。その後、靴の先で地面をコンコンと叩く


「ここを壊したら行けるかしらん? ちょっとやってくれるかしら?」

「いいぜ、ただ地面が超固い場合、全力で殴りすぎると痛いからソコソコで殴るがな!!!!」

「相変わらずの図体のわりに意外と臆病なのね」



 ドーンと呼ばれたゴーレムが地面を殴る。そこそこと言っていたがかなり大きな音がドーンとなる。しかし、僅かなクレーターが出来るのみ。普通の地面だったらこれ以上の大穴が出来ていただろう


「オイオイ、かなり抑えたがこれは相当の硬さだぜ……の地面の何倍だこりゃ?」

「うーん。これは正攻法じゃ無理ね……ねぇ、私達って魔族の王である魔王様に仕える最高戦力のわけだけど……この中で魔王様に絶対の忠誠を誓っているって言う魔族は手を挙げて」

「……」

「……」


 ミッシェルが質問をするが彼を含め誰も手を上げることはない。その答えを分かっていたようにミッシェルが肩をすくめた


「まぁ、分かってたけど。そうでなきゃうあの時魔王ベルゼビュート様を盾になんかしてないわよね」

「俺は仕方なく仕えてただけだ」

「俺は……仕えていた意味はない。なんとなく……ただ……戦闘ができるからだ」

「だったらこの石像好きに使ってもいいわね」


 ミッシェルが魔王の石像に触れた



等価交換エーテルチェンジ…………………………」


 魔王の石像の下半身が形を変え一つの大きな黒い物質になった。かなりの長い時間を費やして……


 石像を物質に変えるまで一時間以上かかっていた。


「……どうする気だ?」

「これで大きな兵器でも作ってここを脱出しようと思ってねぇー」

「おおい、出来るのかよ?」

「多分出来るわ。封印前に戦艦を作ろうとか考えてたんだけど良い物質がなくてきなかったのよ。でも製作書は大体出来てたしね……後はこれを加工して……あ、上半身も物質に変えておきましょう。目覚めるとめんどくさそうだし」



 ミッシェルは魔王の上半身も一時間ほどで黒い物質に変えた。その後、自身の背負っていたバッグからありとあらゆる機材やら何やらを取り出す。中には纏められた戦艦の製作書も……明らかにバッグの容量以上の量がありあのバッグは普通の入れ物ではないようだ。



「あーあ、魔王様殺しちゃったよ。コイツ」

「あら、いいじゃない。魔王様が居ると色々めんどうごともあることだし」

「確かに……僅かにミスっただけで殺される同胞も居た……」

「そうそう、それより改造するわ……大体、丸々三日ほどは使うけどそれまで二人は今までなまった体でもほぐしていたら?」

「そうだな……俺の秘技である閃天覇王魔剣せんてんはおうまけんも大分なまっている……」

「……名前を変えた方が良いわよ。封印前から言ってるけど……」

「これでいい……」

「グアハハ、久しぶりの運動だぁぁぁ!!! こらららぁっぁぁあ!!!」



 ゴーレムのドーンが騒ぎだし、スケルトンの剣士である骨三郎は剣を振り。オカマの悪魔博士は物質を大急ぎで加工していく。


 この空間は一体何なのか……そしてここにいる異形の者達は……一体……



 この日は人間界の時間で八月十一日……



 運命の日……は八月十六日……とある女子高生達に世界の命運が託される。



 これはそのプロローグ




◆◆◆



 と言うのが『魔装少女~シークレットファイブ~』の魔族が攻めてくる前に小説に書いてあったプロローグだ。


 入学から特に何の変哲もないイベントを辿り、その後『魔族』による侵略が始まる。


 目的は世界征服と言う何とも言えない、何処にでもある理由である。しかし、攻めてくる三人の魔族であるが世界征服はあくまでついでと言った感じなのである。


 魔王ベルゼビュートを裏切っている三人の魔族だがそれぞれに好きな事や目的がある。それが一番で他はどうでもいいのだ。だが元魔王の配下であるから魔王の悲願である世界征服を一応しておくか……位に考えている


 そして、先ず手始めにこの俺達が住む現代に様子見で『怪人』を送り込んでくる。怪人とは魔王の最高戦力の一人魔の三銃士トライ・リベリオンである

世紀の大天才ウルトラスターと言う二つ名を持つオカマ博士であるミッシェルが作り出す化け物である。


 何故、いきなり現代に怪人を送り込むのかは理由が色々ある。そして、それを事前に察知して妖精族ようせいぞくも現代にやってくる。妖精族とは背中に羽が生えてる以外は余り現代の人間とは変わらない種族であり異界アルテミスからこちらの世界にやってくる。


 そして、その一人の妖精と偶然居合わせた銀堂コハクと、火原火蓮、黄川萌黄が出会う事で物語が八月十六日に始まる。


 俺はバッドエンドを回避したら後は傍観しようと考えていた。後は俺は何となくで過ごしても問題なんて無く彼女達が何とかしてくれる。バッドエンドを回避したことに満足し物事を深くまで考えずに適当に過ごしていた……


 だからあの時俺は銀堂コハクを辛い目にあわせかけた。本当ならあそこに彼女はいるはずがなく、元いじめっ子の同級生と会う事などあり得ない……しかし、俺がいたことで関わった事でそう言った事態が起こってしまった。


 現状に満足し、その先を考えようとせずにいた俺の軽率な行動のせいであり、俺が彼女達に関わった事で起きたイレギュラーでもある。バッドエンドを回避したしモブに戻ろう。でも何となく居心地もいいから彼女達とも接しよう……そんなことを心の何処かで考えていた自分を殴りたい。


 超美人でありいずれ世界の命運を背負う五人の内三人と関わりを持つなどどこにもいない。準レギュラーの様な物だ。そんな存在がいればイレギュラーも起こりうるのは想定すべきだった。



 これから起こりうることが俺の知識通りに行くとは限らない。ならばやることは決まっている。これから彼女達に始まる物語の”最適解”のサポート。そして彼女達をなるべく危険な目に遭わせない事を考えこれからは動く……


……幸い、もしかしたら俺には『魔力』があるかもしれないのだから。無くてもサポートはやるがな。


 さて、ここまででやることは決まった。そして最初にやることは……

 

 今日は八月十一日……先ずは……八月十六日に片海アオイを七色町に呼び初期から四人で活動させる。


 


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