第5話振り返らずに追うものよ

一ノ瀬は割りと朝は早い方だ。

別に早起きは得意ではないし外もまだ暗い。

布団で寝ていたい気分だ。

しかし、そうしてしまうて昨日の夜のように両親にあってしまうのが一ノ瀬にはあまり好きではなかった。

その為両親が起きる30分前くらいに家を出るのが一ノ瀬にとって日常になっていた。

朝食は学校の坂下にあるコンビニで済ましており、そのおかげか学校を遅刻しそうになったのは高校に入ってからは一度もない。

そんな感じに一ノ瀬は布団にひき戻そうとする睡魔を引き剥がし学校に行く用意を始めた。

制服に着替え、鞄を持ち自分の部屋を出た。

一ノ瀬の部屋は2階にあるためなるべく階段の尾とがたたないように下りていく。2階には自分の部屋以外に客室とトイレがありほとんど一ノ瀬の貸し切りのようになっている。

音をたてないように階段をおり、正面にある玄関に向かった。

玄関には一切靴は出しておらず、全て棚にいれてあり段によって使っている人が分けられている。

自分は3段目だ。

一ノ瀬はしゃがんでいつも学校に履いていく靴を履いて家をあとにした。

家から出るとこの時期は太陽と同じく位に見る桜が一ノ瀬を迎えいれた。

夜に見た無理やり入れた景色ではなく極自然に『春の通り道』は道を作っていた。

下には花びらの絨毯ができており、まだあまり踏まれていないからだろうかしっかりとしたピンク色を保ったらている。

毎年の事だがやっぱりこの季節の朝この道を通るのはいいな。

一ノ瀬はそんな風に考えながら歩いていると

『おはようございます!』

と後ろから誰かが走ってくるとともに声が聞こえてきた。

どこかで聞いた事がある声だなと思い、振り返ると自分より少し背が低いジャージの女性が走ってきていた。

走る度に下に敷かれた桜の花びらが舞っていく為女性の体には桜がところどころついていた。少女が走る度にツインテールが揺れていた。

そんな風に走ってきた女性は一ノ瀬の手前で止まり

『覚えてるっすか?』

と人差し指で自分の顔をさして聞いてきた。

確か昨日新入生に来ていた

『佐久間岬さんだよね。』


『当たりっす!』

と佐久間岬は一ノ瀬の手を強引に握りぶんぶんと上下に揺らした。

急に握ったきた為とっさに体に力を入れてしまったがそんなのお構い無しの力で一ノ瀬の体のコントロールを奪っていく。

『いや、岬さんそんな風に挨拶していたっけ?』

と明らかに昨日とは違う口調にアグレッシブな行動力に驚いていた。


『もう~。私の方が後輩なんだから岬って呼んでいいっす。後、昨日はみんな始めてだったから緊張していたっす。』

と言って手を前に引っ張らていく。


『この桜が終わった時点から競争っす!』

岬は昨日からは考えられない速さで一ノ瀬との距離を詰めていた。

もしかしたら始めて会う人は苦手だけど一回関係を持つと距離とかガン無視の接近をするのかも。

おとなしそう顔に反して行動力から高い岬に驚いていた。

岬が一ノ瀬を引っ張っているため岬の方が疲れているはずだがまったく息を切らしている様子はない。

昨日言っていた体力には自信あると言う言葉には嘘はないようだ。


『ちょっと・・。中学校とか何やっていたの?』

と引っ張られているだけなのに情けなく息を切らしている一ノ瀬は聞いた。

だって仕方がないじゃない。

岬の手が思ってより小さい手で握ってくるからドキドキして余計疲れてしまう。


『陸上っす!』

岬は楽しそうに答えてくる。

あーやっていそう。

『じゃは、はぁはぁ。なんでぇ、ダンジュブに入ったの?ぞのまま陸上の方がよがったんじゃ。』

と息を切らしながら走っていく。


一ノ瀬と岬は気がついていないがとっくに『春の通り道』は過ぎており

もうほとんど学校の近くまで走ってきていた。

一ノ瀬が息を切らしていた理由もただ単に長い距離を走らされているからであった。

『あの人を追いかけてきたからっす!』

『あの人ってだれさー!』


『上原先輩っす!』

副部長を追ってきた?何故?

と疑問を聞く前に学校についてしまった。

岬は握っていた手を上に挙げて

『ゴールっす!』

と言った。

本当はどこまで走るつもりだったかは知らないが学校まで走ってきてしまった。スマホで時間を確認するとまだ6時になったばかりであった。

てか、こいつ制服じゃないじゃん。


『てか岬。ジャージだけど大丈夫なん?』


『あ!?忘れていたっす!本当は自分の家の近くで切り上げようと思っていたのに。』

『先輩。悪いっすけど私家にもどります。』

と手を振りながら走ってきたみちを戻っていった。

嵐のような奴だったな。

嵐がさった後に残ったのは大量に余った時間と巨大な疲労感であった。

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