第47話 気配りのできるペット
ミツミとの関係が曖昧なまましばらくして、翌日が休日となった夜に、一緒にダンジョンへ行くと言いつつ行方不明だったオトが帰ってきた。
「どこ行ってたんだオト、心配……は無事だと思ってたからしてなかったけど、気にはなってたんだぞ」
オトのジェスチャーゲームが始まった。
「村の畑で新芽が出てたから、害虫害獣害鳥にやられないように守っていたと」
コクコクと頷くオト。
「昼は子供の相手と農業の手伝いをして、夜は畑の監視を? 飲食休憩睡眠不要だからっておめー……子供の相手が楽しいから問題ないって言ってもな……オト、俺はお前がそんなにも村の事を考えていて自分が強くなるよりも優先して働いてくれていた事は目茶苦茶嬉しい。けどな誰にだって命は1つしかないから、無理無茶無謀はしないで俺に相談してから実行してくれ、なっ?」
頷いたオトは窓から出ていった。
明日はオトの畑監視用巣箱を作ってやらないとな、そう思いながらダウンしていた恋人の隙間で眠りについた。
△△▽▽◁▷◁▷
ブラックマメンバーの休日の過ごし方は様々だ。
朝食後、ほぼ確定で海か河に釣りに行くのはアマルディア。
41階に出てくるモンスター、釣り具リズリーのドロップアイテムの釣り具ランダムを集めた釣り具一式と、居岩で作ったなんちゃってクーラーボックスの魔法の氷入りを持って出かける。
ボーッとするのが好きな彼女は釣果を求めず、カジキマグロでも狙ってるのかよと言わんばかりの、とても頑丈なパーツを集めた釣り具セットを持っていく。
1度通りがかりにヒットの瞬間を見たがあれは凄かった。
魚がかかった瞬間の合わせと同時に竿を全力で引き上げて、竜人と竜騎士のパワーを遺憾なく発揮して魚との熱い戦いをショートカット。
宙に舞う魚のエラ付近を包丁でスパッと切り尻尾にフックを突き刺して血抜き用の台に吊す。
そこまでしか見てないが、あれはショーになる見事な手際だった。
時々他のメンバーも穏やかな時間を過ごしたい場合、彼女についていって一緒に釣ったり見ているだけだったりと好きに過ごしている。
案外何か相談したり話しを聞いてもらっていたりするのかもしれない。
以前レオーナは朝から晩までエルネシアとアマルディアの2人と戦闘訓練をしていたのだが、2人の休日の過ごし方が決まると途端に手持ち無沙汰になっていた。
なので1日は村を回り村長や住人に話しを聞いたり見て手伝ったりと、交流を重ねている。
特に村で何が不足しているのか聞いてきてくれるので、俺が単身でのダンジョン周回で重点的に回る階を絞り込めて助かっている。
もっと酒を等のくだらない意見を自分の判断でシャットアウトしてくれているので、ストレスもなくなるし計画も立てやすい。
残りの1日は完全に休日としている。
アマルディアについて行ったり、48階のロックゴーレムがドロップする楽器の演奏や練習をしたり、35階の豚コマがドロップするチェス等の盤上遊戯を楽しんでいる。
始めてロックゴーレムのドロップアイテムを見た時は驚いた、まさかのロックンロールの方のロックゴーレムだったなんて、見た目も強度も岩なのに。
盤上遊戯では対戦相手を観察して指導するように打つので時々負けているが、本人は勝敗よりもコミュニケーションの一環として活用しているようで、相手を知るための手段の1つに過ぎないと言っていた。
最後の趣味は意外にも料理。
全員で料理を作って以降、料理は楽しいものと覚えたらしく、元公爵令嬢なので当時は良い物食べていたので舌も肥えていて、直ぐに地球の味を習得。
失敗する事もままあるが、スイーツばかり作っている。
なお失敗作を捨てずに、不味さに苦悩しながら食べている姿は面白いが、立ち止まって見ていると半分食べさせられるので、不用意に近寄れない危険性も合わせ持つ諸刃の見世物だ。
ネネとヴェルカの母性コンビは村の料理研究会に顔を出す事が多い。
先日のジャージみたいな事がない限り家での食事は全員で、個人だったり協力してだが料理を1〜2品作っている。
基本的にネネは不器用なエルネシアと組んで、ヴェルカはアマルディアを助手につけて料理を作っている。
代わり映えしないメニューでは日々の活力が得られないと、研究会では突飛なアイデアも議論に出すまでは許可されているとか。
なおレオーナはスイーツの研究が目的なので、研究会には所属せず時々ヒントを求めて顔を出す程度なんだとか。
今日はコロッケをヒントにして色んな物を揚げてみるらしい。
パン粉で包む揚げ方に新たな可能性を見出したようなので、カツや天ぷらなんて物もあると教えておいた。
天ぷら粉の作り方は知らなかったので、彼女達の研究が実り天ぷらが食べられる日が来る事を願っている。
もう1日は家で過ごす事が多く、レオーナや他のメンバーとも休みを合わせているらしい。
ネネは演奏できないので、その間は演奏を聞きながら手芸を。
盤上遊戯も家に居る全員で交代しながら楽しんでいる。
できたスイーツでティータイムと評論会。
ネネのジャージ作りの盛り上がりもあったし、織り機や裁断機も作るべきなのだろうか?
ゼオラは1日山へ行って精霊の気配を感じながら過ごしているので詳細は不明。
たまにアマルディアの釣りに同行する姿が見受けられる。
もう1日は家で仲間と和気あいあいとしている。
そしてギター系の演奏がかなり上手い。
休日のミツミの行方は知らない。
悉く男から逃げて女しか居ないか無人の場所で過ごしているのだろう。
たまにブラックマの女性陣と家での休日イベントを楽しんでいる。
エルネシアは2日共、だいたい俺についてくる。
常にベタベタするのではなく移動する時は少し後ろを歩き、止まっていると腕や体に抱きついてくる、実に良い距離感だ。
なんとなく、パパ大好きだけど迷惑かけないか心配しながら甘えている幼い娘を想像してしまった。
エルネシアは切れ長の目をした美少女なのだが、最近の態度がこれなので可愛い美少女になってきている。
今日はそんなエルネシアと共に村長宅へと来ていた。
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