第38話 料理しながら今後を考える

 錬金術師

 鑑定

 分解

 合成


 薬師

 抽出

 分離

 鑑定(物)


 左手2本でポーションの原料のクスリーフの葉を潰して、元々の腕では潰した葉を鍋で煮て、右手2本で石の瓶詰めを流れ作業でしていたら、しばらくしてから錬金術師と薬師が手に入った。

 そして錬金術師の鑑定には()表記がない、錬金術師はこの世の全てを知る職業だからだろうか?

 なんにせよ、これで現場での情報不足に悩む事も少なくなるだろう。


 抽出、分離、分解、合成を駆使したら魔力消費の増えた代わりにポーション作りの時間が1割を切った。

 作り方が変わり10倍早く作れるようになり使用する葉の量も10以上になったので、最終的な作業効率は100倍を越えた。

 人力で効率100倍強って、擬似的な機械の大量生産を実現してるよな。魔力不足で最終的には負けるんだけど、人力で機械と同じ作業量をこなせるようになるというのは流石ファンタジーと言わざるを得ない。


 できあがったポーションを倉庫に収納して訓練の場所を探す。

 東北西と見当たらなくて今日は南の海岸線で訓練をしていた、まだ一緒にダンジョン巡ってないから探索者でレオーナ達新人の方向がわからないんだよ。


 今日の訓練は膝上辺りの深さまで海に入り、先導するレオーナ合図で歩いたり走ったりして足腰を鍛えているようだ。

 後衛の魔法使いと僧侶等の訓練生は魔力切れまで魔法や術を使い、回復するまでは地面を転がり回って苦しんでいる。

 ダンジョンに辿り着くまでの数日、苦しむネネを横抱きにして歩いてた頃を思い出すな。


「前衛を選んだのに走る事ができない腑抜ふぬけは後衛に転職させるからな!」


 レオーナの激に走っている前衛希望の一部の訓練生は恐れおののき、遅れを取り戻そうと必死になって離れていた距離を詰めていった。

 レオーナから一定距離で走るアマルディアよりゴールが遅れたら、後衛転職魔力切れ地獄が待っているのだろう、後先考えないラストスパートに拍車がかかる。

 アマルディアが脱落者を出さないように最後だけ上手く加減して走っている姿に、毎日訓練生への手加減を続けてきたんだろう匠の技を感じた。


 訓練が休憩に入ったので差し入れをする。

 差し入れと言っても物だけじゃなく最初は情報なのだが。


「おおっシバ、休日にこんな場所まで来るとは、私を探してわざわざ会いに来てくれたのか?」

「レオーナの求める恋人らしい語らいじゃなないけど、お前を探してここまで来たのは確かだな」


「なんだ、冷たい事を言ってくれるのだな、そんな態度では少々寂しく思うぞ」

「そうか? 俺はお前が、どんな返しをされるのか楽しんで会話しているように思えるんだがな」


「ふふふっそうか、そなたの目には私の姿はそのように映るのか」

「それで本題なんだけどな、ポーション1万個ちょっとをさっき作り終えた。これでダンジョン研修ができるぞ」


「おおっ待ちかねていたぞ、村の職人からは村人の生活用の道具が優先と言われていて鉄の武具がなくてな、だが塩太陽程度なら木や石の物でも問題あるまい。予定通り明日からの研修にはシバも付き添って貰えるのか?」

「ドロップアイテムの在庫も少しだが余分があるから、付き添いも大丈夫だろう」


 打ち合わせの後はアマルディアも交えて談笑していたら、レモンの蜂蜜漬けを作ってあるので差し入れしたら喜ばれた。

 それを羨ましそうに見ている訓練生が居たので、全員分のコップをその場で作り、水と砂糖とレモン果汁を混ぜたなんちゃってスポドリを提供した。

 ほぼ全員が、ダンジョンでの冒険に向けてやる気を高めているようだった。


 △△▽▽◁▷◁▷


 家へと帰り研修で使う武具を作るのだが……全部木で良いか。

 1階は塩の塊が浮かんでるだけのモンスターだ、短時間だけ短距離のみを高速移動して回避や体当たりをしてくるが地球の成人男性程度の戦闘力しかないので、職業の力があれば訓練生1人でもギリギリの戦いは可能なはずだ。


 肉体じゃない物質モンスターなので、慣れない重さや当たり方をする鉄の剣よりも慣れた木剣の方が戦いやすいだろう。

 防具も部分鎧、兜、手足、盾を用意。

 しかし防具を見ると毎回思うんだが、なんで肋骨で守られてる胸を防具で守って裂けたら内蔵ドバーッの腹を守らないのだろう。

 前屈可能な大きさの腹防具を装備するだけでも、死亡率は変わると思うんだがな。

 だってマンガの月刊誌を腹に入れといたら、通り魔や痴情のもつれた異性にナイフや包丁で腹を刺されても死なないのは日本の常識なんだぜ?


 なので縦20センチ横50の板の裏に繊維の帯を合成して背中側で結ぶだけの簡単な作りだが、腹用の防具を用意した。

 一応体に合わせた曲線になるように加工もしておく、ガチで板だと動きの妨げになるからな。

 たかが木の板の防具1つだが、ワンクッションあるだけでも攻撃を受けた時のダメージは減少するだろう。


 防具も充実したので終わろうかと収納していて気付いたのだが、武器の種類が少なくないか?

 なので大剣、短剣、長槍、短槍、両手斧、片手斧、棍棒、杖等々をサクッと作り、だったら盾のサイズバリエーションも増やすか、なら形も増やしてみるかと熱中していたら気付けばそろそろ夕方の時間帯が近付いていた。

 全部倉庫にぶち込んで部屋を浄化して掃除完了。


 さて、夕食は何を作ろうか。

 パンはイースト菌だっけか、アレがないから発酵しないので硬く、作れはするけど美味くない。

 なのでパンは数える程しか食卓に出ない。

 だが固いパンは携帯食として利便性が高いので、弁当の主食として村で普及していたりする。


 そんな他所事よそごとを考えながら、おにぎりを握りカマドに乗せたミスリル焼き網に乗せて炭火で焼いていく。

 醤油がないから塩水を塗った物足りない焼きおにぎりになったが、何事にも妥協は必要だ。

 食材の量が足りない現在、大豆はあれどデータ取りのための失敗前提な味噌醤油作りとかできない。


 酒はダンジョンでドロップするので倉庫の中に在庫だけはある。

 毎日飲まれて二日酔いとかになられても困るから、成人している村人には俺の休日に少量提供している。

 コップ1杯とかケチな事は言わないが、1リットルも与えてはいない。


 居岩で作った箱の中に切った肉と玉葱や人参等の野菜とワインと塩を入れて蓋をして、熱操作で全面を均一に加熱して圧力鍋代わりにして短時間でスープを作り上げる。

 ていうかそろそろレシピも限界、男子中学生の料理のしなさを舐めたらいけんぜよ。

 これは早急に村人に料理研究家の発掘や料理研究会を発足して、日々の料理にバリエーションを増やしてもらわないと。

 料理人希望者を集めて俺の知る限りのレシピを教えて、後は個人やグループで研究してもらって完成次第随時発表してもらうとか?


 完成した料理を倉庫に収納して配膳のみにしたら、彼女達が帰ってくるまで今夜のプレイを考えて待っていよう。

 ふふふふふっ、今からたかぶるぜ。

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