第30話 寝顔
レオーナ達を倉庫に収納した翌日、朝から変身して走り続ける事8日で海岸線に到着した。
そこで思った、また雲まで届くロックタワーを作れば大陸の果まで東西を見渡せるかもしれない。
あまり高過ぎても上まで登らないだろうし、下が太くなって1階上がるだけでかなり走らなくちゃならなくなる。
なので14回の試行錯誤を経て雲のギリギリ下に先端が届く高さのロックタワーを作り出せた。
4度魔力切れを起こしたが高い場所から見る事でかなりの時間短縮になると思えばこそ、悶絶する苦しみも虚勢を張って耐えられた。
ロックタワーを8つ足で駆け登るが、前回とは身体能力も走る足の数も違うのでみるみるうちに高度を上げていく。
窓の外から見える景色は美しく、森の緑、海の青、大地のっ!
戻れ、今のはうちのダンジョンじゃ!?
「見つけたー!」
意識するより先に体が勝手に動いていた、ロックタワーの窓から飛び出していたのだ。
我に返るとすぐさまロックタワーを消して、手足を広げて滑空するように距離を稼ぐ。
ズシンと音を立てて地面が陥没するもあっさり着地。
地面のへこみから出ながら東に走り、なつかしの我が家を目指した。
それから丸1日かけて全力疾走を続け、ようやく俺は自分の家へと帰ってきた。
ロックウォールの防壁に飛び乗り大声を上げる。
「エルネシア、ネネ、俺だシバだ、帰ってきたぞー!」
飛び降りて変身を解除するとドアを開けて……
床には大量の埃が溜まっていて、人が住んでいるようには見えなかった。
「まだだ、まだ休憩所とダンジョンが残ってる」
再び変身して東に走る、走る、走る。
だが休憩所の床にも埃が積もっていて、置いてった道具等の荷物も大半が残されていた。
こんな時に悲しみも感じず嘆きもしない自分は、とても悲しい存在だなと思った。
それでも俺はダンジョンに入らなければならない。
本意ではないにせよ俺の所有物となった奴隷達に食事を出さなければならないから、食材を集めるためにダンジョンへと入っていく。
8つ足で走りながら、1番上の元々あった位置の腕、1腕の左右どちらかで殴り2腕3腕のどれかでドロップアイテムを掴み収納しながら次の階へと続くボス部屋に入る。
ドアを開ける、魔法陣からボスが出てくるまで、次の階へのドアが開くまでの3つのタイミングだけ走るのを止める。
最短距離で走り続けて次へ次へと上がり続ける。
11階 シールドタートル 亀。
12階
13階 空豆 浮かぶ豆。
14階 獅子唐 ライオン。
15階 ガチコイ 浮かぶ鯉。
16階 ドウドウ 馬。
初めての階は地図を埋めながらボス部屋を探し次の階へと進み、また地図を埋めながら走る。
今16階のボス部屋に到着した。
が、ドアが開かない……そうかっ、ラノベだと誰かが戦闘中だとドアが開かないなんてよくある設定じゃないか、なら今この中で戦ってるのはエルネシアとネネの2人だ!
ドアの隙間に6腕全ての爪を差し込もうと全力で押し込む。
「あああああああああああああああ!!」
徐々に、ほんの僅かずつだが隙間に爪が刺さりドアが押し負け開き始めている。
1本2本3本と、掌だけだが右腕が全てドアを押し退けて室内に侵入した。
ガッ!
上下の隙間に左腕も突き入れ全力で押し開いていく。
半歩、1歩、2歩。
とうとうドアに打ち勝ち室内へと押し通った。
「ただいま!」
『えっ?』
ボスと戦いながら入口の異常も気にしてたんだろう、2人で4体のモンスターの相手はキツかったのか、部屋の角に退避して同時に相手をする数を制限して戦っていた。
「オラッ、オラッ、オラッ!」
それぞれ一撃で3体のモンスターを倒すと、変身を解除して最後の1体へと飛びかかった。
「
「やっぱりシバさん!?」
「やっぱりシバ君!?」
最後のボスが消滅し出口が開く。
ドロップアイテムを拾うと2人の手に握らせる。
迎え入れられるのか罵りを受けるのかはわからない、だけどもう一度、2人の顔を見て言いたいんだ。
「ただいま、遅れてごめん。今、帰ったよ」
『お帰りなさい』
「遅かった罰です、もう2度と勝手に出ていかないと私達への愛に誓ってください」
「うん、うん」
「じゃあ私からの罰は、何かあっても必ず帰ってくることだよ」
「うん」
「まったくもう、勇者は泣かないんじゃなかったんですか」
「ダンジョンに入る時のエルちゃんと同じだよ、嬉しくて泣いてるんだと思うな」
「あっ、あれはちょっと……恥ずかしいので思い出させないでください」
「泣いた分だけ強くなれるんだから、シバ君もいっはい泣かなきゃね」
世界が変わってから今までで初めて、今日この日俺は泣き疲れるまで泣いた。
2人に促されてボス部屋から出てダンジョンワープで外に出てからも泣き続けていた。
それで休憩所を浄化した辺りで意識が怪しくなって。
俺の寝顔は安心しきった子供のようだったそうだ。
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