第11話 靴跡
地上に出ると森の見通しがよくなっていた。
木が根本から折れなんてまだ甘い、折れた根本まで凍りつき砕け散り、地面とほぼ平行付近までなくなっている。
折れた上部分も見当たらず直前までの森の姿を知らなければ、それこそ異世界にでも迷い込んだのかと錯覚してしまいそうだ。
「オリジナル魔法は変更効かねえし、怖くてもう使えねえよ!」
「まだ魔力が足りないから本来の性能から比べたらそよ風みたいなもんよ、でしたか?」
「はい、強過ぎて申し訳ありませんでした!」
「これは魔法の歴史が変わる魔法ですよ、私が魔法使いだったら狂喜乱舞して弟子入りを求めたでしょうね」
「釣り好きな仙人は偉大だったと言う事だ」
「なんの話ですか?」
「この魔法の元になった事をしてのけた、偉大な人物を褒め称えただけだよ」
「そうでしたか、元があったんですね」
呆然としていても変わらないので歩き出し、寒さで足が鈍るので倍の3日かけてモンスターの大群が居た場所まで到着した。
そこには動くもの以前に何もなかった。
モンスターは死ぬと消滅するので死体がないのは当然なのだが、ゲームみたいなドロップアイテムがある。
落とす確率は100パーセントではなくモンスターの種類で変動するらしい。
それでもあれだけの大群がドロップゼロというのは考えにくい、つまり……
「ドロップアイテム、全部風で吹き飛んだんですね」
「ごめんなさい、本当やり過ぎました」
おそらく風圧に押し潰されて即死したモンスター達はアイテムをドロップはしたものの、そのアイテムは後続の風で吹き飛ばされたと考えるのが自然だろう。
人工の風だけど自然だろう。
はい、すいません。
幸い青汁と蜂の巣の中身は泣きたくなるほど沢山あるので、食料には困ってない。
味や見た目は度外視するけどな。
エルネシアに呆れられながら南下していく。
怯えられなくてよかった。
それだけ俺が危害を加えないと信頼してくれてるのだろう、無知を逆手に色々教え込んでるけど。
今後ともその信頼を裏切らないように努力していこう。
そしていつか、心だけでなく体まで俺にメロメロにしてやるぜ!!
気温の高い地域なせいか、1泊すれば凍った地面も溶けて元に戻っていた。
それから15日かけて川を発見し、30日かけて海へと辿り着いた。
そういえばもう、エルネシアは15歳になってるんじゃないか?
ふとそんな考えが頭を
△△▽▽◁▷◁▷
「はははははっ、海だ、魚だ、塩だー!!」
「これでようやく味のついた物が食べられるんですね」
「応、早速塩作るぞ、居岩!」
海面まで近い剥き出しの岩盤海岸だったので、海中に巨大な浴槽を作り海面まで縁を伸ばしていった。
陸にも同じ巨大な浴槽を作るが、こっちはそう高くしない、1メートルもないくらいだ。
海中の浴槽に魔力を伸ばして、液体操作で陸の浴槽へと海水を注ぐ。
陸の浴槽へは熱操作を使い注水で下がる温度を考慮して加熱していき、注水量と同じだけ蒸発するようにした。
ここでも液体操作は有効で、一気に膨張しないように押える事で水蒸気爆発? あれを防いでいた。
結果、かなりの量の塩と海の浴槽に残った魚を手に入れられた。
鑑定(物)では生物に効果がないのか調べられなかった、植物は調べられたのにな。
仕方がないから全部殺してから鑑定した。
死体は物扱いになったのか鑑定可能だった。
食用と非食用に分けて倉庫に収納しておく。
熱操作で作った魚の塩焼きを食べて泣いた。
「エルネシア先に食べな、こっちももうちょっとで熱が通るから気にしなくていいぞ」
「ありがとうございます、はぐっ、ムグムグ……んんんー、美味しい!」
魚を食べながら魔力の回復を待って、塩と魚を集めてまた魚を食べてと、海岸線を東に移動しながら大量に収納ながら進んでいった。
あと、非食用の魚は海に還した。
魚の身以外も倉庫から取り出して海に還した。
倉庫には数トンの魚の身だけが残っていた。
そんな生活をしなから結構な日数を歩いた。
ニブルヘイムの被害もかつての記憶になり危機感がなくなった頃。
「エルネシア、これ見てみ」
地面にしゃがみ込んだ俺の横からエルネシアも地面を覗き込む。
「これは、靴跡? 人間の足跡ですか!?」
「多分ね。靴を作れるだけの技術を持つ人間が海まで来た痕跡がある、つまり塩や魚を持って帰ったんだろう」
「その村か町には行くんですよね?」
「当然だ。だけど表面上は愛想よくしといて、警戒だけは怠るなよ」
「えっと、はい。でも理由を教えてくれませんか?」
1度頷いてから話しを続ける。
「いちいち村か町なんて言ってたら面倒なんで村と仮定してよう。その村では女は男の物で誰であろうと喜んで体を差し出して抱かれなければならない。男は女の奴隷も同然で一生働き続けて奉仕する事が史上の喜び。村長の言葉は神の言葉も同然、だから村人は村長を敬い崇め奉り全ての言葉に従わなければならない等々。悪い方向に考えたらキリがないからな、全裸で放り出されたのが俺達2人だけかもしれない。村人は生活に困ってないかもしれない。だから村に住みますかと聞かれても即答せず、愛想よく警戒をだ」
「はい、わかりました。それにしても、よくそこまで思いつきますね」
「ラノベの力をなめるなよ! だよ」
「よくわかりませんが、シバさんが変な言葉を言った時は大体元の生活の知識だって事は理解してます」
「ははは、これが愛の力か」
「えっと、あのその……はい、愛してます」
「あうっ……俺も愛してます……」
目茶苦茶恥ずかしくて、しばらく目が合わせられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。