第10話 オリジナル魔法4
昨日あのまま寝てしまって、先に起きたエルネシアさんがミルク絞りを始められまして、満腹になるまで堪能されたようです。
こちらも十分に堪能させていただきました。
青汁干し肉の食事を終えて装備を身に着けると、出していた魔法を消してから出発する。
俺が先頭でエルネシアが
なお、中衛は居ない。
△△▽▽◁▷◁▷
夜と朝に満腹になったり満足したりする関係になって数日。
「なあエルネシア、蜂蜜あるかもしれねえぞ?」
「どういう事ですか?」
「ほらあそこ、足に花粉をつけた蜂が飛んでる」
「そうなんですか? ちょっと見えませんね」
「あー、俺の職業能力かもしれんな、この視力の高さは」
「なるほど、それで蜂蜜、取るんですか?」
いやそんな、キランッキランさせた目で見られたら、取らないとか言えねえよ。
「取れたらいいなとは思うけどな、モンスターなら花粉集めなんてしないだろうし。けど巣の規模とか花粉を集め始めたタイミングとかで蜜があるか、あっても量が少ないとかがあるから」
「そっかー、じゃああんまり期待できないんですね」
「取れたらラッキー程度の期待でいいと思うぞ」
「そうします」
△△▽▽◁▷◁▷
「これは、逆に諦めるしかなさそうですね」
エルネシア視線の先には一軒家よりも巨大な蜂の巣が、複数の木を柱に使って存在していた。
もしかしたら地中にも見えていない巣があるかもしれないので、襲ってくる蜂の数は下手をしたら万を超えるだろう。
「いや取る」
「取んるですか!?」
「蜂は酒に漬けれはよかったはずだし、幼虫は肉の代わりになるし、蜂蜜なんて風呂の何倍も取れるだろうな。それに女王蜂を確保できたら新たな女王蜂が生まれてと、何代にも渡って蜂蜜が得られるようになるぞ」
「私が間違ってました、全力でお手伝いします、必ず蜂蜜を確保しましょう!」
「んじゃ、もっと離れて夜まで待とう」
「はい」
深夜。
風呂と満腹ミルクとビクンビクン祭りの効果でエルネシアは寝ている。
そして蜂も巣に帰って寝ている時間だ。
隠密(小)を使って慎重に蜂の巣へと近付いていく。
そしてそっと巣に触れて倉庫に収納して蜂の巣確保作戦は終了した。
実に鮮やかな手並みだったと言えよう。
これならヘビとかまるまるななとかを名乗っても……エルネシアに通じないからいいか。
居岩に帰ってもう1番裸になってからエルネシアを抱きしめて眠った。
△△▽▽◁▷◁▷
「昨日はすみませんでした、私起きていられなくって」
朝の日課で満腹になったエルネシアは着替えをしながら謝罪してきた。
眼福だし朝晩満足させてくれているから許す!!
「気にすんな、ひょいと行って倉庫に収納しただけだ。倉庫の中で女王蜂も生きてるから、定住できたら離してやろう」
「はい」
木のスプーンに1杯、倉庫から出した蜂蜜を満たしてエルネシアの口に運んでやった。
「んんんー、甘ーい……美味しいー」
「それは重畳」
蜂蜜は浄化してから食べさせたから病気の心配もないしな。
装備も終わったし家と風呂の残り湯を消して、トイレの穴を埋めてから出発。
海は、森の出口は、一体どれだけ先にあるのやら。
魔法や僧侶系の術や職人系の能力のおかげで旅は順風満帆だし、探知系もあるから危険も早急に察知できるし。ホント総職系男子万歳だわ。
この日から移動中におしゃべりする心の余裕が生まれた。
以降新たな職業を得る事も、モンスターを倒す事も、誰かに出会う事もなく。
途中干し肉が尽きて俺は青汁だけになったりもしたけど、世界が変化したのか異世界にやってきたのかしてから大体40日。
俺達2人は、とうとう森を抜け……
「エルネシアさん、なんであんなにモンスターの大群が森の外を徘徊してるんでしょうけねぇー? 何かご意見は?」
「多分ですけど、どこかのダンジョンから一斉に溢れ出してきたんだと思います。手付かずになったダンジョンは命のエネルギーを奪うためにモンスターを、って話しは覚えていますか?」
「ああ、ダンジョンから出して徘徊させて人間の死体を持ち帰ってダンジョンに吸収させるんだったな」
「はい、元々世界がこうなる前から手付かずだったダンジョンが遠くない位置にあるとすれば、この状況に一応の説明はつきます」
「なるほど、なら一旦下がるぞ。超遠距離からじゃないと危なくて使えないオリジナル魔法があるからな、今回はそれを使ってみる」
「なんでそんな危ない魔法を思いついたんでしょうかね」
「日本のサブカルチャーを見て育ってきた、坊やだからさ」
「どう考えても立派な雄なんですけどね」
視線が下がってますよエルネシアさん。
△△▽▽◁▷◁▷
ダウンバースト。
積乱雲から降り注ぐ超高速の風。
だが俺のオリジナル魔法はこれの比じゃないくらいに凄い。
同じく超高速で降り注ぐ風なのだが、その始発点が重要だった。
中層圏。
大気の中で最も冷たい空気を保持するこの空気層は平均気温マイナス92度。
平均なので最も冷たい空気も保持していたりする、死の空気層なのだ。
俺の魔法はこの極寒の空気を風の筒を通して運び、温度を下げる事なく地表へと届ける。
敵は風の威力に押し潰され冷凍され、吹き続ける風により跡形もなく散っていくのだ。
欠点その1 魔力をバカ食いする事。
今の魔力量じゃ着弾? 風が攻撃開始してから2秒で魔力がゼロになる。
魔力回復大があっても魔力ゼロによる体調不良はいかんともし難い。
どれだけ慣れていても辛いものは辛い。
その2 近くで使うと自滅する。
目の前に数十倍の台風が落ちてくる。
そして凍りつかされ吹き飛ばされる。
相手は死ぬ、俺も近くに居れば死ぬ!
その3 細かな制御が不可能。
人間にはどうしょうもない天災を攻撃として扱うので、どうしてもその規模が大き過ぎて把握できずに詳細なコントロールができなくなってしまう。
その4 地下やダンジョン内では使えない。
直接空に影響可能な地上でしか使えない。
どうしてこんな扱い難い魔法を作ったのかと聞かれても……
エルネシアに凄いとこ見せたかったんだよ!!
結局1日半かけて来た道を戻り、臆病と言えるほどに距離を取った。
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地中を始点にロックタワーを使い大穴を空けて、そこに居岩で地下家屋を作る。
モンスターの大群の居た場所は探索で覚えているので、その上空に向かって全魔力を放つ。
壁と穴の隙間から居岩に入ると予め用意下あったドア石版をはめ込む。
「ふぅー……終わった」
「お疲れ様でした、お水飲みます?」
「ああ、もらうよ、ありがとう」
浴槽と同じように部屋の隅に水瓶……水箱? を作って水を溜めてある。
今回使った風属性のオリジナル魔法ニブルヘイムにより、水を作る魔力すらなくなるのがわかっていたからだ。
元中2としてはコキュートスは川だし、バハムートは魚だと声を大にして言いたい。
なので氷の世界としてはニブルヘイムを押したい。
しばらくして屋根の上を、風の爆音が通り過ぎていった。
あれだけ離れたのにも関わらずあの爆音か、地下に避難して正解だったな。
もう少し休憩して魔力が回復したら、出発しようか。
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