第8話 オリジナル魔法2
光の魔法には神聖な力が宿ると言われているが、異世界の教会からは神の力は我等神官のみに貸されていると否定されている。
まともな宗教なのか権力と金に取り憑かれた集団なのかで、その否定の効果も変わってくるのだが、信徒でもない限り一般人はあまり教会と関わらないらしく、エルネシアもその辺りは知らないそうだ。
闇の魔法は邪悪かというと全く違う。
使ってみた感想として闇は重量、慣性、あと多分斥力なんかも内包した属性だと思う。
当然光速の光魔法と、超重力で空間を歪めるかもしれない闇魔法が合わされば!
時間と空間を自由に操れる究極のオリジナル魔法に!!
ならなかったよ……
代わりにファンタジー小説では定番の時間停止亜空間になったよ。
ええ、いわゆるひとつのアイテムボックスやストレージというやつですねぇ、ええ。
昨日の魔法の名前の短縮の件があったから、これの名前はシンプルに倉庫とだけした。
3文字、展開が速いです。
内部の時間停止は成功したけど、無限空間はできなかった。
実際無限にあっても住んでる惑星を収納しないなら無意味だから問題ない。
星を収納したら世界征服も完了だし、世界の全ての財産を得たのと同じだからな。
超絶虚しいだろうけど。
いや別に、無限空間にできなかったから反対意見を言っているんじゃないんだよ、実際無駄だから言ってるんだよ。
俺の倉庫の大きさは注いだ魔力の総量で増えていくので、大神官の魔力回復の効果もあってそこそこ注いで広くできたと思う。
倉庫唯一の欠点が自分が入れない。
やはり出入口の管理者が中で時間停止で固まってちゃ出られなくなるからだろうな。
倉庫はそうなれと想像したので、生命体でも無関係に入れられるはずだ。
大回復でも助からない相手を入れとけば、後で回復手段が見つかるかも知れないからな。
そんな倉庫があるので、この大きなカチンコチンの肉塊を持たずに、装備だけで森探索の続きができるって寸法よ。
「説明の殆どが理解できませんでしたけど、シバさんの倉庫に入れておけば腐らないし重くもないんですよね、凄いじゃないですか! こんな魔法聞いた事もありませんよ!!」
「ありがとう、これであのワンピースも背負わずに済むし、汚れるかもって心配しなくてもよくなったよ」
「あっ、ありがとうございます、でもこのワンピースだけは自分で持っていたいですから」
畳んだワンピースを胸に抱いて顔を埋めるエルネシア。
可愛いし大切にしてくれてて嬉しいしでたまりません!
今は部分甲冑装備なのでオソロのスラックスもどきを履いている。
上もオソロだ。
エルネシアはワンピースをリュックサックに丁寧にしまうと顔を上げた。
「お待たせしました、では行きましょう」
「応」
気温も湿度も高い森だけどその分日差しも強いから、時刻と影の向きから大体の方角が割り出せるのはここの唯一の利点だ。
なので俺達は闇雲に彷徨わずに南を目指して歩いていける。
魔法の発動の短縮にも成功して、英語から日本語のイメージで使えるようになった。
組み合わせると
正直
エルネシア、漢字に弱い俺を許してくれ。
索敵と探索のおかげでかなり警戒が楽になって、移動時の精神疲労が少なくなった。
なので移動中、お互いキスを求めたりできるようになった。
危険地帯なのには変わらないから頻繁にするわけじゃないし、キスしている時間も1〜2秒が精々だ。
それでもキスしたら幸せな気持ちになるし幸せは心の活力にもなってる。
心が元気だと体も疲れにくいのか、昨日までより歩みが好調な気がする。
食料は相変わらず茎の汁が栄養とカロリー満点のあの草しか集まらないけど。
95パーセントくらいが草で笑う……いや笑えない、あの汁不味いんだよ、とんでもなく苦くてエグくて青臭い。
生きるために我慢して吸うけど、2人してしかめっ面になるのは少し楽しい。
吸い終わった草は捨てて柄のない木のコップを水盾の下に持っていく。
効果が切れて落下した水でコップを満たして、片方をエルネシアに渡す。
うがいをして口内に残った後味という名の栄養も残さず飲み込む。
浄化してるので菌とかは消えているので汚くないし、精神的に嫌悪感がとかも受け入れるしかない。
魔法がなければ水の代わりに泥水だっただろうし、変な果実は罠だったので草がなければ虫くらいしか食べ物はなかった。
そう考えると青汁を飲んで口内を綺麗にしてから、美味しい干し肉を食べられるんだから、まだ人間らしい食事ではないだろうか。
「生きるためとわかってても、やっぱりおいしくないですね。食事の唯一の楽しみがこのカチカチの干し肉なんですから、街での暮らしがどれだけ恵まれていたのか理解できます」
「そうだよなー、でも俺としてはもっと衣食住を充実させて、君を辛い生活から抜け出させたいんだよ。魔法もあるし、ないのと全く生活の質が違うのは理解してても、やっぱり今のまま満足したくないんだよなぁー」
「そうですよね、この干し肉も食べた分だけ減って、いつかなくなってしまいますし……」
「やっぱ食料、安定した狩猟生活が送れるかなんだよなあ」
『はぁ……』
僅かでも満腹感を増やすためにゆっくりした食事も終えると、今夜の寝る場所を作る時間に入る。
「初お披露目、住居に適した地属性オリジナル魔法、もうロックドームの屋根や壁とロックウォールの床からはおさらばだ! さあ刮目してご覧なさい、これが住居に関して俺の出した答えだー!
思いを込めた力強い言葉に反応して、形も大きさも様々な石版が現れ、まるでブロック玩具のように組み合わさり次第に家の形を作り上げていく。
オリジナル魔法居岩を極端な言い方で表すと、欲しいサイズや形の石版を作って家を組み立てちゃおう魔法なのだ。
俺が石版と思えば石版なので曲面も可能だったりするが、普通の石版だけで家をイメージするのも大変なのに、そこに曲面石版まで加わると頭の処理能力がついてこなくて……
居岩を作る練習の時は円柱も角柱もつくれたんだから、いつかは板だけじゃない曲面のある暖かみのある家を目標にしている。
建築家
図面
空間認識
どうやら新しい職業も得られたみたいだ。
「ええええええーーーー!! ちょっとシバさん、これ本当に家じゃないですか!? とうとう魔法で家まで建てちゃったんですか!」
家の造形は単純で三角板4枚の屋根に正方形の箱、ドアはなく入口は長方形に空いているが、中に入ってから石版を追加して塞げば問題ない。
「おいで、大した家じゃないけど中を案内するから」
「はい!」
エルネシアが中に入ったので入口を閉じる。
「ここは部屋、リビングとか寝室なんて分けられるくらい物がある生活じゃないから1室しかありません。まあここは昨日までと大差ないので次に」
「いや、あのっ、これだけでも十分仕事になる完成度なんですけど」
エルネシアがなんか言ってるが、俺がこのクオリティに満足してないのでその意見は覚えておくだけ。
いずれは森と海の近くで狩猟と漁業と農業をしながら幸せに暮らしたいのだ。
おっと狭い家だから脳内でヒートアップしかけたら次の目的地だよ。
「ここがトイレ」
「トイレですか!?」
エルネシアの食いつきが凄い。
最初から座っての使用が前提なので便座は上がらない、今は男も座って使用する時代なんだぜ?
っていっても、地面に掘った穴にダイレクトなんだけどな。
使用後は蓋をするだけで臭わないし、寝る前はドアも閉める。
今までは左右後ろにロックウォールを出して掘った穴にだったからな、女の子には辛かっただろう。
今後も移動中はそれなんだけど、朝までなら安心安全な場所があるってだけでもかなりマシになるだろう。
次が最後の案内だ。
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