1-4

「授業を終わります。」


「姿勢、礼、ありがとうございました。」


授業終了のお決まり事を済ませ、ようやく昼休み、お弁当お弁当嬉しいな。ほんとお弁当があったらどんな嬉しかったか…。今朝の事件のせいで弁当買えなかったし。面倒だが購買まで買いに行くしかないな。


席を立とうとしたその時、頭からものすごい圧力をくわえられてしまった。


「がぁ!痛い、痛い、痛い。何何何!」


再びあのアイアンクロウの悪夢が俺をおそっている。なんかあなたに悪いことしましたっけ?


「なんだよ…。なんか用かよ…。」


「一緒にご飯食べよ?友達なんだし。」


うわぁ、超笑顔。断りずらい。というか頭をがっちりホールドされてるからどっちみち逃げられないんだけど。


「てか飯持ってきてないから、買いに行かなきゃいけないんだよ。だからまた今度な。そうゆう事だからこの手を離してくれ。今頭の中でなんかバキッて音したし。そろそろヤバイかも。」


「それじゃ私のお弁当分けてあげる。こんなこともあろうかと二つ持ってきてるんだ。良かったら食べて。」


こんなことっでどんなことだろうかと思っているとバックの中から2つ弁当箱を取り出した。片方は女の子らしいかわいらしい小さい弁当箱、もう一つは


「保温弁当だと…。」


二つ持ってるのも驚きだが女子高生が保温弁当を持ってるとは思わなかった。


「どっちが良い?選んで良いよ。」


「いやぁ、遠慮しとくよ。なんか悪いし。俺は購買に行って…いっ痛てててててて!」


彼女の指先が再びめり込む。


「遠慮しないで良いよ。友達なんだし。ほらはやく選んで。お腹すいたでしょ?」


「わかった!わかったから離してくれ!」

そう言うと素直に離してくれた。


「あんたから先に選んでくれ。分けてもらう分際で先にえらべねぇよ。」


「えぇ〜。良いのに〜。でもそこまで言うなら先に選んじゃおうかな。じゃあこっち。」


その手はやはり小さい弁当箱の方に向かっているように見えた。

やはりこっちか。じゃあ俺は保温弁当かな。

そう思い俺も手を出そうとしたその時、彼女の手はスライドして保温弁当の方を捉えた。


えっ、そっちなの?


「やっぱあったかい方が美味しもんね。もしかして君もこっちが良かった?」


「いや…。」


そのあと無言で小さい方を手に取り蓋を開けた。


「日の丸弁当…。」


「よくできてるでしょ。バランスよく真ん中に入れるの苦労したんだからね。」


すごいドヤ顔なんだけど。


「あの…。おかずは?」


「えっ真ん中にあるでしょ。それでご飯3杯はいけるんだから。」


どんな割合で食べたらそんな食べれるんだよ。

いつの時代の人?本当に女子高生なの?


「ただ飯貰ってるのに文句は言えないし。ありがとう。いただきます。」


やっぱ日本人は白米だね超美味い。

この噛めば噛むほど甘みが出る。ここに梅干しのしょっぱさのアクセントが入り更に白米が進む。


これぞザ、和食、文化遺産に入るだけあるな。日本人でよかった。幸せだな。

欲を言えばオカズがもうちょっと入ってて欲しかったな。梅干し無くなっちゃった。あとご飯半分どうしよう…。


ふと目線を向かいに向けてみるとあいつの弁当箱の中身がうかがえる事が出来た。そこには立派な我が国の国旗が威風堂々と存在していた。


「ご飯美味しい!やっぱコシヒカリよね〜。」


すげぇ…、なんかご飯をオカズにライスを食べてる勢いでもりもり食べていらっしゃる。


やっぱごはんはオカズだね。


そして最後に梅干しを口に入れ、

「ご馳走様。」と言って片付けを始めだした。


こいつにとっては梅干しは沢庵代わりなんだろうか。

ん?ちょっとまて。


「おい。その汁物の容器には何が入ってるんだよ?、味噌汁じゃねぇの?」


「何って言われても。」


片付けの途中の容器をもう一度取り出して中味をみせてくれた。


「白湯…。」


それはもう見事なまでの白湯でした。薬でも飲むのかな?


「ここってお湯入れるんじゃないの?説明書にはちゃんと書いてあったのに…。暖かいお飲み物って。」 


「違えよ。白湯を飲み物と捕らえる人そうそういねぇよ。そこは味噌汁とか入れんだよ。そんなもん入れてる奴初めて見たよ。」


「ウソ…。」と漏らし驚愕の表情を浮かべている。

誰も教えてくれる奴居なかったんだろうか。


「ご馳走さん。弁当ありがとな。お礼に飲み物でも奢るよ。何が良い?」


「良いよ良いよ。半ば私が無理矢理付き合わせたみたいなものだし。気にしないで。」


自覚はあったんだ…。


「わかった。じゃあ俺は飲み物買ってくるからまたな。」


「うん。また後でね。」


満足したような100点満点の笑顔だった。

ただ飯もらってこのプライスレススマイルでは何処かのファストフード店はぐうの音も出ないだろう。


「…おう。」


歯切れの悪い返事とともに、鼻歌交じりに弁当を片付けている彼女のいる席を立った。

俺なんかとのご飯が本当に楽しかったのだろうか。


「分からん…。」


ただ一つ分かったことは一人飯より二人の方が楽しかったということだけだ。


食堂の自販機にたどり着いたところで今朝の千円札を突っ込む。


「たまには良いな…。」


そんな独り言をボヤきながら取り出し口から、コーヒー牛乳といちごミルクを取り出した。

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