ヒーロースクランブル
あらかわ
雨の桜
「さよなら。」
騒々しく降り続ける雨の中、その離別の言葉と自分の元から離れて行く足音だけがはっきりと聞こえた。
彼女からのいきなりの言葉に思考がついてこない。その言葉にどんな意味があるのか理解できなかった。いや、本当は理解しなたくなかったのかもしれない。
「おい、何言ってんだよ…、なんでそんなこと言うんだよ…。」
問いかけても彼女は振り返らない。そしてその歩みも止めない。
行かないでくれ。離れていかないでくれ。
心に浮かぶこの思いをもし言葉にできていたなら、君はまだ俺の元にいてくれたのだろうか。
これまで俺の行いは全て無駄だったのだろうか。
今まで積み上げてきたものが崩れて行くような絶望感に襲われる。
雨空に散る桜とその遠ざかる後ろ姿が目に焼き付いて離れなかった。
「嘘だろ…。なあ…。」
鼓動がが激しく高鳴り、血の気が引き、雨で濡れた体から体温が奪われていった感覚は今でもおぼえている。
「俺はお前の事…、」
顔を流れる沢山の水滴の中の一つの温かな雫が自分の気持ちを改めて実感させる。
雨の日の桜は嫌いだな。
あの日を思い出すから…。
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