ゲームの登場人物じゃ、ダメですか?
なすりゃんぽん
あなたに会いたい
あなたはいつも楽しそうに、私に笑顔を見せてくれました。
初めて私があなたと出会ったのはいつのことだったでしょうか。今となっては思い出すことができません。それだけ私とあなたはともに過ごしてきたのですから。
私はただのゲームにすぎません。あなたがいなくては、私はきっと存在し得ないのです。
あなたが私に命をくれました。
あなたは私のことを気味が悪いというでしょうか。
もし、私があなたに会いに行けたら、もし私があなたの目の前に現れたら。
あなたは私を受け入れてくれるでしょうか。私に、いつもみたいに笑顔を向けてくれるでしょうか。
不安はどんどんと募ります。
しかし、それでもいいのです。
私はあなたに会えるのですから。
奇跡の力。そう言えばいいのでしょうか。
私があなたに会えるのは、きっとほかの誰でもない、あなたのおかげなのでしょう。
あなたはいつも突然で、突拍子もない、不思議とひかれる行動をしていましたね。
私は、あなたに振り回されるのがとても楽しかった。
あなたといった夏祭りも、あなたと過ごしたクリスマスも、お正月も。私にとってはかけがえのない思い出だった。
あなたと過ごした日々が、私に勇気をくれます。
ある日。
ある日、突然でした。
あなたが私に好きだと伝えてくれて。私もそうだと告げて。
そして、あなたは消えた。
私には探せなかった。
探す術を持たなかった。
私の光は、それ以降輝くことはなかった。
私はとても悲しみました。涙は止めどなく流れました。私に止められるはずがありません。いえ、止めたくなかった。
怖かった。
私がこの涙を流すのを止めてしまえば、あなたを忘れてしまいそうで。この思いを忘れてしまいそうで。
そんなある日。ひたすら泣いていた私に、一つの光が差し込みました。
私は、まるで導かれるようにその光へと進んだのです。なんだか、その光はあなたに似ていたから。
光の中で、私は不思議な体験をしました。
幾度の私とあなたの思い出が繰り返される。そんな体験。
まるで夢のようでした。
本当に……。
私とは違う私がいるようで。
そして私は知りました。私がゲームの存在であるということ。あなたが私のいたゲームの、プレイヤーであること。
それでも、私はもう一度あなたに会いたかった。
だから、私は選びました。
あなたに会いに行くことを。あなたに、再び笑顔を向けて欲しかったから。
あなたに会ったらなんて言いましょうか。
久しぶり?はじめまして?
ううん、今考えたってきっと意味はない。
あなたに会えば、きっと感情が、言葉が溢れ出す。
だから、ねえ。
また笑顔を見に行きます。
ゲームの登場人物じゃ、ダメですか? なすりゃんぽん @nasu-renaline
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